小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

消費税で物価を上げる

 そこの貴方!

 そう、貴方です。貴方に質問したいと思います。質問は3つあります。

(1)貴方は、消費税の引き上げに賛成ですか、反対ですか。

(2)消費税は誰が負担しますか?

(3)現在5%の消費税率を10%に引き上げると、物価はどのくらい上がるでしょうか。


 さあ、如何でしょうか。答えについて考えてみたいところですが、その前にもう一つ。

 

 NHKの職員が不祥事を引き起こしたとします。そんなとき、貴方はどう思いますか?

 「それは怪しからんことだ!」

 では、民放の職員が不祥事を起こしたら、NHKの職員が不祥事を引き起こしたときと同じように憤りますか?

 「いやー、NHKの職員の場合ほどじゃないかも‥」

 何故でしょう?

 「だって、NHKは受信料を我々から取っているじゃないの。民放はそうではないし‥」

 我々から徴収した受信料で運営されているから、国の機関みたいなものだということですね。では、民放の運営には、我々は貢献していないのでしょうか?

 「民放は無料で見れるからね」

 では、我々はお金を払っていないと?

 「払ってないよ」

 では、誰が民放の運営費を出しているのでしょうか?

 「スポンサー。あんまり変なことを聞かないの!」

 じゃあ、スポンサーは、我々がテレビ番組を観て楽しむことができるように慈悲心によりお金を出しているのでしょうか。

 そんなことはありません。ちゃんとスポンサーは我々が購入する商品の価格に、CMの放映料を上乗せしているのです。つまり、我々消費者が、民放の運営費を負担している、と。

 
 ということで、頭の体操を少ししてみました。

 本題に戻りましょう。

 先ず、消費税の引き上げに賛成か、反対か。これは、各人の好みの問題でしょうから、賛成でも反対でもかまいません。

 「じゃあ、聞かなきゃいいのに!」

 では、消費税は誰が負担するのか?

 「誰って、商品を買う人でしょ」

 つまり、消費者が負担するということですね。

 「他に誰が負担してくれるのよ? 知らない間にお母さんが負担しているのかな」

 消費税をお母さんが負担することはないでしょうね。ですが、常に消費者が負担するとも言えないのです。

 「いい加減な! 買い物をすると、毎回消費税も支払わされているじゃないの」

 確かに、我々が支払う代価には消費税が含まれています。

 「でしょ?」

 ですが‥

 例えば、まだ、消費税が導入されていないときに100円の価格で売られていたインスタントラーメンがあったとします。

 「まるちゃん?」

 で、政府が5%の消費税を導入することに決定するとします。そのインスタントラーメンは幾らになるでしょうか?」

 「幾らって‥、105円に決まっているじゃん」

 一応そういうことになるのでしょうが、もし、消費者がそうした増税による値上げを嫌ったとしたら? つまり、インスタントラーメンの価格が上がるならば、暫く買うのを控えるとか、買うとしても、買う数量を減らすとか‥。そうなると、メーカーは考えるでしょう。価格を下げるか、と。つまり、本体価格を以前の100円から例えば95円に値下げして、それに5%分の5円を消費税を乗せて、合計100円で売るとしたら?

 こうして本体価格が引き下げられることがあれば、我々は、今までと同じ100円でインスタントラーメンを購入することになるわけです。

 「でも、そのときには本体価格は95円に値下げされていて、5円分の税は、やはり消費者が負担しているのでは?」

 そういう見方をすれば、そのとおり。消費者が常に消費税を支払っているということは事実でしょう。

 しかし、消費者は、課税される前も後も、同じように100円でインスタントラーメンを購入することができる一方で、メーカーの方は、以前は100円の代金を受け取ることができたのに、課税後は、95円しか手元に残りません。だとすれば、5%分の消費税は、実質的にはメーカーが支払ったということができるのです。

 「なーるほど」

 我々は、消費税は常に消費者が負担するものであり、企業には全く負担がかかっていないように考えがちですが、本当はそうではないのです。消費税の負担は企業側にもかかることがあるのです。それと同じようなことは法人税についても言えることです。我々消費者は、消費税の増税については反対しても、法人税の増税には案外無頓着であるのではないでしょうか。むしろ、消費税を上げるくらいだったら法人税を上げればいいではないか、と。如何にも法人税の引き上げは消費者とは関係がないような‥。でも、そんなことはないのです。企業側が自分たちに課せられる税が増加すれば、その負担を消費者に転嫁しようとする、つまり、製品価格を引き上げようとすることがあり得るからです。

 いずれにしても、消費税は形式的には消費者が負担しているが、実質的には消費者と企業の双方によって負担されていると言えるのです。そして、その分担割合は、消費税の課税にともなう価格の上昇が大きければ大きいほど消費者の負担が大きくなる、と。100円のインスタントラーメンが105円になるならば、消費税は実質的に100%消費者が負担し、100円のままであれば、実質的に100%メーカーが負担し、そして103円になったら、そのときは本体価格が98円になり、そしてその5%が5円で、合計103円になるので、3円分は消費者が実質的に負担し、2円分はメーカーが負担している、と。

 3番目の質問は、もうお分かりのように消費税の引き上げによって価格が幾らになるかというのは、何とも言えないというのが正解ということになります。


 で、本日、私が言いたいのはこれからがメインということになります。今までのはオードブル。

 貴方に質問します。消費税を引き上げたら、物価はどうなるか?

 もうお分かりですよね。幾ら上がるかは不明であるが、幾分は上がるであろう、と。だとすれば、デフレを解消したいと考える人にとっては、消費税の増税は一つの検討材料になり得るであろう、と。ただ、大問題があります。それは、消費税を増税すれば、価格の上昇、そして物価の上昇がもたらされるであろうが、その一方で、消費者の所得に変化がなければ、実質的な購買力が落ちるために、購入数量は減少し、実質GDPは減少する、と。

 では、名目GDPは、どうなるのでしょうか?

 こちらは何とも言えないでしょう。価格の上昇以上に数量が減少しているとすれば、名目GDPは減少するでしょうが、価格の上昇ほどには数量が減少しなければ、名目GDPは増加することになるでしょう。

 まあ、デフレの解消を第一に考える人にとっては、名目GDPが増加すればそれは大いに歓迎すべきだ、と。ただ、繰り返しになりますが、幾ら名目GDPが増加しても、実質GDPが減少してしまうのでは、

「何の意味もない! 何の意味もない!」

 では、実質GDPを減少させずに済む方法はないのか?

 実質GDPの減少は、消費者の購買力が減少することによって引き起こされました。だったら、消費者の購買力が減少しないようにすればよい。

 何をすればいいのか?

 つまり、消費税として徴収した税金を、また、消費者や企業に定額給付金とか減税分として還元すればいいということです。

 つまり、仮に100円のインスタントラーメンが105円に上昇したとしても、消費者が支払った5円がまた国から給付金や減税などの形で還元されることになれば、結局消費者の負担は実質100円で済むわけですから、以前と同じ量のインスタントラーメンを消費することができる、と。そして、その一方で価格は105円となり、そうした結果の積み重ねにより物価が幾らかでも上昇するのであれば、デフレを解消することが可能になるのです。

 菅さんがどうしてもというのであれば、こうした案を検討しては如何でしょうか。

 消費税を上げる一方で、減税をしたり手当を支給する‥、結局、消費税の増税を実現する作戦だな、と思う方がいるかもしれませんね。

以上

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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