小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

日本振興銀行と新銀行東京

 新銀行東京のサイトを訪れると、スーパー定期預金「特別金利キャンペーン」の宣伝をやっていました。

 7月30日までですが、1年ものは0.65%、3年ものは0.8%、そして、5年ものは0.9%。

 あれっ、金利ってそんなに高かったのか、と思うほどの水準です。

 新銀行東京というのは、ご承知のとおり東京都が出資する中小企業に対する無担保融資中心の普通銀行なのだとか。

 もっとありていに言えば、石原都知事の肝いりでできた銀行で、返す当てもない企業に多額の融資をしていた銀行です。


 いずれにしても、この銀行の金利がどれほど高いかを知るために、他行と比べてみました。

 三菱東京UFJ銀行の例です。

 300万円以上の場合ですが‥

 1年ものは0.060%、3年ものは0.10%、そして、5年ものは0.160%。

 へーっ、というのが正直な感想です。ずいぶん違うものです。

 ついでに、今注目の木村氏の日本振興銀行もみてみましょう。

 日本振興銀行の英語名は、インキュベーター・バンク・オブ・ジャパンだとか。この銀行は、名前が変わっているだけではなく、インターネット取引専用の預金取引があるようです。

 で、その預金金利をみると、

 1年ものは0.6%、3年ものは1.0%、そして5年ものは1.5%、ついでに10年ものも紹介すると、な、な、なんと2.0%なのだとか。


 さあ、皆さん、こうした実態をご覧になってどう思われることでしょう?

 新銀行東京に預金しよう、或いは、日本振興銀行に預金しようなんて、一瞬思ったのではないでしょうか?

 でも、ちょっと待って下さい。いえ、何も預金するなというのではありません。そうではないのです。私が言いたいのは、何故それらの銀行は、大多数の銀行が支払う金利の10倍もの金利を付けてくれるのか、ということです。

 話は横道にそれますが、もし、政府が国債をバンバン発行して、日本振興銀行に預金をすれば、10年物国債の利回りは、最近1.10%程度で推移しているということなので、そうすることによ
って政府は簡単に0.9%の利ザヤを稼ぐことができる、と。

 これ、何か変ですよね。

 何が変かというと‥、これ説明するのはちょっと大変なのですが‥

 いずれにしても、市中銀行というのは、お客様から集めた預金を原資として企業に融資し利鞘を稼ぐ、と。そして、残ったお金は、国債などで運用して利鞘を稼ぐ、と。

 それが、こんなに高い金利を設定している銀行ではできないということになってしまうのです。何故なら、2.0%の金利を支払う約束で集めたお金を国債で運用して、そして、その利回りが1.1%であれば、全くの逆ザヤになるからです。

 で、そうやって預金に高い金利を支払うから、当然のことながら貸出などの運用の方も、リスクの高い案件に手を出さざるを得ない、と。

 で、話がここまで進むと、じゃあ、そうした銀行も普通の銀行のように預金金利を他行並みに下げればいいのに、と思う人も多いでしょう。

 しかし‥

 こうした新しい銀行で、しかも、信用度がイマイチというかイマニの銀行は、何もしないでは預金は集らないもの。だから、止むなく高い金利を付けざるを得ないのです。

 でも、そこに問題が潜んでいるのです。

 こうした銀行の預金が、預金保険の対象外であるのであれば、どんなに高い金利を付けようと、ご勝手にぞうぞ、と。

 一般の預金者は、考えるわけです。どうしてそんなに金利が高いのか、と。ああ、そうなのか、ここは信用度が低いのだな、と。ひょっとしたら、預金が返ってこないこともあるかも、と。

 しかし、我が国の現実は、そうではないのです。元本1000万円までとその利息は預金保険の対象になっている、と。だから、どれだけ危ないかもしれない銀行に預金を預けても、1000万円までは、必ず返ってくる、と。

 で、そういうことを熟知した人にとっては、1千万円まではどこの銀行の預けても同じというか‥、否、少しでも金利の高い銀行の預けようというインセンティブが働いてしまうのです。

 もちろん、もし、そうした信用度の劣る銀行が、その信用度に応じて預金保険料を納める制度になっているのであれば、それならそれで合理性はあるわけですが、現在の預金保険制度は、信用度に関わりなく一律の預金保険料が適用されているのです。

 つまり、本来大した信用度もない銀行の設立が認められると、そうした銀行は知名度や信用度がないため、他行よりも高い金利を付けないと預金が集まらない、と。

 そして、そうした高い金利を付けても、我が国においては預金は元本1千万円とその利息までは保護されるという預金保険制度があるので、そうした高い金利を高いリスクの裏返しだとは理解せず、単に御馳走であると考えてしまう、と。

 で、そうやって高い金利を付けて預金を集めた銀行は、そうしたコストをカバーするために、どうしてもリスクの高い事業に手を出さざるを得なくなる、と。

 まあ、そうした銀行は、担保や保証人がなくても融資をすると言いますから、それなりの社会的責任を果たしているとも言える訳ですが、でも、担保や保証人がいなければ、当然のことながら貸出金利は更に高くなってしまう訳なのです。

 で、そのような銀行からお金を借りることができた中小零細企業が、金利を払うことができている間はいいのですが‥

 いずれにしても、中小零細企業に融資するのは、こうした銀行ばかりではありません。信用金庫や信用組合だけでなく、地方の銀行も中小や零細企業にお金を融資しています。そして、それらの金融機関の預金金利は、上の2つの銀行に比べて遥かに低い、と。つまり、これら2つの銀行は、最初から大きなハンディをしょって競争を余儀なくされているのです。

 10年ほど前、日本のマスコミや政治家は、担保や保証人がいないと融資しない日本の金融機関はおかしいと批判しましたが、そんな単純な話ではないのです。

 綺麗ごとでは金融機関の経営はできないのです。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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