小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

円高なのか?

 円高だ、円高だ、という声が聞こえてきます。

 確かに、1ドル84円台に達するレベルになれば、これはとんでもないほど円高だ、と言いたくなるのも分からないではありません。

 しかし‥、それでも敢えて言いたい! 本当に円高なのか、と。

 「過去の最高値は、1995年につけた79円75銭だから‥」


 確かにそういう議論もあるのですが‥

 「どういうこと?」

 だから、79円75銭をつけた1995年当時を別にするかどうかにかかわらず、本当に今が一番円高になっているのかという疑問があるのです。


 「じゃあ、2000年以降の円・ドルレートを挙げてみるわよ」


<円・ドルレート>

       1ドル
2000年末  114.90円
2001年末  131.47円
2002年末  119.37円
2003年末  106.97円
2004年末  103.78円
2005年末  117.48円
2006年末  118.92円
2007年末  113.12円
2008年末   90.28円 
2009年末   92.13円


 「ねえ、1ドルが84円ということは、これまでで最も円高よ」

 確かに、新聞なども15年ぶりの高値だと言っています。

 でも、そうした数字から、どうして今が一番の円高になっているということができるのでしょうか。

 「だって、1ドル=84円ということは、1ドル=90円台とか100円台に比べれば当然に円高じゃないのさ」

 でもね‥

 「何を言いたいの?」

 私が言いたいのは、名目レートではなく、実質レートで見るべきではないかということなのです。確かに、名目で比べれば、1ドル=90円のときは、1ドル=100円よりも円高であるのは事実です。しかし、それはあくまでも名目の話‥。

 例えば、昨年1ドル=90円だったのが1年後の今、1ドル=90円だとしたら?

 「円高にも円安にもなっていないわ」

 それは名目レートでの話ですね。

 もし、この1年間に仮に、米国では10%物価が上がり、その一方で、日本の物価上昇率がゼロだとしたら‥

 ということは、1年前に1ドルした商品は、今は1.1ドルになっているということになるので、今の90円ではかつて1ドルであったものを買うことはできないのです。
 
 つまり、1年前に比べ円の価値はドルに対して実質的には低下しているということになるのです。換言すれば、1年前に比べ円の実質為替レートは低下している、と。

 では、この10年間ほどの間に、日本と米国の物価はどのように変化しているでしょうか。


 実は、米国の消費者物価指数は、この10年間で28%ほど上昇しているのに対し、デフレが続いているというこの日本の消費者物価指数は、同じくこの10年間ほどで2.8%ほど低下しているのです。

 つまり、日米の物価上昇率の差は、概ね3割ほどあるということですから、名目為替レートが3割ほど円高になっていても、実質為替レートの変動率はゼロだということになるのです。

 さらに、円の真の実力を知るためには、対ドルの関係だけで判断するのではなく、他の主要通貨との関係でも判断することが必要であることを忘れてはいけません。つまり、対ユーロではどうなったかとか、対ポンドではどうなったかということも考慮に入れる必要があるのです。

 で、そうしてドル以外の通貨を含んだ主要通貨との関係での円レートを表したものを実効為替レートと呼んでいるのですが、日本銀行によれば、その実質ベースでの実効為替レートは、こうして超円高になっていると言われても、それでも15年前に比べれば、なお3割強も低い水準にあるというのです。


<実質実効為替レートの推移、2005年=100)>
     
1990年末  99.35
1991年末  105.89
1992年末  109.15
1993年末  128.31
1994年末  134.15
1995年末  135.42
1996年末  113.44
1997年末  106.82
1998年末  106.61
1999年末  119.67
2000年末  126.29
2001年末  112.53
2002年末  105.25
2003年末  105.64
2004年末  106.55
2005年末  100.00 
2006年末  90.40
2007年末  82.84
2008年末  89.20
2009年末  100.32

  確かに、2年ほど前に比べれば、実質実効為替レートは2割弱ほど円高になっているのですが、でも、この10年間を通してみれば、それほど高いレベルではないことも事実であるのです。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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