第62回 日本の長期金利1%割れ(1/3)
日本の長期金利が、ついに七年ぶりに1%を割り込んでしまった。
現在の日本政府は、文句なしで世界で最も資金調達コストが低い組織ということになる。
予め書いておくが、日本の長期金利が世界最低を維持し続けていることは、別に自慢できる話ではない。むしろこの「超低金利」こそが、日本経済の真の問題そのものであると言っても過言ではないのである。
無論、個人や企業にとっては、超低金利でお金を借りることができることは嬉しい現象かも知れない。この調子では、住宅ローンの金利もこれまで以上に低い水準で推移することになるだろう。住宅購入を検討している人にとっては、超低金利は素晴らしいことかも知れない。
しかし、この現象は裏を返せば、これほどまで超低金利であっても「日本国内の民間経済主体がお金を借りない」ということを意味しているわけだ。長期金利が世界最低水準で推移しても、民間の資金需要が増えない。結果、銀行は国債を買い込むしかなく、長期金利が益々下がる。
要するに、デフレ不況が悪化しているわけである。
【図62-1 日本の長期金利の推移 1998年-2010年5月】

出典:日本銀行「債券市場利回等」
ちなみに、本連載の読者に改めて説明する必要はないと思うが、日本の長期金利が下がっているのは、国内の過剰貯蓄がますます行き場をなくしているためである。銀行などに貯まりに貯まった「我々(企業含む)の資産」の借り手がつかず、運用難に拍車がかかっているわけだ。銀行の場合は預貯金、生損保の場合は保険料などの貸出先(=運用先)が見当たらず、機関投資家が渋々国債を買い続けた結果、長期金利がここまで下がってしまったのである。
民間の経済主体が誰もお金を借りない。イコール、誰も支出しない。すなわち、不景気だ。あるいは、デフレ不況の悪化である。
前回、長期金利が1%を割ったのは、2002年から03年にかけてのことだ。当時は、小泉政権発足直後に始まった緊縮財政(国債発行枠設定、恒久減税の廃止、公共投資の政策的な削減などなど)により、日本経済がマイナス成長に突っ込んだ時期である。
日本の場合、貿易収支が少々赤字化しようとも、所得収支の黒字幅が大きすぎ、経常収支の黒字は維持される。ISバランス論から、経常収支黒字国=貯蓄過多国となる(後述)。
さらにデフレの影響で、国内の貯蓄(使われないお金)が増大し続ける以上、国債に対するニーズは増え続けざるを得ないわけだ。すなわち、国債の暴落など起こりえない。それどころか、デフレで実質金利が上がり、円高も進展する。
結果、外国人までもが安全資産として日本国債を購入する。
日本政府が破綻する、あるいは日本経済が破綻するなど、意味不明な話ではなく、「日本のデフレが深刻化する、あるいは深刻化しそう」だからこそ、国債が買われる。結果、国債価格が高騰し、金利が低下する。
これが現実の世界なのだ。
今、心配すべきことは、
「日本は財政破綻する!」
などという世迷言ではなく、2002年や2003年のように、
「デフレ不況が、より悪化してしまうのではないか」
という問題の方である。正直、財政破綻原理主義者たちが、どれほど、
「日本は財政破綻する!」
と、叫んだところで、日本政府の財政はびくともしない。それは日本政府に信用があるとか、財政再建路線が支持されるとか、そういう定性的な話ではなく、単純に日本国内に「国債を買うしかない」マネーが溢れ返っているためだ。
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