債務危機から景気後退へ
欧州債務危機は発生以来18ヶ月が経過しても解決の糸口が見えないどころか、実体経済にも影響が及び、リーマンショック以降2度目の景気後退入りする可能性が高まってきた。PIGS諸国の景気が、高失業率と緊縮政策で悪化するのはやむを得ないとしても、債務国からの受注減少に、牽引役を期待される独仏も足を引っ張られ始めている。
S&P社は、今後5四半期は、地域によってバラツキはあるが、鈍いながらも全体としては成長を遂げるとの見方を示し、来年のユーロ圏成長見通しを1.1%とした。しかし、景気後退に陥る確率も40%あると付記している。一方、ゴールドマンサックスは、ユーロ圏が今年第4四半期には景気後退に陥り、2012年の成長は、0.1%に止まるとのより厳しい見通しを示した。同社のエコノミストは、今年第4四半期と来年第1四半期をマイナス成長と予想しているため、一般的な景気後退の定義に合致する。独仏の影響は軽微だが、周縁国は深刻で景気後退は長期化するとの見立て。
S&Pの予測は、下振れリスクは無視できないとしながらも、景気後退は回避できるのがメインシナリオ。その理由は、新興国からの堅調な需要や独仏など主要市場での消費の底堅さに加えて、金融政策面での景気支援策にある。もちろん、長期金利の上昇や新興国の景気が減速という事態になれば、シナリオも変わる。
欧州が景気後退に陥れば、輸出への影響や企業信用の減少によって米国にも大きな影響が出る。そのためゴールドマンは、来年初頭に米国は景気後退の縁まで追い込まれると予想し、今年第4四半期以降の成長見通しを引き下げた。バーナンキFRB議長は議会証言で、景気は腰折れ寸前で、政府が追加の行動を起こさなければ、新たな景気後退に陥る可能性があると警鐘を鳴らした。再選を目指すオバマ大統領にとっても、米国経済にとって強い逆風となっているユーロ危機は放置できない問題で、来月初のG20までに対応策の提示を求めている。
しかし、肝心のECBの反応が鈍いとの不満の声も。先週のECBの定例理事会では、金融機関資金繰り支援のための資金供給期間を1年に延長する事は決めたが、その他に目新しい対策が出なかった。イングランド銀行が、国債購入によるさらなる量的緩和を決め、景気支援の姿勢を鮮明にしたのと対照的だ。ECBは今後の利下げの可能性は示唆しつつも、ユーロ圏のインフレ率が目標上限の2%を越える3%である事実が、利下げを躊躇させている。トリシェ総裁の景気判断も、非常に不確実性が高い状況の下で緩やかに成長するという、極めて微妙な言い回し。同総裁も今月末で退任するため、後任の政策判断を縛るような手を打ちにくいのも事実だ。後任のドラギ・イタリア中銀総裁も、物価安定と言うECBのマンデートを考えると、就任後すぐの利下げは現状では難しいだろう。
7月のストレステストで問題を指摘されなかったデクシア銀行が公的救済を受ける事態となり、銀行間の信用不安が益々高まるのは確実。不安解消のために欧州委員会のバローゾ委員長は、銀行への資本注入で加盟国が協調行動を取る必要性を訴えた。ドイツは自力での資本調達が基本と主張しているが、短期融資すら敬遠される状態では、公的資金の投入は避けられない。国の債務問題が発端である危機の解決を公的資金に頼らなければならい現実に、ユーロ危機の深刻さがあり、加盟国だけでは、もはや解決が難しい状況と言えそうだ。(了)
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