富田秀夫の素朴な疑問から読み解くグローバル・マーケッツ

モーゲージ債買取りプログラム終了‐その影響は?

 新年度入りを迎えた先週、ニュースでは、昨年度で終了したものと今年度から新たに始まるものが盛んに報じられた。米国は新年度入りではないが、日本流で言えば昨年度で終了した措置の代表が、FEDによるモーゲージ債の買取りプログラムだろう。終了が景気に与える影響は、少し時間が経過しなければ判断が難しいが、1.25兆ドルのモーゲージ債を期間中にFEDが買わなければ、他の誰かが購入した事は明らかだ。FEDが肩代わりしたその購入資金は、他の投資に回ったと見て間違いないだろう。モーゲージ債に投資する資金であれば、国債を越える超過利回りを求める資金と考えるのが自然。その代替先と目されるのが社債市場だ。

 この推論を裏付けるように社債市場は、記録的な上昇相場を演じている。社債の中でも、ハイイールド債の人気が高い。先月は、米国で315億ドルの新発債が発行され、2006年11月の記録を塗り替えた。ハイイールド債のベンチマークであるバンカメ・メリルリンチインデックスは、底となった危機時の2008年10月から82%も上昇し、こちらも記録更新。本来であれば、動きが緩やかな投資適格債のインデックスさえ35%も上昇した。リーマンショック時に最優良企業の返済能力まで疑われ、売り一方で市場が凍りついたのとは、まったくの様変わりだ。

 しかし、この上昇相場が今後も続くかとなると疑問符が付く。既に相当な高値水準にあるのに加え、金利上昇のリスクも出てきた。それに、モーゲージ債買取り終了の影響が加わる。今後は、モーゲージ債と資金を奪い合う可能性も出てきそうだ。モーゲージ債の方は今年、1.5兆ドル程度の新規発行が見込まれており、昨年と比べると12%の減少。借入条件の制約から発行が伸び悩むと予想されている。この程度の発行であれば、資金が潤沢な銀行セクターや年金で十分FEDの穴埋めが可能な水準だ。

 FEDの買取りプログラムが住宅ローンの金利上昇を抑えたのは事実で、昨年12月には30年固定利付きのモーゲージ債の金利は、4.71 %と史上最低を記録した。現在は約5%だが、円滑な買い手の交代で買取り終了後も、金利は5.2 %程度に留まるとの見方が有力。これは過去10年の平均と比べても、1%程度低い水準だ。一方、今月末には住宅取得者に対する8000ドルの税額控除も終了するため、FEDプログラムの終了が、ようやく回復の兆しが見えた住宅市場に暗い影を落とすとの見方も出てきた。米国債偏重のポートフォリオ分散化を図る上でモーゲージ債は魅力があったが、FEDが買っているという安心感があったからこそとも言える。

 投資信託への資金フローを見ると、2月までの過去1年に、債券ファンドへは3591億ドルと過去最高の新規資金が流入した。社債を中心としたクレジット市場の活況ぶりを裏付ける数字だ。しかし、2月だけをみると、ハイイールド債ファンドへの流入が社債ファンドへの流入を上回る通常のパターンが逆転している。また社債も、ゼロ金利状態における当面の資金運用先として、短期、中期債への投資が断然多い。これは、流入資金のリスクテーク意欲が必ずしも旺盛ではない事を示していると言えそうだ。経済やインフレ動向次第では、一気に社債、ハイイールド、モーゲージと言った市場から資金が逃げ出す可能性も否定できない。FEDが去った後のクレジット市場の動向が注目される。(了)
*出張のため、次回の更新は4月19日の予定です。

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02月04日更新

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富田秀夫(とみた・ひでお)

富田秀夫(とみた・ひでお)

1959年 東京都生まれ。慶応義塾大学法学部卒。
株式会社共同通信社で国際金融情報分野を担当。
その後、共同通信マーケッツ営業一部長、
IQファイナンシャル・システムズ・ジャパン代表取締役社長、
QUICKマネーラインテレレート取締役営業本部長を経て、
2005年7月より株式会社QUICKグローバルインフォメーション常務取締役。
2008年2月リッキーマーケットソリューション株式会社設立に伴い、代表取締役社長に就任。
主な著作 「入門ヘッジファンド―やさしくわかるヘッジファンドのすべて」(翻訳、シグマベイスキャピタル社)

富田秀夫のマンスリーコラムは、Market Solutions Review に掲載中

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