

■父から送られる外国の絵葉書を楽しみに待つ
1965年2月2日に富山県滑川(なめりかわ)市の海のそばで生まれました。両親は北海道の出身ですが、私が生まれたころからは、ずっと富山で暮らしています。父は高校の教師、母は主婦で、しつけに厳しい家庭だったように思います。ただ当時はそれがごく普通だったのかもしれません。3歳のときに富山市に移りました。
父が教えていたのが航海術だったため、父は数年に一度、半年間から一年間の長期航海に出かけていました。船長の免許を取るための経歴を積むために、母校の北大の船に乗って出かけることもありましたし、生徒を連れて航海実習に出かけることもありました。教師生活の最後のほうでは、船長の免許を取って水産高校(現海洋高校)の校長をしていました。
子供の頃、父から送られてくる外国の絵葉書や、帰国後に持ち帰るハワイ、オーストラリア、フィリピン、南アフリカなどの珍しいお土産、見知らぬ言語で書かれた観光案内などがとても楽しみでした。父の影響は強く、今でも私は船とか海とか外国とかが好きです。

■船長を断念し東京大学へ
4歳のときに富山大学教育学部の附属幼稚園に入園、そのまま附属中学校までエスカレーターでお世話になりました。国立校のためか、明るく自由でのびのびした校風でした。勉強はあまり好きではありませんでしたが、授業中に先生に合いの手を入れたり、茶化したりするのが楽しく、それが許されるくらいの成績を維持するため勉強しました。迷惑な生徒だったと思います。
高校は地元の富山中部高校に進学しました。特に理系志向だったわけではないですが、特別進学クラスのような形で理数科が存在しており、私も理数科に在籍しました。高校は進学校だったせいか、中学までと違い、暗く退屈でつまらないところでした。毎日さっさと家に帰り寝るだけの生活をしていました。
高校時代、父のように船長になりたくて、一時は本気で父と同じ北大の水産学部か東京商船大学への進学も考えましたが、高校生の目から見ても当時の日本の海運業界は不況の度合いがひどく、断念しました。
本を読むのが好きだったこともあり、国語の成績だけはいつもトップクラスでしたが、他科目の勉強不足もあって、一回目の大学受験には失敗し、翌年の受験でどうにか東京大学の文科二類に入学しました。
東大の文科二類を選んだのは、教養課程において日本で一番暇なところと噂を聞いたためです。つまらない受験勉強から開放されて一日中存分に本が読みたかったのです。将来の選択を保留にするためのモラトリアムの意味もあったのかもしれません。

■キャンパス誌の編集サークルで活躍
大学に入学後、キャンパス誌の編集サークルに入りました。文芸誌ではなく、東大生だけを相手にした、あまり売れない情報誌を編集していました。「東大留年者高校別ランキング」や「駒場用語の基礎知識」、「進振り」(理系を中心に学部に進学する際に各科に行くために必要な最低点調査)などの恒例目玉企画を中心に雑誌を編集していました。
サークルに熱心に通っていたこともあり、二年になると、雑誌の編集長のような立場になりました。学生会館や駒場寮の部屋で、入稿直前に徹夜で記事の執筆や編集作業は、大変楽しいものでした。
サークルで知り合った同期や先輩には、卒業後も、出版・報道といったマスコミの道を選んだ方や、作家になった方が多くいます。最近、いつの間にか作家になっていたサークルの一つ上の先輩が書いたエンターテイメント小説を読みました。タイムスリップして現代に現れた汚い侍が、パティシエになって大成功し、六本木ヒルズに住むというストーリーなのですが、主人公である汚い侍の名前が、木島安兵衛だったので、思わず苦笑してしまいました。地方から出てきたばかりのむさくるしい学生だった私のイメージが、彼の頭に残っていたのかもしれません。
教養課程での毎日が飽きない生活は、三年になり経済学部に進学したことで終わりました。現代の経済学は、微分積分や統計学を多用して物事を解決する近代経済学が主流でしたので、数学嫌いの私にとってはつらいところでした。ゼミ選びでは、サークルの先輩から経済学の将来の有望株とされていた伊藤元重先生を勧めていただき、ゼミにもぐりこみました。その後、その先輩の予想通り、伊藤先生は有名になりゼミは人気ゼミ化しました。おかげで優秀なゼミ出身者が多い中、私は不肖の弟子です。

■スマートなイメージに憧れ東京銀行へ
就職活動では、海外に行けるということで主として商社を志望していましたが、最後は迷った末に東京銀行に入行しました。外国為替専門銀行ということで海外に支店が多く、商社と雰囲気が似ていたほか、当時の東京銀行の持っていたスマートなイメージに憧れたためでした。1988年のことでした。
※本企画「The Presients~その軌跡とベクトル」は、
FOREX PRESSとの共同企画として、同じ内容を同時にアップしています。




