

本連載は3回にわたって、「売買シグナルを使ってみたい」と考えている売買シグナルの未経験者を対象に、簡単にシグナルを利用できるツールを解説している。
シグナルを発信するツールとして利用するのは、セントラル短資FXの「クイックチャート・トレード(以下QCT)」。
QCTの売買シグナルについては、使い方とカスタマイズの方法を第一回の記事で紹介した。また第二回では「自動売買検証」と呼ばれる売買シミュレーションを使って、売買シグナルのパフォーマンスを検証する方法について解説してきた。
最終回となる今回は、実際にKlugのアナリストが売買シグナルのロジックを作って、パフォーマンスを検証する過程について、順を追って説明していこう。
まずは、どのようなテクニカル分析ツールを利用して売買ロジックを作るのか、そのアイディア出しから始めよう。QCTのストラテジエディタには、売買ロジックのパラメータとして利用できるテクニカル指標が多数組み込まれている。次の図1の画面上にあるようなテクニカル指標が利用可能だ。

(図1:ストラテジエディタのエディタ画面を掲載)
これらの値を元にして、四則演算や条件分岐を駆使することにより、自分だけの売買条件を簡単にくみ上げることも可能だ。今回、Klugアナリストは売買ロジックのツールとして「ボリンジャーバンド」を選んだ。ボリンジャーバンドは、世界中に多くの愛用者を持つテクニカル分析の代表的な分析ツールの1つだ。
ボリンジャーバンドは、値動きの勢いや反転の目安を知るために、チャート上に移動平均線とその上下に標準偏差(1σ、2σ)のラインを描いて、ラインが生み出すバンド幅の向きや拡大・縮小を分析するのが一般的な分析法だ。

(図3:ボリンジャーバンドと移動平均線:いずれも21日)
図3が典型的なボリンジャーバンド(21日)のチャート。中心線となるのが移動平均線(黄色)で、そこから±1σずらしたライン(紫色)と、±2σずらしたライン(緑色)を元に分析を行う。場合によっては、±3σのラインを利用することもある。
ところで、ボリンジャーバンドは一般的に「逆張り」の分析法として利用される傾向がある。ボリンジャーバンドでは、値動きが±1σラインのバンドに収まる確率は約68.3%、±2σラインのバンドに収まる確率は約95.4%であるとされている。したがって、1σもしくは2σのバンドにローソク足が到達したら、値動きがバンドの範囲に押し戻されると判断し「逆張り」のポジションを取る、といったトレード手法が広く知られている。
しかし「逆張り」戦略は、ボリンジャーバンドの一片に過ぎない。実際のところ、いったんボリンジャーバンドの1σラインに到達したローソク足は、その後反転するのではなく、さらに値動きが加速して、1σラインから2σラインへと突き進み、両ラインの間で振幅して、ときには3σラインにまで動きが突出するような現象が、相場ではしばしば見られるのだ。
ボリンジャーバンドのこうした特性について、創始者のジョン・ボリンジャーはその著書の中で「バンド・ウォーク」と名付けている。彼によると、バンド・ウォークは、トレンド相場が持続するときに頻繁に生じるという。

(図4:ボリンジャーバンドのバンド・ウォーク)
前置きが長くなったが、今回はこのバンド・ウォークを収益化するストラテジーを、売買ロジックのアイディアとして利用したい。

バンド・ウォークは、基本的にはトレンドが持続する相場で発生する。従って、トレンドレスなレンジ相場では、そもそもバンド・ウォークを捕捉することはできない。従って、ロングスパンでパフォーマンスを上げられる売買ロジックを作るには、長期的に一方的なトレンドを形成している通貨ペアを選ぶ必要があるだろう。
そこで、今回はユーロ円でショート(売り)ポジションを取る売買ロジックを考えてみよう。ユーロ円は2008年7月に169.90円台をつけて以来、大きく下落し、2009年下期にやや上昇したものの、それ以降もギリシャ危機の影響を受けて、再び下落トレンドを描いている。

