小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

バーナンキ議長が強いドルを示唆?

 次のようなヘッドラインが並んでいます。

 FRB議長「金融政策が強いドルに寄与」 異例の相場言及

 バーナンキFRB議長「ドルの変動を監視」 急激なドル安をけん制

 FRB議長:ドル安をけん制 相場言及は異例


 FRBのバーナンキ議長が、強いドルが望ましいなんて発言したということでしょうか。そうなると、オバマ大統領の輸出重視への転換という考え方と相入れないとも思うのですが‥

 海外のニュースもみてみましょう。

 Bernanke: Fed will keep eye on sliding dollar  

 Bernanke reassures markets on dollar

 海外のメディアですから、FRBとは言わずにFedと言っていますね。日本の新聞ならFRBと書くところでしょうが。いずれにしても、タイトルだけ見ると、日本と同じような雰囲気でバーナンキ議長の発言を伝えているようにも思えます。


 では、実際に発言した内容をチェックしてみましょう。
 

The foreign exchange value of the dollar has moved over a wide range during the past year or so. When financial stresses were most pronounced, a flight to the deepest and most liquid capital markets resulted in a marked increase in the dollar. More recently, as financial market functioning has improved and global economic activity has stabilized, these safe haven flows have abated, and the dollar has accordingly retraced its gains.

「ドルの交換価値は、過去1年程度の間に広いレンジで変動した。金融不安が顕著なときには、資本は最も懐が深い市場に逃避し、その結果が著しいドルの上昇となった。最近では、金融市場の機能が回復し、そして世界経済も落ち着いてきているので、このセイフへーブンへの資金の流れが減少しており、それにつれてこれまでの上昇の道のりを逆戻りしている」


 このセンテンスは事実を述べただけであり、市場関係者の多くは異存がないところででしょう。、

 The Federal Reserve will continue to monitor these developments closely. We are attentive to the implications of changes in the value of the dollar and will continue to formulate policy to guard against risks to our dual mandate to foster both maximum
employment and price stability.

「連銀は、こうした動きを注意深く監視続ける。我々は、ドルの価値の変化の意味合いについて注意し、雇用の最大化と物価の安定を促進するという二つの使命に対するリスクから守るための政策を策定し続ける」

 ここが問題の発言の箇所ですね。確かにモニターし続けると言っています。

Our commitment to our dual objectives, together with the underlying strengths of the U.S. economy, will help ensure that the dollar is strong and a source of global financial stability.

「我々の二つの使命に対するコミットメントが、米国経済の根本的な強さとも相まって、ドルを強くし、そして、ドルが世界の金融の安定の源になることを確かなものにすることの助けとなるであろう」

 このセンテンスにも報道機関は注目したということですね。確かにドルを強くすることを確かなものにする‥、というような表現が出てきます。

 では、この文章の意味をよく考えてみましょう。

 連銀が、二つの使命、つまり、雇用の最大化と物価の安定のために力を注ぐことが、強いドルを維持することの助けになろう、というのですが‥、何故、そうなるのか?

 雇用の最大化がもし実現できれば、それは米国経済が再び勢いよく成長するということでしょうから、そうなると確かにドルは強くなるでしょう。これは異存ありません。また、物価の安定を実現するということは、インフレを避けるために必要であれば、金融を引き締めるということであり、そうなると金利が上昇し、そしてそれによってドルが買われるから、ドルは強くなるでしょう。これも異存はありません。でも、そんなことは、当たり前であって、特段目新しい話ではないのです。

 それによく考えてみたら、連銀が強いドルが望ましいのだ、とまでは言っていないのです。ドルの価値が変動することがあれば、なぜそのような変動を示したのか、その意味合いを考えていきたい、というにとどまっているのです。

 ただ、どうしても強いドルという言葉を、バーナンキ議長としては使いたかった。

 何故か?

 それは、今後もドルがどんどん弱くなるようであれば、資本の逃避を惹起し、米経済が大混乱を起こしかねないからです。

 徐々にドルの価値が下がるのは容認できるが、急速にドルの価値が落ちるのはどうしても避けなければいけない、と。しかし、その一方で、まだまだ暫くは、ゼロ金利政策を続けざるを得ない訳です。何故ならば、景気回復の足取りが遅く、雇用状況は、まだまだ悪化すると見られているからです。

 最近おなじみになった an extended period という表現があります。

 「長い期間」とか、「まだまだ当分は」というような意味合いで使われているのですが、バーナンキ議長は、ゼロ金利政策が an extended period 続くと言っているのです。


The Federal Open Market Committee continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.

「FOMCは、現下の経済情勢は、資源稼働率の低さ、物価が落ち着いていること、そして、インフレ予想が安定していることを含め、フェデラルファンズレートを長期間異例の低さに保つことを保証しそうであると、引き続き予想する」


 バーナンキ議長としては、まだまだ当分の間はゼロ金利政策を採用したいが、ただ、そのことを表明するだけではドルの低下を招いてしまい、そうなると資本の逃避が懸念され、金利の引き上げをせざるを得ない事態になる可能性があるので、そうならないために敢えて強いドルということを言っているだけなのです。

 結論としては、

 バーナンキ議長は、強いドルが望ましいとは言っていない。ドルの急落を回避したいだけのことである。

 以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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