小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

経済対策に自信が持てない理由

 昨日、政府が経済対策の基本方針を発表しました。

 財源がないなかで何とかしたいという気持ちは分からないではありません。その意味では同情したくもなるわけですが、しかし、政治家たるもの国民に同情されるようでは頂けません。

 政治家たるもの、国民に夢と勇気を与えるとともに、時として厳しいことをいうことも求められているのです。

 いずれにしても、経済対策の基本方針を読むと、おやおやと思ってしまうわけです。何故ならば、一番最初に出てくる言葉が、デフレ脱却が当面の目標だ、というからです。

 物価のことなんか気にするな、と私は言いたい。

 物価のことばかり気にしているから、どうしても日銀ばかり批判したくなり、そうして、不況の原因から目をそらしてしまうことになるからです。


 あの竹中教授は言いました。デフレは貨幣的現象である、と。そして、貨幣的現象であるから、中央銀行が貨幣を大量に放出すれば解決できるのだ、と。

 しかし、物価が低下するのは、貨幣の供給量が少な過ぎるから起きているのではありません。供給能力が現実の需要に比べて大き過ぎることが物価が下落する主因なのです。だとしたら、デフレを貨幣的現象として理解し、従って、デフレの原因は全て中央銀行にあるとする考え方が適当かどうかはすぐ分かるというものです。

 しかし、今や、みんなの党を始めとして多くの政治家がそうした考え方に洗脳されてしまっているのです。


 経済対策の基本方針というからには、もっと大切なものが最初にくるべきではないのでしょうか?

 例えば、この円高にどう対応するのか、とか、円高は何故起こっているのか、とか、日本の製造業の将来をどのように展望するのか、とか。

 話は跳びますが、皆さんに一つだけ言いたい。

 多くの人が、デフレと円高に大変だと悲鳴を上げている訳ですが、では、最近の日本がデフレではなく、物価が年率数パーセント上がり続けていると仮定してみて下さい。いいですか、物価が下がる状態ではなく、物価は上がっているのだ、と。で、そうした状況で今のような円高になったら、日本はどうなっているか?

 いいですか、例えば、物価がここ数年年率3%ほどで上昇を続けており、そして、1ドル83円台になってしまった、と。

 デフレが起きていない分、今より円高の影響は軽く済んでいると言えるのか?

 答えは、ノー。

 もし、ここ数年日本で物価が上がっていたとして、輸出企業のドル円の想定レートは、もっと円安になっていたはずだからです。何故ならば、原材料費や人件費などが上昇している分、円に換算した輸出代金は増加しないと採算が取れなくなるからです。

 つまり、今、1ドルが83円台だとか84円台だとかで困っているのが事実だとしても、もし、これまでに日本で物価が上がっていたとすれば、日本の輸出企業の痛みは今以上になっていたということなのです。

 物事には、表と裏があります。いい面もあれば悪い面もある、と。どうして悪い面ばかりみてしまうのでしょう。その点で、もう貴方は負けている、と。

 
 いずれにしても、幾ら日銀の尻を叩き、そして政府が自ら経済対策を打ち出そうと、我々はなかなか自信を持てないでいるのが事実ではないでしょうか?

 では、何故自信が持ていないのか?

 それは、我々が、真実から目を遠ざけようとしているからなのです。

 何故、我が国の企業は、豊富な手元資金がありながら、それを投資に回そうとしないのか?

 さあ、何故でしょう?

 それは簡単なことなのです。

 つまり、少子高齢化の影響もあり、なかなか消費が伸びないから。つまり、売れないから。もちろん、細かく見ていけば例外もあるでしょう。例えば、この10年、20年の不況のなかでも、通販や健康食品などは大きな成長を遂げていると言っていいでしょう。しかし、全般的には、売り上げはなかなか伸びていないどころか、落ちている、と。

 で、そうやって儲からないことが予想されるから、企業は投資に二の足を踏むのだ、と。そして、企業が投資を控え、労働者の採用を控えるから失業者が増えてしまう、と。

 でも、幾ら国内の消費が盛り上がらないとしても、輸出によって儲けるという手もあります。現実に、リーマンショックの前までは、輸出という手段に頼って緩やかな景気回復を果たして来ていたわけです。

