三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第63回 四半期ごとに繰り返される儀式(1/3)

 財務省が、毎四半期の恒例となっている「国の借金」について発表をした。結果、例により各紙が財務省の資料をコピー&ペーストした記事を書き、大騒ぎを繰り広げるという「儀式」が展開されている。
 各紙の記事の話に入る前に、各種の基本データについて抑えておきたい。

 財務省が言う「国の借金」とは、厳密には「政府の負債」のことである。貸方に「政府の負債」がある以上、バランスシート(貸借対照表)の反対側(借方)に必ず「政府の資産」が存在する。

 また、「誰かの負債は、誰かの資産」という絶対原則がある以上、バランスシート上に必ず「政府への債権」が「誰かの資産」として計上されている。この辺りのバランスシートの原則を無視して、ことさらに「政府の負債」のみを「国の借金!」と煽り立てる財務省のやり口について、筆者が本連載の開始当初から厳しく批判してきたことについては、ご存知の通り。

 日本の各経済主体について、政府だけではなく、残りの全てをも含め、資産及び負債を統合した「国家のバランスシート」(最新版)が、図63-1になる。


【図63-1 日本の「国家のバランスシート」2010年Q1速報値(単位:兆円)】
20100817_01.png
出典:日本銀行「資金循環統計」


 ちなみに、図63-1のバランスシートにおける「資産」は金融資産のみで、不動産などの固定資産は含まれていない。参考までに資産合計は5590兆6千億円、負債合計は5322兆5千億円となっている。

 また、2010年6月時点の日本の対外資産は564.7兆円、対外負債は301.3兆円、対外純資産は263.4兆円である。対外純資産と「国家のバランスシート」の純資産は同一概念で、本来は数字が一致するが、四捨五入の関係で誤差が生じている。同時点の正しい日本の「純資産額」は263.4兆円である。


 財務省式に「政府の負債」だけを見るのではなく、日本国家の全体のバランスシートを見ると、単純な「莫大な借金だ! 返済できるはずがない! 破綻だ!」などという論調が、いかにバカげているかが理解できる。


◆バランスシート全体を見ると、日本は資産額が負債額を大きく上回り、268.1兆円の純資産となっている。すなわち、日本国家としての対外純資産が260兆円を上回っている(厳密には、前述の通り263.4兆円)ということになる。この純資産の額は、世界最大である。

◆日本政府は確かに負債額が大きいが、同時に500兆円近い資産も保有している。この481.9兆円という資産額は、アメリカ政府(地方政府含む)をも上回り、一組織としては世界最大である。(ちなみに、アメリカは連邦政府、地方政府あわせて350兆円の資産を持っている)

◆政府の負債の過半は日本国債だが、その95%が国内の投資家により購入されている。すなわち、「金融機関の資産」や「家計の資産」の項目に、日本国債が資産計上されているわけである。金融機関の資産として計上されている日本国債にしても、最終的な債権者は日本国民(もしくは日本企業)となる。銀行などの金融機関が、我々日本国民から借りた(預かった)お金の運用先として国債を購入している(=政府に貸し付けている)以上、当然である。

(2/3へ続く)


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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