小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

菅総理がお詫びをしたい相手

 参院選の結果が出てから1週間が経過しました。 

 改めて言うまでもなく、結果は民主党の惨敗。そして、自民党が巻き返し、みんなの党が大躍進した、と。

 そして、テレビには渡辺代表や江田幹事長が出まくり、その一方、菅総理などはテレビ出演を拒否しているような‥

 まあ、負けた訳ですから、テレビに出たくない気持ちも分からないではないのですが。

 しかし、いずれにしても、国民にはイマイチ納得ができないことが多いのです。


 今回民主党が大敗したのは、消費税の引き上げを菅総理が口にしたからなのか? そう解説するコメンテーターも多い訳ですが、それでは何故自民党は勝ったのか?

 それから、小沢派が、民主党の執行部に責任を取れと発言していることに関し、そうした発言が小沢派から出るのはおかしいという意見も聞かれます。どういうことかといえば、小沢氏が2人区で2人の立候補を立てたことが失敗につながったからというわけですが‥

 この意見、もっともらしく聞こえます。何故ならば、2人区で敢えて2人の立候補者を立てた作戦は外れたわけですから。しかし、2人立てたことによって共倒れになったところはなかったことも見逃してはいけません。

 あっちでもこっちでも共倒れ現象が起きたというのであれば、小沢氏は、完全に作戦ミスを犯したということになるのですが、そうではない、と。むしろ、比例代表の投票数で分かるように、民主への投票が自民を大きく上回っていたわけですから、その意味では、2人を擁立した作戦が間違ったとも思えない、と。

 まあ、そんなことを、私以外の多くの国民も考えていたことと思うのですが‥、国民にとっては理解しがたいことがまた起きています。

 一つは、国家戦略室を縮小するというニュースです。

 昨年9月、国家戦略局を作るという話を聞いた時、国民の多くは、驚きと疑問と少しばかりの期待をもって受け止めたと思うのです。

 国家戦略局などというおどろおどろしい名称を付けて、一体全体何をやるのだろう、と。今までの日本には、ポリシーというか哲学というか、そういうものが欠けていたので、もし、これから戦略をもって日本を導いてくれるのであれば、それは期待できるかも、と。

 しかし、その国家戦略局は国家戦略室になり、そして、その組織の主も菅さんから仙谷さん、そしてキャミソールを買うほど政治資金が余っている荒井氏にバトンタッチされたわけです。

 で、そうした過程を経る中で多くの国民は気が付いていった訳なのです。国家戦略局などと言っても、経済財政諮問会議を潰した代わりの組織ではないか、と。

 つまり、国家の様々な事柄に関して、知恵を絞り戦略を練るような組織ではなく、経済や財政の運営に関してのみ方針を示す組織である、と。

 まあ、そういうことに国民が気が付くと、若干の失望があったかもしれませんが、それならそれで早く言ってくれればいいものを‥というような気持ちになったのも事実かもしれません。

 いずれにしても、経済財政諮問会議であれ、国家戦略室であれ、経済や財政のことについて意見をいう訳ですから、予算案を作る財務省からすれば煩わしくてしょうがありません。

 つまり、財務省は、国家戦略室などなくていいと思っている、と。そういえば、藤井財務大臣が、鳩山政権下で微妙な発言を繰り返していましたよね。財務省と国家戦略室の板挟みになりつつも、財務省の権限を維持したいとする‥

 ですから、そのような理解の下で今回の出来事を評価するのであれば、野党や民主党の内部においても、政治主導を弱める動きではないか、とか、財務省に言いなりになっているのではないか、という声が上がるのも分からないではない、と。特に、次の現象を考慮に入れると、なおさらその感が強くなる、と。

 新聞には、総理の一日の動きが毎日報道されています。ご存知ですよね。で、民主党内でこれまで余り注目されることの少なかった議員と総理が最近何度も会食をしているのが、私、少し気になりました。

 それは平岡内閣府副大臣です。

 何故、菅総理は忙しいなか、単なる副大臣クラスの議員と何度も話をするのか、と。

 で、そうした中、平岡副大臣は先週の15日木曜でしたか、そう遠くない将来に国家戦略室のあり方について見直す、と発言した訳です。

 言っときますと、平岡副大臣は財務官僚OBです。官僚を辞めた時の経緯などから判断すれば、役所とべったりの関係ではないとしても、官僚OBであることには違いがない、と。