 では、今後も輸出に頼るしかないではないか、と。

 確かにそうかもしれませんが、その輸出に今円高が襲いかかっているわけです。つまり、円高が起こると、輸出企業の採算が合わなくなってしまい、儲けることができなくなる、と。で、そうなる
と、ついには海外に脱出しまうところも出てくるのだ、と。

 では、円高を阻止すればいいではないか、と。

 確かに、政府・日本銀行が為替介入に打って出る手段は、あると言えばある訳です。

 しかし、我が国よりも遥かに高い失業率に悩む米国が、円安ドル高にするような為替介入を黙って見逃す筈がありません。そんなことをすれば、とんでもないリアクションがあるはずである、と。それに菅総理はやっと気がついたから、今は、為替介入なんて言葉を口に出すことはないのです。

 為替介入ができなければ、日本の輸出企業は、海外との競争に打ち勝つことはできないのか?

 そんなことはないのです。日本が幾ら為替を円安にもっていくことができなくても、もし、賃金を大幅に切り下げることが可能であれば、企業の採算ラインを大きく下げることが可能になり、我が国の輸出メーカーも海外に脱出することなど必要はなくなるのです。

 では、我が国において、国際競争力を維持するということで、賃金を大幅に引き下げることが可能であるのか?

 これは、大変に難しいであろう、と。

 そうでなくても、デフレのなかで賃金の伸びが止まってしまっているのに、これをもっと下げるなどと言えば、国民が黙っている筈はないでしょう。

 確かに、そうなのです。賃金の大幅な引き下げなどできないというべきでしょう。

 しかし、冷静になって考えると、海外には、日本人の賃金の半分とか、或いは1/10でも働いてくれる労働者がいるわけですから、一般的には、そうした国の企業と互角に戦おうとすることがそもそも無理だということに気が付かなければなりません。

 だとすれば、残る手段は、そうした新興国では生産することができないような製品を我が国が開発するしかないということになります。

 結局、日本が、今後も世界との競争に打ち勝っていくためには、そしてそうすることによって国内の労働者に働く場を提供するためには、日本独自の技術を開発をし、維持していくしかないということなのです。

 つまり、政府は、民間企業が手を出しづらい基礎研究にもっとお金を費やしたり、或いは、独自の技術や商品を開発したような企業をもっと優遇するような措置を取るべきなのです。そして、労働者の育て方にしても、一律に子ども手当を支給したり、高校の授業料の無償化をするのではなく、努力をし成績が伸びたような子どもに対し授業料を免除するなどの措置を取るべきなのです。

 いずれにしても、儲からないから企業は今投資をしようとしないのです。従って労働者の採用も行わない、と。

 だとすれば、企業が儲かるような環境作りが必要である、と。

 では、どうすれば、企業は儲かるのか?

 一番簡単な方法は、円安にして輸出競争力を強化することでしょう。で、それがダメな場合には、賃金の決定方式をもう少し柔軟にして、賃金を下げることも考えられるわけですが、それは現実的に難しかろう、と。

 だとすれば、残るは、企業や労働者自身が切磋琢磨して、技術力や能力を磨き、日本が他の国が真似できないような製品を作り出すほかないということになるのです。

 そのためには、地道な努力が必要であるのだ、と。

 そうしたことは、貨幣の量を増やしたからどうかなるというものではないのです。


 後は、世界のお金持ちのニーズをよく探り、彼らが欲しくなるモノを生産するとか、日本食の美味しさを世界のお金持ちに分かってもらい、日本の農業や漁業を育てることも考えられます。

以上

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

本サイトに掲載されている情報は、情報提供を目的としたものであり、特定商品や投資の勧誘を目的としたものではありません。
最終的な投資判断はお客様ご自身の判断と責任によってなされるものであり、この情報に基づいて被ったいかなる損害について小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルは責任を負いません。
小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルは、信頼できる情報をもとに本資料を作成しておりますが、正確性・完全性について小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルが責任を負うものではありません。
本サイトに記載されている情報は、作成時点のものであり、市場環境の変化等によって予告なく変更または廃止することがあります。

ページトップへ戻る