(図5:ユーロ円週足チャート:2008年以降に大幅下落となっている)
下落トレンドのバンド・ウォークを収益化するシナリオは次の通り。
このシナリオでは、21日のボリンジャーバンドと21日移動平均線を取引の条件に利用している。下落トレンドの発生は、21日ボリンジャーバンドの-1σラインへの到達で判断し、下落トレンドが続くと考えて、-2σラインで利益確定するというものだ。ロスカットの条件には、-1σラインのすぐ上にある21日移動平均線、そしてさらにもう1段上にある21日ボリンジャーバンドの+1σラインを利用する。
次に、上記の各取引条件を売買ロジックの形式に落とし込んでみよう。実際の売買ロジックは、論理式と計算式の2つから成り立っている。ここでは、QCTのストラテジエディタに入力することを意識して、以下のような形式にまとめてみた。
この中で、「以下の条件がすべて成立した場合、~」というのが、論理式に該当する。例えば、上記のエントリ条件の場合、「終値が1日前の終値を下回る」「終値が21日ボリンジャーの-1σラインを下回るか同値になる」という2つの条件(計算式)が成立した場合のみエントリする、というロジックとなる。
なお、ストラテジエディタでは「AとBの両方の条件が成立すれば○○する」といったロジックには「AND」型の条件式使い、「AとBのいずれかの条件が成立すれば○○する」といったロジックは「OR」型の条件式を使う。
売買ロジックの形式が決まったら、各取引条件をストラテジエディタに入力していこう。QCTのメニューから「売買シグナル」→「自動売買検証 ストラテジエディタ…」とたどって「編集可能ストラテジのリスト」ウィンドウを開き、「新規(N)」をクリックする。図6のウィンドウが表示されたら、「全般」「エントリ条件」「利益確定条件」「ロスカット条件」の各タブに必要事項を入力していこう。

(図6:「全般」タブの設定項目)
まず「全般」タブでは、売買シミュレーションを実施するにあたっての基本的な項目を設定していく。例えば、ストラテジーの名称、「ロング」か「ショート」かの選択、売買ロジックで利用するローソク足の期間(日足、60分足など)、シミュレーションの対象とする通貨ペア(ドル円、ユーロ円など)、シミュレーションの期間(ローソク足100本分、1000本分など)といった項目をここで設定する。
次に「エントリ条件」タブの設定しよう。繰り返しになるが、今回の売買ロジックにおけるエントリ条件は次のような条件式で成り立っている。
上記内容に沿って、「エントリ条件」タブの一番上にある「取引条件(C)」では「条件成立の足の終値で取引」を選ぶ。

(図7:「エントリ条件」タブに条件式を入力する)
条件式は、下の空欄にある「条件」以下の「論理:未定義」の部分を選択状態にして、「論理…」「数値…」の2つのボタンから入力していく。ここではまず「2つの条件が満たされたら○○する」に該当する「AND」型論理式の入力が必要だ。「論理…」ボタンをクリックするとプルダウンメニューが表示されるので、その中から「結合 ∧(AND)」を選ぶ。すると、条件式のツリーの下に「結合 ∧(AND)」が追加され、さらにその下に「論理:未定義」という項目が2つぶら下がった形になる(図7)。
今度は、その2つの「論理:未定義」に「終値 < 1日前の終値」と「終値 <= 21日移動平均 - 21日ボリンジャー1σ」という2つの計算式を入力する。「終値」「移動平均」「ボリンジャーのσ」といったパラメータは「数値…」ボタンから入力できる。すべての条件式を入力した状態が図8となる。

(図8:「エントリ条件」タブの条件式がすべて入力された状態)
残りの「利益確定条件」タブ、「ロスカット条件」タブについても、「エントリ条件」タブと同様に、「取引条件(C)」と条件式を入力していこう。必要事項を入れた状態の各タブは、図9、図10のようになる。

(図9:「利益確定条件」タブの条件式がすべて入力された状態)

(図10:「ロスカット条件」タブの条件式がすべて入力された状態)
各条件が設定できたら、さっそく「テスト実行」で売買シミュレーションを試してみよう。