2011年度予算は組めるのか?
来年度の概算要求を巡って民主党がもめています。
始めにお断りしておきます。私は昨年政権交代を果たした時、また、今年の初めに菅さんが財務相に就任した時に、菅さんを高く評価するとともに、菅さんの活躍を期待しておりました。確かに経済や金融或いは財政については門外漢ではあるが、ある程度時間をかければ、そうした分野での専門知識も身につけ、国民をいい方向に導いてくれるだろう、と。
皆さんは如何でしょうか? 私と同じように菅さんに期待した人も多いのではないでしょうか。
でも、若干判断を下すのが早いかもしれませんが、多分、我々は期待し過ぎていたように思えます。つまり、私の菅さんに対する評価は外れていた、と。
その意味では、私の人物評価も大したことがないのかもしれません。
それはそうと、今回の概算要求基準に関しても、また、驚かされました。
何故かといえば、来年度の概算要求に関し、今年度と比べ一律に1割程度の削減を求める考えだと報じられているからです。
財政について勉強したことがある人なら直ぐお分かりでしょう。各省庁にそれぞれの概算要求が前年度を上まらない範囲で行うようにとお達しを出すのが、ゼロシーリング。シーリングとは天井。つまり、要求の上限という訳です。
そして、今回のように前年度比でマイナスになるように要求しなさいというお達しを出すのが、マイナスシーリング。
これ、財務省というか大蔵省の官僚が考え出した、極めて日本的な予算編成の知恵ということなのです。どういう意味かお分かりでしょうか?
どこの省庁も、国の台所事情が苦しいのは十分分かっている、と。しかし、そうではあっても、自分の省庁の仕事は、国民や社会を守るためになくてはならず、そのためには1円でも多くの予算を獲得することが必要なのだ、と。
まあ、国のやっている仕事の多くは、やり方の上手下手はあっても、必要かどうかと問われれば、大体は必要なものばかりで、幾ら税収が不足するからといっても、簡単にカットされては不都合が生ずるようなものばかり。
医療、年金、警察、教育、防衛、外交、公共事業‥
ですから、仕分け作業で無駄を指摘するようなことはできても、国の予算の優先度を付けるのは現実には大変に困難なことだ、と。
でも、そうやって、どの省庁の仕事も大切ですよね、などと甘いことを言っていると、予算規模は膨らむばかり。そして、その一方で、税収が伸びないとすれば借金は益々増える、と。
2010年度の一般会計予算をみてみると、歳出総額は、約92兆円。国(クニ)の予算だから92兆円ということでもないのでしょうが、とにかく92兆円で、そのうち税収で賄われる部分が幾らあるかといえば‥
たった37兆円。皆(ミナ)、よく見な(ミナ)! ということで、税収は37兆円しかないのです。ということになると、後は、その他の収入と借金で賄うしかなく、借金が44兆円となっているのです。余りの借金の多さにおヨヨと言いたくなるということでしょうか。
一方で、歳出の内訳をみると、国債費が約21兆円もあり、また、地方交付税交付金等が17兆円もあるということで、各省庁が政策経費として使える一般歳出予算は、53兆円ほどに過ぎない、と。
で、今回、政府はその地方交付税交付金等と一般歳出を合わせた歳出額を前年度並みの71兆円以下にするとともに、先ほど述べたように各省庁の政策経費について一律にマイナスシーリングをかけようとしている、と。
まあ、それだけ財政事情が厳しいのだから、政府がマイナスシーリングをかけようとしているのだな、と思う人もいるかもしれません。でも、それはそうであるにしても‥、と思わざるを得ないのです。
昨年の8月末のことをお忘れでしょうか? あの時、菅さんは、何と言ったか?
8月31日というのは、各省庁が概算要求を提出する期限であるのです。
政権が交代することが決まったのだから、前政権下の方針に従ってなされる概算要求など認めない、と。そして、私も、そうした考え方を支持した訳なのです。
政権交代が実現したのだから、予算の編成についても、メリハリをつけて行うようにすべきだ、と。本当に必要な予算は思い切って付け、そうでないものはばっさりと切るべきだ、と。
各省庁が一律にシーリングを被せられるようなやり方ではなく、仕事の重要度に応じて予算がドーンと増える省庁もあれば、大幅にカットされる省庁もあり得るのだ、と。今までは政治主導の予算編成ができなかったので仕方なかったが、これからは新しいやり方に着手するのだ、と。
あれからまだ1年も経っていません。それに現政権は、何の説明も国民に行うこともなく、またかつてのようなゼロシーリング方式に復帰したいと言っているので、私は驚いているのです。
確かに、皆一律に痛みを分かち合う方式に従えば、和をもって尊しとなす我が国の文化というか風土には合っているとも思えるわけですが、それでは、真の改革はなかなか実現できないのです。
一見、どれも重要そうな仕事に見えて、本当はばっさり切ってもいい仕事もあるかもしれない。しかし、一律カット方式では、ばっさり切られることもないし、かといって、新たに認めるべき仕事も、同じ省内にスクラップ財源がなければ認められることはないのです。
だから、菅政権が、マイナスシーリングを復活するというのであれば、もはや何のための政権交代だったのか、と感じてしまう訳なのです。松井元官房副長官が言うまでもなく、自民党のやり方と一緒ではないか、と。
では、何故菅政権は、そのような自殺行為とでもいうべきことをやろうとしているのか?
それは、ズバリ、幾ら政治主導で予算編成をやりたくても、自分たちにその能力と知識が欠けているからに他なりません。
それはそうです。官僚の力を借りることなくして予算の編成を行うことなど至難の技であるからなのです。そして、その場合の官僚というのは、何もエリート官僚のことを指すのではなく、ノンキャリを含む多くの官僚という意味であるのです。つまり、予算の大まかな方針を政治家が示すことはある程度示すことはできても、予算そのものは官僚の力を借りることなくして編成することは不可能であるということなのです。否、今の政権の顔ぶれをみると、予算の大まかな方針を示すことすらなかなか大変であるようです。
今示されている大まかな予算編成方針というのは、国債費を除いた歳出規模を71兆円以下にしつつ、国債の発行額は44兆円以下にするというものですが‥
そうすると、税収とその他の収入により47兆円ほどを賄う必要があるのですが‥、それは相当に困難であると関係者は予想しているからなのです。
つまり、2011年の予算編成は大変に難航するであろうということが今から想定されている、と。本音を言えば、子ども手当も止めてしまい、そして高校の授業料の無償化や高速道路の無料化も‥といいたいところなのですが、そこまで言ったら、それこそマニフェスト違反と言われかねないので仕方なく‥
これが現在の政権の実情であるということではないのでしょうか。
菅さんは、今鳩山前総理と同じように、「学べば学ぶにつけ‥」と感じているのかもしれません。でも、そうであればなおのこと率直に国民に事情を説明して、何を最大限優先し、何を撤回するのだということを国民に明らかにするべきだと思うのです。
以上
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