三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第66回 アメリカ経済の日本化(3/3)

(2/3の続き)

 現在のアメリカであるが、貯蓄預金(普通預金など)について、すでに金利を0.01%に下げた銀行が存在している。0.01%の預金金利など、日本以外では決してあり得ないと思っていたのだが、アメリカもすでにその段階に進んでいるわけだ。ちなみに、アメリカの7月における定期預金などを含む平均金利は0.99%で、10年ぶりに1%を割り込んでしまった。

 アメリカの銀行には、預金残高が一定水準を下回った場合は、手数料を徴収するところが多い。また、ATMなどからお金を引き出すと、日本同様に手数料を取られる。

 結果、銀行にお金を預けると、支払い手数料が金利収入を上回ってしまうわけである。日本人は、この手の環境に慣れているだろうが、アメリカ人は(まだ)慣れていない。結果、何事が生じているかというと、「たんす預金」の増加とのことである。
たんす預金というのは、実際に困った存在である。

 例えば、銀行の過剰貯蓄の場合は(これも困った問題だが)、政府が国債発行で借り上げ、景気対策として「支出」することで、国家経済のフローであるGDPに「戻す」ことができる。ところが、たんす預金の場合はそうはいかない。各家庭にしまいこまれた現金は、下手をすると半永久的にGDPから切り離されたままで、社会的に「無用なお金」になってしまうわけである。

 手持ちのお金を投資もせず、預金もせず、物も買わずに自宅に貯め込む。家計がなぜ、この種の行動に出るのかと言えば、もちろん「お金の価値が上がっていく」という判断に基づくものだろう。お金の価値が上がり、逆に製品やサービスの価値は下がっていく。すなわち、デフレだ。


【図66-1 アメリカの各経済主体の負債残高推移(単位:十億ドル)】
20100909_01.png
出典:FRB


 現在、アメリカの民間経済主体(家計、非金融法人企業、金融機関)が揃って負債残高を減らしつつある中、唯一、連邦政府のみが大きく負債を拡大している。無論、アメリカ政府が景気対策として財政出動を拡大したためだ。銀行の預金超過額も増加しているため、政府は低金利で国債を発行しやすい環境下にある。

 アメリカの最も重要な産業とでも言うべき「住宅投資」であるが、今年の春までは政府の大規模な支援策が功を奏し、何とか下支えができていた。その後、政府支援終了と共に、同国の住宅投資が激減してしまったのは、ご存じの通り。

 今後のアメリカは、全体的なデフレ化が進む中、政府の景気対策が効いた部分のみ下支えがなされ、終了と共に景気が落ち込む。景気が落ち込むと、政府は再び景気対策を求められ、財政赤字や政府の負債残高が積み上がっていく。財政赤字や政府の負債残高が積み上がると、巷で「財政健全化」を求める声が大きくなり、政府は手足を縛られていく。この種の「にっちもさっちもいかない」環境が続く可能性が、極めて濃厚なのである。

 まさに、アメリカ経済の日本化というわけである。

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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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