第62回 日本の長期金利1%割れ(2/3)
正直、筆者は現在の日本経済について、政府の財政云々を気にしたことは一度もない。だが、日本デフレが悪化し、98年あるいは02年のように国家経済のフロー(GDP)が大きく落ち込んでしまう可能性、こちらの方は真剣に恐れている。
現に、日本の長期金利は前回のデフレ悪化時(02年)同様に、1%という大台を割り込んでしまった。それだけ民間の資金需要がないというわけで、日本に98年や02年の状況が再来するのではないかと想像すると、心底からゾッとする。
03年以来の日本の長期金利1%割れについて、国内の各メディアはどのように捉えているのだろうか。
多くの新聞が、長期金利低迷について「米景気懸念で」という表現を用い、
「日本の『国の借金』問題とは無関係に、外部要因で日本国債が変われ、長期金利が下がっている」
と印象付けようとしているかに見える。
とはいえ、さすがに最近の各新聞も、
「なぜ、日本の国債が買われているのか?」
について、正しい説明を掲載するようになった。一例として、8月5日の毎日新聞の記事を取り上げよう。
『長期金利:1%割れ 米デフレ懸念が拍車 円高・株安嫌い、国債に資金集中
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100805ddm008020069000c.html
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが4日、7年ぶりに1・0%を割り込んだ。景気減速を受けて、米国でデフレ懸念が台頭し、連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和策を拡大するとの観測が浮上。世界的に金利低下圧力が高まったためだ。FRBの追加緩和観測は日米金利差縮小の思惑も生み、東京外為市場では円高が進行。円高を嫌気し株離れを起こした投資資金は債券市場に流入し、国債価格上昇(長期金利低下)に拍車をかけている。(中略)
国債の主な買い手は、「カネ余り」に悩む国内の銀行勢。多くの企業が業績改善で手持ち資金を増やしたにもかかわらず、世界経済の先行き不透明感から設備投資などへの慎重姿勢を崩していない。銀行には預金が積み上がり、「国債を好んで買っているわけではないが、他に運用先がない」(メガバンク幹部)状況だ。(後略)』
現在の日本国内の銀行は、総じて「カネ余り」に悩んでいる。国内に過剰貯蓄が溢れているにも関わらず、企業が設備投資を増やそうとしない。結果的に、過剰貯蓄の運用に困り果てた銀行は「国債を買うしかない」状況に追い込まれているわけである。
銀行などの国内金融機関に、運用先がない過剰貯蓄が積み上がる。結果、長期金利が下がっていくが、企業は借入や投資を拡大しようとしない。
なぜだろうか。もちろん、デフレだからである。デフレが深刻化する以上、企業は投資を拡大するよりも、借入金を返済する方が資金運用上も有利である。企業は利益を出したとしても、融資を拡大するどころか「バランスシートのお掃除」に専念する。すなわち、リチャード・クー氏の言う「バランスシート不況」が悪化しているからこそ、長期金利が下がっているわけである。
まさしく、これこそが日本経済の「真の問題」なのだ。長期金利が1%を切るような状況であるにも関わらず、民間企業が融資を拡大しようとしない。それほどまでに、デフレ不況は深刻なのだ。
それにも関わらず、日本政府は財務省の意向そのままに、政府支出削減や増税路線を邁進している。GDPが「個人消費」「民間投資」「政府支出」「純輸出」で構成されている以上、財務省式の緊縮財政路線は国家経済のフローを縮小させる。結果的に景気は悪化し、政府の税収は減り、財政は益々深刻化する。
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