外為特会の見直し
本日の日経朝刊によれば、菅直人財務大臣が外為特会の積立金のあり方を見直すように事務方に指示していたのだとか。
しかし‥
閣議後の記者会見で菅直人財務大臣は、特に外為特会に限って見直しを指示したことはない、と新聞報道の内容を否定したと言います。
それは、そうでしょう。もはや外為特会をどれだけ見直しても、埋蔵金は出てこないからです。というよりも、隠れ借金が出てきそうな気配すらあります。
なーぜか?
それは、最近の円高・ドル安で、外為特会のドル建て資産には多額の為替評価損が発生しているからです。
これ、どういう意味かお分かりでしょうか?
その前に‥、外為特会に限らず、特別会計全般の見直しについて、貴方の意見を伺いたいと思います。
国の特別会計は全て見直し、一般会計に統合すべきかどうか?
「母屋ではお粥をすすっているのに、離れではすき焼きを食べている」
そんな風に塩爺が言いましたよね。母屋、即ち、一般会計は財源が不足して四苦八苦しているのに、離れ、即ち、個々の特別会計の方では、お金が余って贅沢をしている、と。
こんな風に理解してしまうと‥、まあ、それは一部は当たっているわけですが‥、そんな風にしか理解できないと、当然のことながら特別会計なんかなくして、皆一般会計に統合してしまえ、という意見になってしまいます。
でも、そもそも特別会計の方でも、そんなに潤沢な埋蔵金があるはずはないのです。あるのであれば、財政当局からとっくに召しあげられているわけですから。
例えば、小泉政権が発足した時に、小泉首相は新規国債の発行額を30兆円以内に抑えると約束しました。結果的には、その約束を守ることはできなかったわけですが、しかし、当初はその約束を守るために事務方はありとあらゆる方策を考え、国債の発行を30兆円以内に抑えようと努力した訳です。つまり、そうした過程で埋蔵金の有無が厳しくチェックされた、と。
まあだから、大した埋蔵金なんて最初からないのです。仮に埋蔵金があったとしても、そうした積み立ては、全く自由に使えるものではなくて、万が一のときのために予め積み立てておくようにと法律などで義務化されているものなのです。だから勝手に使うことはできない、と。
ただそうはいっても特別会計ですから、どうしても政治家のチェックが疎かになる可能性はあります。早い話、マスコミは一般会計の規模には大きな関心を寄せますが、特別会計のことなど‥
つまり、特別会計の話になると、大変に専門的になり、複雑で分かりにくいからなのです。そして、そうやって政治家のチェックが甘くなるから、役人や役人のOBがすき焼きを食べるようなことをしている、と。
つまり、特別会計だから無駄が出るのではなく、特別会計についての政治家のチェックが甘いから無駄を発生させているだけの話なのです。ですから、仮に特別会計を一般会計に統合したところで、チェックが甘いものは甘い訳で、無駄が一掃できるとは思えないのです。それに、全ての特別会計をなくして一般会計に一本化することは、なんでもかんでもが一つの財布で処理されることになり、却って効率的な運営を阻害する危険すらあるのです。
一つ卑近な例を上げましょう。
サラリーマンである皆さんが給料をもらったとときに、これは家賃分とか、これは新聞代とか、これは電気代とかいって封筒にお金を入れておくようなことをしませんか?
そんなことはしないという人も多いかもしれませんが、社会人になったばかりのころは、どれだけ生活費がかかるかまだよくわからないからという理由で、そんなことをするかもしれませんね。そうしておけば、お金が足りなくなることもないであろうから、と。
これ、結局、特別会計と同じような考えです。もし、そんな行動をとらず、無計画にお金を使っていたら足りなくなってしまうこともあるというわけです。
従って、特別会計というものは、もしちゃんと運用されるのであれば、弊害よりもメリットの方が大きいと。では、何故今、特別会計が悪く言われるのか? それは、各省庁が特別会計を悪用してきたからにすぎない、と。では、何故悪用を見逃したのか?