 その一方、翌16日には、これも官僚OBで経済産業出身の松井前官房副長官が菅総理と会談した後、次のように述べたのです。

 「首相、官房長官、財務相、政調会長で(予算の)編成をするなら自民党内閣といっしょだ」

 「官邸主導の予算編成は、国家戦略構想の肝の中の肝であり、国家戦略室の機能を縮小するというような形が出るのは、有権者に対する裏切りとも受け止められてしまう」

 「冷静にと言い聞かせつつ、強い感情がそれを上回る。今リーダーがやるべきことは何か。やらざるべきことは何か。強い感情が睡魔を遠ざける」

 「昨晩は悔しくってあんまり眠れなかった」


 さあ、皆さんは、この松井議員の発言をどう思いますか?

 松井議員は、平岡副大臣とは違い、経済産業省の出身です。しかし、彼は経済産業省の出身だから財務省主導の予算編成に異を唱えているというのではなく、(もし彼が言っていることが本当だとしたら)彼は、省庁の利害よりも国家全体の利害を優先させるからこそ、政治主導の国家戦略室の権限縮小に異を唱えていると思われるのです。


 しかし、サイコロは投げられました。もはや国家戦略室は、アイデアを出すことはあっても、各省庁の意見調整をするような権能は奮えないわけなのです。

 ただ、いずれにしても国会はねじれ状態。仮に国家戦略室の権限が縮小されるようなことがなかったとしても、国家戦略室の思いだけで国の政策を決めることはもはやないということを承知しなければなりません。

 それに、仮に国家戦略室のどれだけの法的権限を与えようとも、その中で働いている人の能力に限りがあれば‥

 
 他にも納得が行かないことがあります。

 菅さんがまた、発言しています。

 「私の消費税に関する発言などで、大変重い選挙になったということについて、お詫びを含めた報告をし、そういったなかでしっかりやっていきたいと。小沢さんにお会いできれば、他の代表経験者と同じような形で、選挙についての報告というか、消費税について同じような形で申し上げたい」

 菅さんが小沢一郎氏にお詫びをしたいのですって‥

 同じ民主党の仲間なのに‥、お詫びで何でもしたかったらすればいいのでしょうが、それを何故テレビで言うのかが国民には釈然としません。

 でも、テレビで菅さんがそんな発言をするのは、小沢氏に会談を申し入れても、小沢氏が拒絶しているからというわけなのです。だから、敢えて恥を忍んで、テレビを通して詫びを入れたと。

 結局、菅総理は、これから先も自分を支えてくれるように小沢氏の確認を取りつけたかったということでしょう。そして、他党との連立について、知恵というか交渉面で小沢氏にひと肌脱いでもらえればありがたい、と。

 菅直人に言いたい!

 菅直人の最近のそういう言動に国民は失望しているのです。

 鳩山総理と小沢幹事長が辞任し、菅総理が誕生した時に支持率は急回復した。それは何故か?

 菅総理への期待からか? それもあるにはあったでしょうが、それ以上に鳩山総理と小沢幹事長の二人が辞めることを国民が歓迎しただけだ、と。

 で、その時点では、菅総理もそうした国民の受け止め方を分かっていたから小沢氏に対して少し静かにしていて下さい、と言ったわけです。

 ああ、それなのに、それなのに‥

 静かにしておけと言って置きながら、今度は貴方のお力が借りたい、と。

 菅さんは、今でもブレまくっているわけです。

 国民は、菅さんが総理になってまだ1カ月ほどしか経っていないから、総理を辞めろとは言わないだけの話です。もし、今が総理就任を経て1年も経っていたら、辞めろコールが起きていると思います。

 菅さんは、つくづく現実主義者なのだ、と感じてしまいました。

 現実の状況に応じて、臨機応変に言動を変えることができる人、それが現実主義者。

 まあ、そうしないと人間というか、生き物は、厳しい環境のなかで生き延びることが難しいのも真実。


 しかし、だったら貴方は何をやりたいのか、と思わず聞きたくなってしまいます。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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