小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

米国の実質GDPが5.7%増加

 米国の2009年10-12月期の実質GDPが発表になりました。

 何と5.7%も成長しているのですね。オバマ大統領の一般教書演説のなかで何度も何度もjob とかemployment という言葉を聞くと、そしてまた、アメリカの失業率が10%もあると聞くと、アメリカ経済の置かれた状況が如何に酷いものかと勝手に想像してしまうのですが‥でも、10-12月期の実質成長率は5.7%もある、と。

 一方で日本はといえば、失業率は5.1%とアメリカの半分程度の水準にとどまっているのですが、どうもぱっとしない、と。果たして、米国と日本を比べた場合、どちらがより深刻な状況にあると考えるべきなのでしょうか?

 

 どう思います?
 
 私の感想から言えば、アメリカは失業率は高いが、不況の深刻さはそれほどでもないか、というものです。つまり痛手は日本の方が深い。しかし、アメリカの方は簡単に首を切りやすいので失業率が高い、と。


 では、その根拠をお示ししましょう。

 先ずは日本の実質GDPの推移から。

     実質GDP         伸び率
     (季節調整済み、年換算) (前期比年率換算)
2006/01-03  543 兆円         0.8%   
2006/04-06  548 兆円        3.3%
2006/07-09  550 兆円       1.8%
2006/10-12 553 兆円         2.2%
2007/01-03  562 兆円        6.8%
2007/04-06  560 兆円        -1.6%
2007/07-09  560 兆円        0.1%
2007/10-12  562 兆円       1.5%
2008/01-03  570 兆円       5.6%
2008/04-06  558 兆円       -8.1%
2008/07-09  552 兆円        -4.0%
2008/10-12  538 兆円        -10.2%
2009/01-03  521 兆円        -11.9%
2009/04-06  524 兆円          2.7%
2009/07-09  526 兆円         1.3%
2009/10-12        


 次は、米国も実質GDPの推移です。

     実質GDP         伸び率
     (季節調整済み、年換算) (前期比年率換算)
2006/01-03  12.9 兆ドル        5.4%   
2006/04-06  13.0 兆ドル         1.4%
2006/07-09  13.0 兆ドル       0.1%
2006/10-12 13.1 兆ドル        3.0%
2007/01-03  13.1 兆ドル       1.2%
2007/04-06  13.2 兆ドル      3.2%
2007/07-09  13.3 兆ドル        3.6%
2007/10-12  13.4 兆ドル       2.1%
2008/01-03  13.4 兆ドル     -0.7%
2008/04-06  13.4 兆ドル      1.5%
2008/07-09  13.3 兆ドル      -2.7%
2008/10-12  13.1 兆ドル     -5.4%
2009/01-03  12.9 兆ドル     -6.4%
2009/04-06  12.9 兆ドル      -0.7%
2009/07-09  13.0 兆ドル      2.2%
2009/10-12  13.2 兆ドル      5.7%


さあ、如何でしょうか。

 日本も米国も、今回の経済危機で実質GDPが前期比でマイナスに転じたのは、どちらも4四半期連続で同じなのですが、そのマイナス幅については、日本のの方が遥かに大きいということです。そして、実質GDPの直近の実額をピーク時と比べたときの落ち込み幅も、日本の方が遥かに大きいのです。

<日本>
  570兆円 → 521兆円 → 526兆円 ということで、日本は、ピーク時と比べ最大9%ほど下落した後、現在もなお8%ほどピーク時を下回っている訳です。

<米国>
  13.4兆ドル → 12.9兆ドル → 13.2兆ドル ということで、米国は、ピーク時と比べ最大4%ほど下落した後、現在は2%ほどピーク時を下回っているにすぎないのです。

 つまり、生産水準に注目すれば、米国の場合には、もうピーク時とそれほど違わないほどの水準まで回復している、と。一方、日本の生産水準は、まだまだ相当に低いままである、と。

 そうすると別の疑問が浮かんできます。米国の経済は、それだけ被害が小さく、そして回復も進んでいながら、何故失業率は、日本に比べて格段に高いのか、と。

 この点、米国において失業者が著しく増加した業種としては、建設業や製造業が挙げられています。住宅バブルがはじけたわけですから、建設業などが特に影響が大きかったことは容易に理解できるところです。

 では、今後の米国の景気見通しはどうなのか?

 私は、意外に明るいのではないか、と予想します。

 何故か?

 それは、ここにきて企業の設備投資や住宅投資が回復してきているからです。


  民間設備投資        住宅投資
2008/10-12 1兆4961億ドル-19.5%   4150億ドル -23.2%
2009/01-03 1兆3212億ドル-39.2%   3679億ドル -38.2%
2009/04-06 1兆2884億ドル -9.6%   3444億ドル -23.3%
2009/07-09 1兆2690億ドル -5.9%   3596億ドル  18.9%
2009/10-12 1兆2781億ドル 2.9%   3646億ドル    5.7%

 
 設備投資と住宅投資が底を打ったことが窺えるでしょう?

 こうしたことに加え、近い将来人民元の切り上げが再開され、そして、輸出重視の政府の方針に従って、ドル安誘導のための超低金利政策が継続されるのであれば、インフレの兆候が現れない限り、そして急激なドル安が起こらない限り、米国経済は着実に回復を続けるのではないでしょうか。

 そうなれば、我が国経済へも好影響をもたらすことでしょう。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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