小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

円高に隠されたもう一つの意味

 最初に、このブログを今お読みになっている方の意見を聞きたいのですが‥

 「私の?」

 そう、イケメンの貴方の意見を聞きたいのです。

 今、国内における最大の関心事の一つは、増税にあると思うのです。本音で言えば、誰だって増税は嫌でしょう。では、仮に増税をしなければどういうことになるかと言うと‥益々借金を重ねると
いうことになるのです。2012年度予算の財源のおおよそ半分は、国債の発行、つまり借金で賄おうとしている訳ですが、増税を受け入れないということは、これからも大量の借金を続けることを意味しているのです。

 誤解のないように言っておきますと、確かに歳出面をバッサリ削ることができれば、借金を増やさなくても乗り切れることができるかもしれませんが‥そのためには、我々国民の側も、行政サービスの低下を受け入れなくてはなりません。

 ということで、幾ら増税が嫌いな人でも、同時に借金を続けるのもダメだと思う訳ですが‥でも、政治家の中には、こんなに景気が悪いのだから、国債を発行し続けてもやむを得ないという人もいるのです。


 ここでも誤解のないように言っておきますが、幾ら増税を考えている人でも、急に国債の発行を止めることができるなんて考えの人は、一人もいないのです。というよりも、少々増税したところで、これから先も相当量の国債の発行は必要不可欠であろう、と。

 ということは、「国債を発行し続けても止むを得ない」と言う表現とは裏腹に、そのようなことを言う政治家は、国債の増発のどこが悪いのだ、と主張しているようなものなのです。

 そのような政治家は「この景気の悪いときに‥」なんていう言い方をし、それはそれなりに結構説得力を持っているのです。だからこそ、あの小沢様も消費税増税には反対するのでしょう。そんなことでは選挙に負けてしまう、と。

 いずれにしても、我々日本人の頭の中には、増税を考える際のファクターとしてこれまで、「景気」「インフレ」「将来世代への負担転嫁」「財政破綻」というようなものしかなかったのです。つまり、主にそのようなことを比較衡量の上、増税に反対するとか賛成するとかの立場を決めればよかったのですが‥

 「ですが?」

 ここに来て、もう一つファクターが増えそうであるのです。

 「何、それ?」

 この1、2年ほど日本は急激な円高の局面にあるのですが‥円高とはどういうことであるのでしょう?

 「実力以上に円が買われている。投機筋が悪いのよ」

 投機筋云々の話は別にして、円を買う人が増えるから円高になる。それはそのとおりです。で、円を買うと、その多くは例えば日本国債に姿を変えることでしょう。私が何を言いたいかお分かりでしょうか?

 では、日本国債を一番買うのは誰か?

 まあ、誰が買うのか確信を持って言うことは難しいのですが、そのような金融資産を購入する力が一番ある国と言えば、貿易収支が大幅な黒字になっているところと決まったものなのです。

 ちょっと古い話になって恐縮なのですが‥1970年代にオイルショックというのが起きました。2度石油の価格が高騰することになり、それまで地味な存在でしかなかったアラブの国が一躍脚光を浴びることになり‥。

 で、その時、我が国を含め先進国側は心配をしたのです。アラブが油で儲けるのはいいが、そのお金が巧く循環しないことには世界経済が大混乱に陥ってしまう、と。これをオイル・マネーのリサイクリングと呼んだものなのです。

 つまり、アラブの国が石油の輸出でガンガン儲けるときには、アラブの国が例えば米国債などを沢山購入することになるのです。

 では、現在はどうなのでしょう? 言うまでもなく、今貿易で稼ぎまくっているのは中国。つまり、中国にマネーが集中する構図になっており、従って、その中国が米国債やユーロ建て国債や日本国債を購入する立場に立っているのです。

 円高とは、海外勢が円を買うから円高になる。そして、その海外勢の代表は中国ということになるのです。そして、この1、2年円高局面が続いている訳ですが、ということは、中国がガンガン日本国債を購入するようになっているのです。

 私の言いたいことがお分かりになりました?

 つまり、これから先、日本が借金体質を改めず、その一方で、中国が輸出を中心に高成長を続ければ、中国がもっともっと日本国債を保有するようになるのは必至だということです。

 で、国債の発行のどこが悪いといつも言っている人々に聞きたいのです。

 2011年の1年間で、中国は日本国債を約26兆円分購入し、そして、約31兆円分売却した、と。ネットベースでは約4兆円の売り越しになっており、2010年実績の10倍に膨れ上がっている、と。

 もちろん、中国としては、何も日本を支えるために日本国債を購入するのではなく、国債の売買によって利益を出すためである訳ですから、国債の市況次第で活発に売ったり買ったりするのです。でも、そうやって活発に売ったり買ったりされるから、日本の経済は大きなリスクに晒されることになるのです。

 ちょっと嫌ーな感じでしょ?

 結局、借金を続けるとそういう事になりがちなのです。これから先少子高齢化が益々進展し、そうなるとこれまでの蓄えも少しずつ食いつぶすことになるのです。つまり、これまでは国債の殆どを国内の投資家が保有していたのが、少しずつ海外の投資家の保有割合が増える、と。で、その海外の筆頭に中国が来るのです。

 どうしたらいいのでしょう?

 中国がやっているように、海外の政府が国債を取得することを日本政府の許可制にする?

 そんなことを今更、日本政府がする訳にはいかないのです。

 いずれにしても、中国が今後日本の債権者になるかもしれないというリスクについてじっくりと考える必要があるでしょう。

 以上

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05月18日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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