小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

90年後の日本経済

 昨夜テレビを観ていたら、2100年には日本の人口が4800万人ほどになると言っていました。1900年当時の人口もそれと同じようなもので、要するに、100年かけて増えた分だけ100年かけて減少し、元の水準に戻る、と。

 こんなことを言われると多くの人がショックに思う筈です。このままじゃ日本が滅んでしまうではないか、と。そうですよね?

 確かに、このままの状態がこれからも続くのであれば、計算上は人口はそこまで減少してしまうのですが‥、果たしてそうなるのか。

 まあ、それでも多くの大人は、そんなことを言われても、それほど反応を示さないのも事実でしょう。だって、子どもを作りたがらないのは各自の自由であるし、それに90年先のことを言われても自分はもういないから関係ない、と。

 

 では、90年先ではなく40年先のことだったら、どう思うでしょうか。

 そうなっても、既に引退しているような方々は、やはりそれほどの反応を示さない、と。ただ、若い人の場合には大いに関心を寄せるでしょう。何故ならば、40年経つということは、自分の人生にとって絶頂期にある可能性があるからです。例えば、社長になっているとか‥。で、そんなときに、日本の状態が芳しくないであろうと予測されると、つい気持ちが沈んでしまうというものです。

 そういうことで、政治家は明るい未来を予想して見せたがります。例えば、今後毎年名目3%で経済は成長する、と。そして、この15年間ほど名目ベースでは殆ど増加していないGDPが、650兆円ほどに達するであろう、と。そして、実質ベースでも2%の成長を遂げるであろう、と。
 
 本当に、そんなに順調に経済が成長するものでしょうか。何故こんなことを言うかと言えば、少子高齢化の進行とともに、日本の労働力人口がじわじわ減少しているからです。毎年労働人口が減るというのに、実質ベースで2%の成長を果たすためには労働者が毎年2%以上、或いは3%近く長い時間働くか、或いは、3%近く生産性を上げる必要があるということになりますが、そんなことが果たして可能なのか、と。

 まあ、でも、ここはあまり暗く考えずに、労働生産性の引き上げに成功するとしましょう。で、そうなったとして、日本経済の未来はどうなるのか?

 あと10年先、あと40年先にはどうなっているのか?

 今は為替レートについて報じる場合、1ドルが80円台になりました、とか言っていますが‥、2050年になると、円相場といえば、円とドルの関係をいうのではなく、円と人民元の関係をいうことになっているかもしれません。

 しかも、そのときの人民元の価値は、当然のことながら、今現在のレート(1元=約13円)を上回るものとなっているでしょう。例えば、1元=40円だったりして。これ、人民元の価値が3倍になったことを意味します。

 こんな話をすると、いやーな顔をする人もいるはずです。「そんなこと、なるはずはない!」と。

 しかし、中国は、今後も実質ベースで8%程度の経済成長が見込まれています。その一方で、日本は頑張っても2%程度。そういう状態が何十年も続けば、いずれ中国の1人当たりのGDPが、先進行並みになる日もくるわけです。そうした高い成長率がいつまでも続くこともないと思うのですが、安い人件費を武器にした成長は、少なくても1人当たりのGDPが先進国の半分を超える
辺りの水準になるまでは続くと見た方が妥当だ、と。つまり、今、中国の1人当たりのGDPは日本などの1/10程度ですから、中国のGDPが、この先5倍ほどになるまではまだまだ高い成長が続いてもおかしくない、と。

 で、中国がそのような高い成長率をこれから先も長い間続けるとすれば、当然のことながら人民元の価値は上昇する、と。で、そうなると、実質GDPが5倍になった上に、為替レートが仮に2倍に切り上がるとなれば、もう、1人当たりの名目GDPは、中国と日本とで同じになってしまうであろう、と。

 では、そのような状況のなかで、日本人の生活は、どのように変化するのでしょうか。

 中国に追い付かれて、すっかり元気をなくしているのでしょうか。

 そのように人民元の価値が高くなり、その一方で円の価値が下がるとなれば、もはや日本の消費者は中国の安い製品を購入することがなくなるでしょう。今はバカみたいに安いなと思っている乾燥シイタケも、国産並みになっているかもしれません。

 ただ、そうなれば、日本の農家にとっては朗報です。円の価値が低下することによって日本の農産物の国際競争力が回復し、日本の農業が復活し、耕作放棄地が再び熱心に耕される日が
来るかもしれません。そうなれば、食料自給率100%も夢ではないかも。

 では、日本の製造業は、どうなっているでしょうか?

 円安のお陰で、輸出をガンガン伸ばしているのでしょうか?

 決してそんなことはないと思います。何故ならば、そのように円安になったということは、日本の製造業の競争力がなくなったことの結果であるからなのです。逆に言えば、日本がこれまでと同じように国際競争力を保持したままで、そのような円安になることはない、と。もし、円安が起きるとすれば、国際競争力の低下に伴うものだ、と。

 だから、ひょっとしら日本の製造業が国際競争力を失い、その一方で、農家が元気になっている姿が予想されるのです。

 では、日本の消費者はどうしているか?

 日本の農家が元気になるということは、結局、消費者が支出するお金のより多くが食料に回されるということであり、その結果、食料以外の支出を削らなくてはいけなくなる、と。これ、エンゲル係数が高くなるということです。

 まあ、そういうことで農業が再び盛り返し、そして農業に従事する人も増えることが予想されるわけですが、そうなって再び多くの人が地方に暮らすようになれば、また子どもを沢山持とうという人が増えて、日本の人口も増加に転ずるようになるかもしれません。

以上

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

本サイトに掲載されている情報は、情報提供を目的としたものであり、特定商品や投資の勧誘を目的としたものではありません。
最終的な投資判断はお客様ご自身の判断と責任によってなされるものであり、この情報に基づいて被ったいかなる損害について小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルは責任を負いません。
小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルは、信頼できる情報をもとに本資料を作成しておりますが、正確性・完全性について小笠原誠治及び株式会社GCIキャピタルが責任を負うものではありません。
本サイトに記載されている情報は、作成時点のものであり、市場環境の変化等によって予告なく変更または廃止することがあります。

ページトップへ戻る