小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!

斎藤次郎氏が日本郵政の社長に

 私、斎藤次郎氏が日本郵政の次期社長になると聞いて、びっくりしゃっくり!

 多くの方が、サプライズ! と思ったに違いありません。良いとか悪いとかを跳び越えて、正直驚きました。

 まあ、テレビなどは、斎藤次郎氏がかつて大蔵次官を務め、小沢一郎氏とともに国民福祉税構想をぶち上げた張本人だ、と回顧していますが‥。

 でも、どうして斉藤氏が? というのが皆の思いでしょう。

 

 経済界の人々が次期社長の就任打診を断ったから?

 それもあるでしょう。しかし、結局、一郎・次郎コンビを復活させたかっただけのことではないでしょうか。

 10年に一度の次官と言われた斎藤氏は、優秀であったが故に通常は1年にしか務めない次官のポストを2年間弱も務めたわけですが、国民福祉税構想が失敗に終わったのをきっかけに、その後は野中氏などから睨まれ、次官経験者に相応しいようなポストには天下ることができず、謂わば不遇をかこつてきた訳です。

 しかし、この夏の衆院選で小沢一郎氏が率いる民主党が勝ったものですから、もう怖いものはない状態になったのです。

 「でんすけさんにも、つらい思いをさせてしまったな」、な~んて。

 (注)でんすけというのは、斎藤氏の愛称です。マージャンで上がるときに、「デーン」と言ってい    たとか。


 要するに、亀井氏が小沢一郎氏に対しゴマを擦ったというこではないでしょうか。

 若い人たちは知らないかも知れませんが、小沢一郎氏と斎藤次郎氏のコンビは昔からあったわけです。私が、それを感じたのは、湾岸戦争が始まり、日本が90億ドルの支援を行ったり、或いは、ゴルバチョフ大統領が訪日した際です。

 それまでの大蔵省は、総理になる前から、竹下氏を政界のキーパーソンと見定め、竹下氏を言わば抱き込んできたわけですが、斎藤氏は官房長の時代に、小沢一郎を次のキーパソンと見定め、小沢一郎氏にアプローチをしたということでしょう。

 この斎藤次郎氏の4年先輩に当たる藤井裕久財務大臣は、官僚に対し、官僚は分をわきまえろと言いますが、この10年に一度の逸材は、分をわきまえることよりも政治をコントロールすることに全精力を注いだということでしょうか。


 ただ、そうした経緯は経緯として、民主党の支持者の多くは、「脱官僚はどうしたのだ?」と思っているはずです。

 確かに、もう14年も前の話かもしれません。

 しかし、いくら野に下っていたとはいえ、東京金融取引所は役所の監督対象の機関であり、その意味ではいくら次官経験者にしては相応しくないポストとはいっても、やっぱり天下りでしょう。その意味では、鳩山政権に対して失望感さえ禁じ得ません。

 ただ、東京金融取引所の関係者の意見としては、斎藤氏のお陰で東京金融取引所の経営が再建できたのだとか。それまでの理事長は、典型的な天下りだったようですが、斎藤氏は株式会社に移行させ、経営を再建させた、と。

 そんな話を聞くと‥、国民福祉税構想はとんでもない話だったが、やっぱり能力がある人なのか、なんて思ってしまう訳です。

 しかし、いくら能力があるとはいえ、亀井氏が斎藤社長を担ぎ出すのは、どうも納得がいきません。それは、東京金融取引所のやっている仕事を考えたら分かります。

 亀井氏は、市場原理主義を激しく批判します。ハゲタカどもが、と。亀井氏が所属する国民新党は、昨年10月、「緊急金融対策について」と題して、次のようなことを提案していました。

(1)時価会計の無期限停止
(2)自己資本比率の撤廃
(3)ペイオフ制度の提供停止
(4)公的資金による資本注入
(5)大阪証券取引所における「日経225先物取引」の廃止

 これらの提案は、どれも問題を孕んでいるのですが、本日は特に(5)に注目して下さい。国民新党は、株式の先物取引を禁止するなんて言っているのです。何故そんなことをいうのかといえば、日経225先物取引は、投機マネーとして現下の株の乱高下の一因になっているから、なのだとか。

 しかし、そんなことをいうのであれば、原油の先物取引にしても、穀物の先物取引にしても、皆止めてしまえということになるのでしょうか。投機に走る姿があまりみっともいいものではないにしても、それを政府が禁止することがいいことなのでしょうか。

 いずれにしても、国民新党は、そうした先物取引はハゲタカどもが金儲けのためにやっているものの象徴のように思っている訳です。では、斎藤氏が社長を務める会社は、何をやっているのでしょうか?

 ユーロ円3カ月金利先物

 ユーロ円3カ月金利先物オプション

 無担保コールO/N金利先物

 GCレポS/N金利先物

 取引所為替証拠金取引

 
 最後の、取引所為替証拠金取引とは、くりっく365とも呼ばれるFX取引です。国民新党は、日経225先物取引は禁止しつつ、こうした先物取引は認めるというのでしょうか。

 それに、斎藤氏が東京金融取引所を再建させたというのは、会員組織であったものを株式会社化したことによってですから、国民新党の郵政の民営化にストップをかけようとする動きと逆行する気がしてならないのですが‥。

 そんなこと、老獪な政治家にとっては、どうでもいいことなのでしょうか?

 新しい酒は、新しい革袋にと言いますが、73歳の斎藤氏は新しい酒ではなく、ビンテージものと呼ぶべきではないでしょうか。

以上

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02月04日更新

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小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

小笠原誠治(おがさわら・せいじ)

1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。
大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、
中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。
以降、経済コラムニストとして活躍。
メールマガジン「経済ニュースゼミ」(無料版・有料版)を配信中。
著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、
ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、
経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)がある。
企業・団体などを対象に、経済の状況を分かりやすく解説する講演も引き受ける。

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