小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

インフレ目標に難色

 昨日、メルマガで先日の白川日銀総裁の記者会見の内容について解説しましたが、本日日銀は、そのときの記者会見の詳しい内容を発表しましたので、もう一度チェックしているみることにしたいと思います。

(問) 先程、インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行とそうでないところの相違はそれほど大きくないとのご説明がありました。しかし、総裁ご自身あるいは日本銀行としては、インフレーション・ターゲティングを採用すると大きな弊害があるとお考えだと思うのですが、どうして目標の数値を固定してしまうと危ないのかという点について、もう一度詳しくご説明下さい。

(答) 先般、G7に参加しましたが、G7の国の中でインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行は、英国とカナダです。残り5つの国は採用していないわけです。なぜ日本銀行がインフレーション・ターゲティングを採用していないかという問題設定もありますが、逆に言えば、英国とカナダはなぜ採用しているのかという問いの立て方もあるかと思います。インフレーション・ターゲティングについては、「ターゲティング」という言葉に皆の関心が集まりがちですが、私自身は、実際には金融政策を運営していくときの説明の1つの枠組みだと思っています。

 例えば、BOEの先日の金融政策決定会合発表文、あるいはインフレーション・レポートをみると、物価上昇率を、通常言う意味での「ターゲット」すなわち「目的」にした政策運営をしているわけではありません。現在、英国の足許の物価上昇率は、3%を超える上昇率に上がってきています。そうなると、通常は、そこで金利を引上げていくということが自然に想定されます。これが、通常言うところの「ターゲット」という言葉に最も馴染む感じです。

 しかし実際には、そういう政策運営はしておらず、むしろ今、英国はきわめて緩和的な金融環境を維持しています。

<以上、抜粋>


 白川総裁は何を言いたいのか?

 インフレ目標を採用しているといえば、物価上昇率を目標となるレンジに収めるために機械的にきっちりと金利を上げ下げしていると考えられがちだが、英国の場合でも、そんな機械的な運用はやっていないのだ。

 だとすれば、インフレ目標を採用しようと採用しまいと、やるべきことが変わるわけではないのだ、と。


 でも、それだったら疑問を湧いてきます。

 やることが変わらないのであれば、別に採用してもいいのではないか、と。

 しかし、採用するとは決して言いません。つまり、インフレ目標を採用したくない本当の理由が別にあるのです。

 それは、目標を設けながら、それを達成できなければ、その責任と取らされるということです。

 母親が子どもにいいます。

 「今度のテストはがんばってね!」

 「うん」

 「うんじゃなくて、90点は取ってほしいわ」

 「うーん‥」

 「じゃ、80点は?」

 「頑張るけど‥」

 「頑張るといっても、具体的な目標を立てないと‥」

 「でも‥」

 「90点取ったら、お小遣いを増やしてあげるわ」

 「とれなかったら?」

 「そのときは、お小遣いを減らすわ」

 「ええっ」

 
 白川総裁は、仮にインフレ目標を採用しても、それを実現する自信がないのです。何故ならば、この10年間ほどいろいろ努力しても全然効果がなかったからです。これ以上、どんな努力をしたらいいのか、と。だからインフレ目標を採用したくないのです。

 白川総裁は、次のように言いたいのかもしれません。

 「これまでの経過をご存じないのですか?」と。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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