小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

インドでインフレが

 インドで物価が上昇していると言います。

 例えば、コカコーラの価格が、1月に9%~20%値上げされたと。200CC入りのコーラは、10ルピー(約19円)からから12ルピー(約23円に)になったと。それに、お菓子の価格も上がっている、とか。

 なーんでか?

 それは、昨年の夏は雨が少なかったために、サトウキビの収穫が減ったからだ、と。そのせいで今年1月の砂糖の価格は、1年前に比べ6割も上がってしまった、と。

(注)ここで、ダイエット・コーラも上がったのか、なんて聞かないで下さい。詳しいことを知りたい人は、Go to India.

 

 それ以外では、車なんかも価格が上がっているようですが、こちらは、1-2%程度だとか。そして、鉄鋼も1.5%の上昇した、と。まあ、上がったといっても、別に驚くほどのことはないようなのですが‥。

 ですが、こうした工業製品価格の上昇の背景には、在庫調整が進展したことや需要の増加があるのだとか。つまり、景気が回復している、と。

 で、こうしたことの結果、1月の卸売物価指数は、前年同月比で8.6%も上昇した、と。

 まあ、物価の上昇率が2-3%程度であれば、特段懸念することもないというより、今、デフレの状況にある日本からすれば理想的な状態にも見えるわけですが、流石にインフレ率が2ケタに近づくと、これは大いに懸念すべきだ、ということになります。

 何故ならば、そうしたインフレが続けば、中央銀行が金利引き上げを行わなくても、自然に金利が上昇し、そうすると景気回復の足かせになってしまうからです。

 イマイチピンときませんか?

 貴方が、国債でお金を運用していると想定して下さい。今の日本のように物価が下落気味であるのであれば、仮令利回りが1%台であっても、それほど不満は感じないでしょうが、仮にインフレ率が5%に上昇したときに、利回りが依然1%台であったら、どう思いますか?

 毎年物価は5%も上がっているのに、国債の利子収入は1-2%程度しかないというのであれば、投資した元本の価値は、毎年実質的に目減りしているということですから、当然、そんな低利回りの国債は誰も買わない、と。そして、そうやって国債の売れ行きが悪くなるので、政府は国債の利子を引き上げざるを得なくなる、と。つまり、インフレになれば、当然金利は上昇する、と。それは、中央銀行が政策金利を仮に引き上げることがなくても、です。

 で、私が何を言いたいか、といえば‥

 このようにインドで、そしてまた中国でインフレに火がつくようなことになれば、それは遠からず、先進国側にも影響を及ぼすということです。何故ならば、今や中国やインドは世界の生産基地となっており、そうした国々で作られる製品の価格が上昇すれば、そうした製品を大量に輸入している先進国側の物価も上昇せざるを得ないからです。

 今、我が国には、デフレが大変恐ろしいことだ、と盛んに吹聴している人々がいます。もちろん、そういう人々は、悪意でそうしているわけではなく、本当にデフレの恐ろしさを信じてのことだと思うのですが、しかし、我が国のデフレも、ひょっとしたら予想以上に早く終ってしまう可能性があるのです。

 そんなに急に景気が良くなるのかって?

 もちろん、景気が良くなって、そして需要が旺盛になってデフレが解消されるならそれに越したことはないでしょう。しかし、需要が旺盛にならなくてもインフレになる可能性があるのです。つまり、中国やインドなどから輸入している製品価格が高くなれば、我が国においても、物価の上昇がもたらされると考えられるからです。

 そして、景気がそれほど回復しているわけでもないのに、インフレ率が例えば5%になったときに、専門家の方は何というのでしょうか?

 「やっとこれでデフレが解消できた!」

 「しかし、実質GDPの成長率は、殆どゼロパーセントですよ」

 そんな時代が遠からず来るかもしれません。物価が上がればいいというものではありません。

 あの頃はまだましだった、なんていうような時代になるかもしれません。

 「あの頃って、新政権になった頃の話?」

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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