第140回 消費税の既成事実化を図る財務省(2/3)
とはいえ、日本の大手マスコミ(特に新聞)の紙面に、上記のような議論が乗ることはない。それどころか、大手新聞は財務省の「手下」と化し、消費税増税を「既成事実化」しようと協力しているのである。
例えば、2011年11月3日。カンヌでのG20サミットに出席した野田総理大臣は初日の討議において、
「ヨーロッパの状況を見るまでもなく、健全な経済成長を実現するためには、財政健全化は不可欠だ。日本は、2010年代半ばまでに消費税率を段階的に10%まで引き上げる方針を定めた、社会保障と税の一体改革案を具体化し、これを実現するための法案を今年度内に提出する」
と述べ、将来的な消費税率引き上げを国際会議の場で表明した。それを大手新聞が、特に何の疑問も抱かず、そのまま紙面で「消費税増税、国際公約に!」と報じる。
そもそも、野田首相の「健全な経済成長を実現するために、財政健全化が不可欠」という発想自体が意味不明である。逆に、財政健全化のためには健全な経済成長が不可欠、というのであれば理解できるのだが。
それにしても、世界最大の対外純資産国で、しかも極度のデフレに苦しんでいる日本国の首相が、国際会議の場において、
「消費税を段階的に10%まで引き上げます。税と社会保障の一体改革案を具体化し、法案を提出します」
などと、完全な内政問題を高らかに謳い上げ、意気揚々と、
「これで消費税増税は、国際公約になった」
などとやるわけだから、情けないの極みだ。現在の世界主要国は、ユーロ危機の対応で苦心惨憺を重ねている。日本が、
「世界最大の対外純資産国として、IMF経由で2000億ドル(例えば)の資金を供給する」
と宣言すれば、彼ら(主要国の首脳)の需要も満たし、拍手喝采を浴びるだろう。それが「我が国は増税します」宣言なわけだから、主要国の首脳からしてみれば、
「勝手にしろよ」
という感想以外は湧き起ってこなかっただろう。
さらに、2012年1月28日。野田首相はダボス会議にテレビ会議方式で参加し、またまた消費税増税を柱とする、税と社会保障の一体改革について説明し、
「先送りしない政治を実践する。持続可能な社会保障制度を構築し、財政規律を維持するため、消費税引き上げを含む改革を必ずや実現する」
と強調した。
何というか、要するに国内では反対論が強すぎ、それに対抗するために、
「消費税は国際公約です。だから、やらなければならないのです」
と、既成事実化を図っているのだろうが、手法が姑息極まりない。TPPの際に、USTRのカトラー代表補に、
「少しガイアツをかけて、TPP参加が日本にとってよいことであると伝えてもらえないか」
と頼んだ「元日本政府関係者」たちと、思考パターンがそっくりだ。
困ったことに、現在の日本は大手新聞が、この財務省の「消費税増税の既成事実化」に全面的に協力している。例えば、年金債だ。
野田政権は、基礎年金の国庫負担分のうち、不足する2.5兆円について「年金債」を発行し、将来の消費税増税分で償還する方針を示している。
「え! 消費税の増税って、もう決まっているの?」
と思った読者が多いだろうが、もちろん決まっていない。
というよりも、年金の財源が不足しているならば、普通に赤字国債を発行すれば済む話だ。そもそも、上記の「年金債」にしても、名前が違うだけで、中身は赤字国債そのものである。
赤字国債を発行し、年金に充当すれば済む話を、なぜか「年金債」という新語を創設し、消費税増税分で償還するという。意味不明だ。
要するに、
「年金債の償還という話にしておけば、消費税増税に対する反対が減るのでは」
という、財務省の浅知恵なのだろうが、それにしても未だに閣議決定すらされていない消費税増税分で償還するなど、やり方が無茶苦茶だ。
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