小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

米中通貨戦争

<中国>
 IMFまで使って人民元切り上げを求めるのか?
<米国>
 別にそんな気はないが‥、でも、人民元を切り上げてもらえばありがたい。
<中国>
 アメリカも贅沢なものだ。お店の人が代金は安くてもいいよというのに、それに文句をいう客がいるなんて。
<米国>
 それは個人レベルの話だ。国全体としては、人民元が安いのでアメリカの労働者が職を奪われているのだ。

<中国>
 それは考え方の問題だ。そうしたアメリカの失業者も、中国の安い製品があるから、生活していけるのではないのか? むしろ、感謝されてしかるべきだ。
<米国>
 では聞くが、どうして中国はそんなにドルを貯めたがるのだ。
<中国>
 それは外貨を沢山蓄えることができれば、豊かな生活ができるからではないのか。
 経済学の教科書を読んだことはないのか?
<米国>
 そうだろう。豊かな生活がしたいのだろう。だったら、人民元のレートを切り上げればいい。そうすれば、幾らでも米国の製品を買うことができる。
<中国>
 そんなことは分かっているが、そうしたら、中国からの輸出が減ってしまう。
<米国>
 だから聞いているのだ。なんのために輸出を伸ばそうとするのか、と。
<中国>
 外貨を稼げば、豊かな生活ができるようになるからだ。
<米国>
 だったら、人民元を切り上げれば、もっと手っ取り早く豊かな生活ができるようになる。
<中国>
 しかし‥
<米国>
 例えば、人民元のレートを2倍に切り上げるのはどうだ?
<中国>
 そんなことをすれば、今保有している米国債の価値が、人民元に換算すると半減するということではないか? バカモン!
<米国>
 まだ、経済が良くわかっていないようだな。
<中国>
 米国債の価値が半減したら、それこそ国内で暴動が起きる。
<米国>
 しかし、それよりももっと大きな利益が中国には発生する。
<中国>
 また、バカなことを‥
<米国>
 確かに今中国が保有している米国債の価値は、人民元に換算すると半減することは確かだ。しかし、そのことは、1単位の人民元で購入することのできるアメリカの製品が2倍になることを意味する。そしてその人民元をどれだけでも発行することができるのだから、中国には莫大な利益が発生するというわけだ。
<中国>
 まさか。何か裏があるのではないのか‥
<米国>
 嘘だと思うのであれば、ゆっくり一晩考えてみたらいい。
<中国>
 確かに、中国にとっては得になるのかも‥
<米国>
 どうしても信じられないのであれば、お試し期間を利用してもらってもいい。
<中国>
 なんだ? そのお試し期間というのは?
<米国>
 3ヶ月間だけ人民元のレートを2倍にして、そして何か不都合があれば、また今のレートに戻すというクーリングオフがついた取り決めだ。これは、最友好国にだけ認めている制度だ。
<中国>
 人民元のレートを2倍にするのか?
 そんなことをすれば、中国の輸出が激減して‥、俺は責任を取らされるな。
<米国>
 だけど、中国をいっぺんに金持ちにしたということで、中国の英雄にされるであろう。
<中国>
 中国にだけ良いことが起きて‥、では、アメリカはどうなるのだ?
 もし、私が中国の英雄になるのであれば、お前は米国でどうなるのだ?
 国賊になるのか? だったら話は分かる。
<米国>
 恐らく、俺は国外追放になるかもしれない。何故ならば、人民元のレートが2倍になるや、ウォルマートに並んでいる中国の輸入品の価格が2倍になり、国民が怒りだすのは目に見えているからだ。
<中国>
 では、どうしてそういうことを米国はしようとするのか?
<米国>
 そうすれば、少なくても米国の輸出競争力が回復し、多くの失業者が再び職に就くことができるからだ。
<中国>
 やっと本音が出たな。やっぱり中国に米国製品を売りつける作戦なのだな。
<米国>
 分からない奴だな。中国の目標は豊かになることだろう? だったら、価値の上がった人民元で好きなだけ米国製の品物を買うことができるではないか。
<中国>
 どうも腑に落ちない。
<米国>
 だから、クーリングオフの期間がついているから気に入らないなら、またレートを戻せばいいではないか。


 今、米国は、人民元のレートが安すぎると言って非難しています。確かに、中国からの輸出が集中豪雨的に続いている状況からだけで判断するならば、人民元が安いということができるかもしれません。でも、いずれにしても、そう遠くない将来に人民元のレートが急上昇を始める時が来る筈です。何故ならば、如何にお宝に見えたドル紙幣も、溜まる一方では段々魅力がなくなってしまうからです。いずれもういいよ、となるでしょう。そのときに人民元の価値は急上昇を始めるでしょう。そして、そうなったときに米国は、ひょっとしたら輸出競争力を回復するかもしれませんが、その代わり、中国人のために働いている自分たちの姿に気が付き、昔を懐かしく思うでしょう。


以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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