小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

人民元は切り上げない

 中国の全人代が閉幕し、温首相が記者会見を行いましたが、温首相はアメリカに対する不満をぶちまけました。

 「国家が互いを非難し、さらには強制的な方法で為替相場の切り上げを求めることに反対する。そのような方法は人民元相場の改革には有益でない」

 「人民元が過小評価されているとは思わない」

 「一部の国が輸出の拡大を目指すのは理解できるが、輸出拡大を目的に自国通貨の価値を下げ、他国に切り上げ圧力をかけようとするのは理解できない。私からみれば、それは保護主義的だ」

 

 一部の国と言い、米国を名指しこそしていませんが、米国に対して文句を言っているのは間違いはありません。

 記者会見の様子をみていると、温首相、相当に怒っているように思われます。まあ、人民元のことだけならともかく、台湾への武器輸出や、ダライラマとの会見など中国の神経を逆なでするようなことばかり米国がするからでしょう。

 こうなると、中国が人民元のレートを切り上げることなど相当に先の話になりそうな気配です。米国が本当に人民元のレート切り上げを求めるならば、むしろそのことについては一切触れない方がいいようにすら感じられてきます。

 では、当分人民元の切り上げは行わなれないのか?

 それは何とも言えない。

 何故ならば、中国経済はバブルの様相を帯びつつあるからです。インフレ率こそまだそれほど高くはありませんが、不動産の価格は相当の勢いで上昇しているからです。

 そして、そうやって不動産価格が上昇すれば、お金に余裕のある人々は、不動産購入に手を出さない筈がありません。ちょうど日本でバブルが起きた時にような状況です。土地やマンションの価格が上がるので、自分で住むわけでもないのに銀行からわざわざお金を借りた上でマンション購入に走るわけです。いくら銀行に金利を払わないといけないといっても、マンションの価格が上昇し、それによって利益を得ることができるわけだから、何にもしないで儲かる筈だ、と。

 それに、銀行からお金を借りたというのも、お金に余裕がないから借りたという人ばかりではありませんでした。お金を借り、そして銀行に利子を払えばその分は経費となり、そうすると課税所得を減少させることができ、払うべき税金を少なくすることができたからです。

 そうした行為に走った人が、貴方の回りにもいませんでしたか?

 えっ、貴方もそうだったのですか。

 いずれにしても、中国でもそのような現象が起きているということです。そして、中国のなかでも不動産バブルが起きつつあるのだろうな、と感じている人々がいるわけです。そしてまた、バブルならいつか弾けるであろうということも当然予想できる訳です。

 しかし、それでも不動産を買いに走る。

 何故か?

 それは、バブルが弾けるまでは買わないとソンソンと思うからです。

 実際にバブルが弾けるのは、まだまだ先のことでしょう。また、そう思うからこそ、まだまだ買い手が途切れないわけなのです。

 しかし、いつかは‥

 5年先なのか、3年先なのか、あるいは10年以上も先なのか?

 中国政府は、その前に軟着陸をさせることができるのか。

 人民元の切り上げには断固反対だ、という態度を取り続けると、どんどんマグマが溜まっていくような気がします。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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