それは、政治家が不勉強で、特別会計の内容をチェックできなかっただけの話だ、と。
特別会計の中身が如何に専門的であり、分かりにくいかの一例をお示しします。
先ほどの日経の記事には、こんな内容が書かれています。
「現在は金利収入などのドル資産を円に換えることで円高を招く事態を避けるため、国がドル資産に見合うだけの政府短期証券を発行して円資金を調達し、一般会計への繰り入れなどに回している」
これ、どんな意味かお分かりでしょうか?
多分、なんのこっちゃいな、と思う方が大多数だと思います。
では、最初の質問から解説しましょうね。
先ず、最近の円高・ドル安で外為特会には多額の為替評価損が発生しているとはどういう意味か?
外為特会というのは、国が外国為替を売買し、外貨準備を保有するための特別会計です。では、どのようにして国は外貨準備を溜め込んでいるのか? 国の保有する外貨は、国が日本銀行を通じて外為市場で外貨を購入することによって得られたものです。では、その外貨の購入資金はどこから来るのか? 実は、政府には通常、財源はないのです。そして、財源がないので、為券という一種の国債を発行して円資金を市場から調達する、と。そして、その借金によって得た円資金でドルを購入する、と。
例えば、1兆円分の為券を発行して100億ドルのドルを購入したとしましょう。そうすると、外為特会の負債の部には1兆円の借金(為券)が計上され、そして資産の部には100億ドルのドルが計上されることになります。そのドル資金は、キャッシュで保有することも可能ですが、それでは利息を生まないので、通常は米国債などで運用をしているわけです。ただ、いずれにしてもその価値は100億ドルである、と。お分かりのようにこの時点では、1ドル=100円というドル円のレートであったわけです。
そして、その後1ドルが90円になったとしましょう。
負債の部には相変わらず1兆円の借金があるわけですが、資産の部の100億ドルは、円換算するともはや1兆円の価値はなく9000億円に下がっている、と。つまり、1000億円の為替評価損が発生したということになるのです。
だから、もはや埋蔵金があるどころか、隠れ借金が発生しているということなのです。
次に、「現在は金利収入などのドル資産を円に換えることで円高を招く事態を避けるため、国がドル資産に見合うだけの政府短期証券を発行して円資金を調達し、一般会計への繰り入れなどに回している」とは、どういう意味なのでしょうか。
これに直接に答える前に、一つ質問をしたいと思います。
我が国は、2004年3月を最後に、その後は為替介入を実施していません。しかし、為替介入を行っていないにも拘わらず、その後も外貨準備は少しずつ増加しているのです。何故でしょう?
それが分かると、新聞記事の意味がわかるわけですが‥。
実は、その後も政府は現実には為替介入を行っていないものの、為替介入と同じ意味を持つ行為を行っているということなのです。
外為特会は、為替介入の結果得たドル資金を米国債などの形で運用しているわけですが、それが毎年利子を生む訳で、その利子が外為特会の収入になるわけです。では、その利子収入をどのように処理しているのか?
実は、そうしたドルの利子収入は円資金に交換したうえでないと一般会計の収入に繰り入れることができないという規程になっているのですが、もし、そうしたドルによる収入を外為市場で円転すると円高圧力がかかってしまうという理由で、そのドルによる利子収入に見合う為券を発行して円資金を調達し、その円資金を利子収入として一般会計に繰り入れるような処理をしているのです。しかし、その結果、外為特会の資産の部には、為替介入を行っていないにも関わらず利子収入分の外貨が追加される一方で、負債の部の借金(為券)も増加していく仕組みになっているのです。
この話、非常に複雑で分かりにくいでしょ?
だから、政治家のチェックが今まで行われにくかったというわけなのです。
外為特会の見直しを行うというのであれば、政治家自身が先ずよく勉強する必要があると思います。
以上
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