三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第61回 中国の不動産バブル崩壊(2/3)

(1/3の続き)

 そもそも今回の中国の不動産バブルは、中国共産党も全く予期していなかったものだった。サブプライム危機からリーマンショックにかけた世界的な経済危機において、中国共産党が採った対策が、不動産バブル再燃という副産物を生み出してしまったのである。

 06年末に勃発したサブプライム危機から、08年9月のリーマンショックを経た世界経済の危機において、中国は成長率激減の危機に直面した。何しろ、中国は「保八(成長率8%を保て!)」を至上命題にするほど、GDP成長率に固執している。経済成長の大幅な減速は、中国共産党としては何としても回避しなければならなかったのである。

 世界的な金融危機と需要縮小を受け、中国共産党政府は以下の三つの対策を実施し、経済成長率の低下を食い止めようとした。


 ◆08年7月に人民元を「管理フロート制」から「ドル固定相場制」に戻す
 ◆総額50兆円を超える、大規模な財政出動を実施する
 ◆銀行に対し「融資指示」を実施。とにかく、お金を貸せるだけ貸しつけさせるという、
  極端な金融政策を採った


 上記対策のうち、「ドル固定相場制への復帰」は、確かに中国の輸出維持に貢献した。何しろ、09年に世界の経常収支黒字(=経常収支赤字)の規模が激減したにも関わらず、中国は「少し減った」程度で済ますことができたのである。


【図61-2 経常収支黒字国・赤字国09年ベスト4の推移(単位:十億ドル】】
20100804_02.png
出典:IMF


 図61-2の通り、08年から翌年にかけ、各国の経常収支の黒字・赤字幅は激減した。だが、経常収支黒字国としては唯一、中国だけが黒字幅を「多少減った」レベルで済ましている。

 さらに、中国政府が実施した大規模な財政出動についても、確かに同国の内需下支えに貢献した。共産党政府としても、この財政出動については適正であったと評価しているようである。

 問題なのは、三つ目最後の中国当局による「銀行への融資指示」である。

 そもそも、世界的に実需が縮小している時期に、企業の設備投資意欲が高まるわけがない。すなわち、企業は「お金を借りたくない」環境下に置かれているわけだ。

 この状況が行き着くところまで行き着いたのが、現在の日本であるが、別に中国の企業にしても、環境的には似たようなものだ。そもそも需要が十分で、企業の設備投資意欲が高まっているのであれば、中国政府が何もしなくても銀行融資は拡大したはずである。
結局のところ、リーマンショック以降の中国企業も、世界の多くの企業と同様に投資意欲に欠けていたわけである。

 それにも関わらず、中国共産党の指示で、銀行からジャブジャブと中国企業にお金が流れていった。その総額は、09年の一年間で、実に130兆円もの巨額に達したのである。

 結果、何が起きたのか。

 銀行から流れ出したお金の半分近くは設備投資には向かわず、株式そして不動産に怒涛のように流れていった。すなわち、バブル経済の再燃である。

(3/3へ続く)


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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