三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第65回 アイルランドと財務省(1/3)

 8月25日、アメリカの格付け機関スタンダード&プアーズは、アイルランドの長期ソブリン債(国債など)を格下げた。


『2010年8月25日 ブルームバーグ「アイルランド長期信用格付けを「AA-」に引き下げ-S&P

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、アイルランドの長期ソブリン信用格付けを「AA」から「AA-」に1段階引き下げた。経営難の銀行に対する支援コスト増大への懸念を格下げの理由に挙げた。

 S&Pは銀行システムへの公的資金注入見通しを最大500億ユーロ(約5兆3000億円)と、従来の最大350億ユーロから引き上げた。ブルームバーグのデータによると、AA-の格付けは1995年以来最低の水準。

 S&Pは24日の発表文で「銀行セクター支援のための財政コストがさらに増加したり、他の経済状況の悪化で中期的な財政目標を達成する政府の能力が低下した場合に、一段の格下げがあり得る」と説明した。(後略)』


 アイルランドは、昨今、欧州で財政危機に瀕している国々、いわゆるPIIGS諸国の一国である。同国はPIIGS諸国の中では、最も早く財政健全化路線を採ったわけであるが、その分、割を食った感じになっている。


【図65-1 アイルランドの実質GDP成長率推移(単位:%)】
20100831_01.png
出典:アイルランド中央銀行


 アイルランドは、約十年も続いた不動産バブルが「欧州で最も早く」崩壊し、09年の財政赤字対GDP比率は14.3%と、あのギリシャをすら上回る水準に至った。アイルランド政府は率先して緊縮財政を実施し、財政健全化路線を採用したわけだが、結果的に経済成長率の極端なマイナスを招いてしまったわけだ。

 ちなみに、不動産バブルが絶頂に達していた2004年から06年にかけ、アイルランド政府は「財政黒字」になっていた。

 不動産バブルが発生しているような状況下では、民間の借り入れが大幅に拡大する。すなわち、極端な好景気というわけだ。

 民間の負債が増大していく好景気の最中に、政府が負債を拡大する必要は全く無い。さらに、放っておいても勝手に税収が増えていくわけだから、政府の財政赤字は減少し、やがて黒字化するわけだ。

(2/3へ続く)


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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