小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

米公定歩合引き上げの意味

 米国の公定歩合が引き上げられ、いろいろな解説や反応が表れていますが、皆様は、どのようにお感じでしょうか。

 先ずは、我が国の担当大臣の反応。

 「結果として円安になっており、我が国経済にマイナスとは思っていない」 「米国は物価上昇が続いている状況なので、全体として行われた」

 この発言が行われたのが、19日午前の閣議後の記者会見においてです。一方、FRBが公定歩合の引き上げを発表したのは、現地時間で18日の午後4時半で、日本では早朝のニュースで既に報じられていましたから、大臣にも情報が入っていて当然です。

 それにしては‥

 

 このコメント、事務方の用意したものでしょうか。それともご自分の‥。

 決して事務方が用意したものとは思えません。事務方が用意したものであれば、面白みはなくても、突っ込みを入れられるようなことないでしょう。

 別に、事務方が用意したとおりに言う必要はないのですが、もう少し聞いていている人が納得するがようなコメントができなかったのでしょうか。

 円安になっていて、我が国経済にマイナスになっているとは思わないなんて、円安は常にウエルカムといわんばかり。ちょっと違うのではないでしょうか。もし、円安をもたらす措置がウェルカ
ムというのであるならば、金利の引き上げをどんどんやってもらった方がいいということにもなるのですが‥

 そして、公定歩合の引き上げが行われたのは、アメリカでは物価の上昇が続いているし‥、なんて。

 どうしてこんなコメントしかできなかったのでしょうか。それは、先ず第一に、米国がこんな深刻な経済状況にあるなかで、公定歩合の引き上げを行うことなど予想だにしていなかったからでしょう。

 日本の場合には、日本銀行に圧力をかけ、さらに金融を緩和させようとしているのに‥、と。

 ここでは、出口戦略の適否を述べれば、格好がよかったと思うのですが、では、FRB自身は、今回の公定歩合の利上げをどう説明したのでしょうか?

 連銀の融資制度の正常化の一環、つまり異例の措置を終了させること、さらに言えば出口戦略の一環であり、決して経済見通しを変更させるものでもなければ、金融政策の転換でもない、と。

 FRBは、言う訳です。公定歩合が引き上げられても、家計や企業の金利負担が増加するわけではない、と。そして、それについては、外部の者も、そのとおりだというわけです。何故なら、公定歩合融資が、銀行の融資資金の原資になっていることはないと考えていいから、と。

 で、このFRBの考え方を駄目押しするようにダドリーNY連銀の総裁も言うわけです。

 "We made a very small technical change" (by raising the discount rate).

「(公定歩合の引き上げは)技術的な変更をしたに過ぎないのだ」と。

 "The action yesterday was really an action aboutthe improvement in banks"

 「昨日の措置は、銀行の状況が改善したことによるものだ」

 しかし、ダドリー総裁は次のようにも言っています。

 "There is just no inflation pressure in the U.S., so our focus has to be on growth and jobs,"

 「米国においては、インフレ圧力は全くかかっていない。だから焦点は、経済成長と雇用ということになるのだ」


 あれれ、我が国の大臣の認識と違うことが述べられているようです。アメリカは、今インフレ圧力などかかっていない、と。

 そして、金曜日に発表になった1月の消費者物価指数(コア指数)は、0.1%の低下になっていたのだ、とか。


 まあ、それはそれとして‥

 今回の公定歩合の引き上げを、どのように解釈すべきか? 金融政策の変更を意味するものではないのか?

 FRBは、金融政策の変更を意味するものではない、と言います。でも、それは、解釈によりけりではないのでしょうか。例えば、今のゼロ金利政策は極めて異常な措置であると考え、仮に政策金利を1%程度まで引き上げても、それは金利の引き上げというよりも正常化の一環であると主張するならば、金利が1%を超えるまでは、何ら金融を引き締めたことにはならないからです。

 現に、過去、それまで1%の水準にあった政策金利を引き上げ始めたときにも、決して金融を引き締めるものではないのだ、と言っていたのです。そうしたことも考えるのであれば、今回の公定歩合の引き上げは、今後金利の引き上げが始まる予兆であると理解した方がよさそうです。

 バーナンキ議長の議長再任に当たっては先日、大騒ぎをしたばかりです。バーナンキ氏には、バブルを発生させた責任があるのではないか、と。そのこともあって、バブルの再発を恐れたFRBが、バブルの再発を防ぐために出口戦略の重要性を改めて認識し直しているということではないでしょうか。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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