小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

米国債保有、やはり中国が世界一

 米国債を一番多く保有している国はどこか、ご存知でしょうか。

 「中国? ああ、そうじゃなくて、日本がまた首位に返り咲いたんだった。だから日本が一番」

 ブー!

 「どうしてよ?」

 やっぱり中国の保有額が一番大きかったと、米財務省が計数を修正したのです。

 

 先ずは、当初発表になった計数をみてみましょう。


<米国債の保有状況>

      中国      日本   
2009年
1月   7396億ドル   6348億ドル
2月   7442億ドル   6619億ドル
3月   7679億ドル   6867億ドル
4月   7635億ドル   6859億ドル
5月   8015億ドル   6772億ドル
6月   7764億ドル   7112億ドル
7月   8005億ドル   7239億ドル
8月   7971億ドル   7306億ドル
9月   7989億ドル   7510億ドル
10月   7989億ドル   7459億ドル
11月   7896億ドル   7573億ドル
12月   7554億ドル   7688億ドル


 「そうそう、そんな感じだった。昨年の12月に日本が少し中国を上回って‥」


 では、修正後の数値をお示しします。

<米国債の保有状況>

      中国          日本   
2009年
1月   7396億ドル          6348億ドル
2月   7442億ドル          6619億ドル
3月   7679億ドル          6867億ドル
4月   7635億ドル          6859億ドル
5月   8015億ドル          6772億ドル
6月   7764億ドル→9158億ドル 7112億ドル→7082億ドル
7月   8005億ドル→9399億ドル 7239億ドル→7209億ドル
8月   7971億ドル→9365億ドル 7306億ドル→7275億ドル
9月   7989億ドル→9383億ドル 7510億ドル→7479億ドル
10月  7989億ドル→9383億ドル 7459億ドル→7429億ドル
11月  7896億ドル→9290億ドル 7573億ドル→7543億ドル
12月  7554億ドル→8948億ドル 7688億ドル→7657億ドル

 「大幅な修正だな」

 そうですね、中国の数字は大きく引き上げられています。

 「日本も修正になったの?」

 日本の分も修正になっていますが、こちらは小幅な修正のようです。

 「2009年6月以降の分だけ修正になったのか」

 そのようですね。

 実は、この修正、毎回この時期に行われる定期的な見直しによるもので、昨年もこの時期に修正がなされていたようです。

 「てっきり数字を操作したのかと思ったけど‥。でも、おかしいよ。中国の計数は、毎月1394億ドルが上乗せされ、そして、日本の方は、毎月約30億ドルが差し引かれているみたいだけど。それに修正後の数字をみると、昨年の6月に中国は1000億ドル以上の買い増しをした後、その後は、あまり大きな変化はないみたいだけど、6月に何かあったのかな‥」


 実は、5月と6月に大きな断層が発生する結果になっているのですが、それは必ずしも6月に中国が大量に米国債を購入したことを意味しないのです。

 「でも、1000億ドル以上も増加してるけど‥」

 それは、統計の取り方が変わったというか‥、その時点から異なった方法により集計をしているから、そこで統計の連続性は遮断されると考える方が適当のようなのです。

 もう少し詳しくいえば、米財務省は、09年6月の計数を7764億ドルから9158億ドルに変更したわけではなく、それ以前の集計方法で集計すると09年6月の数値は7764億ドルである一方で、それ以降の集計方法で集計すると09年6月の数値は9158億ドルになると言っているのです。つまり09年6月の数値は2つある、と。そして、その2つとも正しい、と。だから、6月に何か特別なことが起こったとは考えない方が適当なのです。

 「超難しい!」

 いずれにしても、もし米財務省のいうことを信じるならば、日本は中国を抜いたと思ったけどそうではなく、中国が世界一のままだった、と。

 「じゃあ、中国は米国債の保有高を減らしてはいないの?」

 いえ、そうではありません。保有高は世界一ですが、ピーク時にくらべ450億ドル程度減少していることには変わりはないようです。


 米財務省は、金融機関などの仲介機関の名前で米国債を購入する投資家がいるために、真の国債の保有者(及びその国籍)を確認することには困難が伴うと言っています。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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