三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第62回 日本の長期金利1%割れ(3/3)

(2/3の続き)

 デフレ期に緊縮財政を強行することが、どれほどの愚考か。ありとあらゆる数値データが、それを明確に示している。それにも関わらず、なぜか日本当局、特に財務省はその事実を認識しようとはしない。

 それどころか「全く状況が違う」ギリシャを引き合いに出し、日本破綻論を懸命に叫び続けている。目的はもちろん、消費税の増税であるわけだが、破綻したギリシャの消費税は21%であることには、みな口をつぐむ。

 そもそもギリシャ政府の負債増大や破綻は、同国の過剰消費の結果であり、日本の状況とは真逆なのである。GDPと国際収支の関係上、経常収支の赤字とは「貯蓄不足」、経常収支の黒字とは「貯蓄過多」を意味するのだ。

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 GDP=個人消費+政府最終消費支出+民間投資+公共投資
                        +純輸出(=財サービスの輸出-輸入)
 GNI=個人消費+政府最終消費支出+民間投資+公共投資+経常収支
 GNI-個人消費-政府最終消費支出-民間投資-公共投資=経常収支
 GNI-消費-投資=経常収支
 貯蓄-投資=経常収支 (※貯蓄=GNI-消費)

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 上記の通り、経常収支黒字国は貯蓄過多もしくは投資不足、経常収支赤字国は貯蓄不足もしくは投資過多を意味していることになる。

 ギリシャの場合は、ユーロ加盟国であり、経常収支の赤字が積み重なっても通貨が暴落することがなかった。結果、為替レートがスタビライザー(安定化装置)として働くこともなく、経常収支の赤字が積み上がっていき、その期間、ギリシャ国民は分不相応な消費を楽しんだわけある。

 とはいえ、国内が貯蓄不足である以上、ギリシャ政府は財源を海外(主に独仏)に求める以外に方法はなかった。しかも、自国では金利調整ができない「ユーロ」という通貨建てで、負債を積み重ねたのである。

 さらに言えば、ギリシャ政府が海外からユーロ建てでお金を借り、何に使っていたのかといえば、国内の公務員手当や年金などの「所得移転系」であった。要するに、政府が外国から外貨建て(共通通貨建て)でお金を借り、特定の国民に手当てとしてバラまいていたわけだ。結果、当たり前のように破綻した。


 言うまでもない気がするが、日本はギリシャとまさに真逆の環境下にある。別に「日本は問題ない!」などと極論をいう気はないのだが、少なくとも対処法がギリシャと同じ(緊縮財政)であるはずがない。ギリシャと日本を同一視するなど、極度の肥満に悩む人と、栄養失調の人について、「同じ処方箋を!」と叫んでいるようなものである。

 長期金利が1%という大台を割り込んだ今こそ、「日本経済の真の問題」に対する正しい処方箋を投じるべきだ。そして、その処方箋は決してギリシャとは同じにはならない。すなわち、緊縮財政ではありえないと言うことだ。


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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