三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第61回 中国の不動産バブル崩壊(1/3)

 中国の不動産バブル崩壊が取り沙汰されている。


6月中国不動産価格、前月比では09年2月以来初の下落

 中国国家統計局は12日、6月の主要70都市の不動産価格は前月比0.1%下落したと発表した。前月比での下落は2009年2月以来初めて。
 前年比では11.4%の上昇。5月の上昇は12.4%だった。
 上半期の不動産投資は前年比38.1%増加した。』


 6月の中国不動産価格(主要70都市)は、前月比で0.1%のマイナスに終わった。不動産価格がピークアウトしたことを受け、さまざまなアナリストが中国の不動産バブルに言及するようになった。

 6月16日。野村ホールディングスのチーフエコノミストである孫明春氏は、現在の中国不動産市場の「バブル」が「極めてすぐに」崩壊すると述べた。中国の不動産価格は09年に約22%上昇したが、今後は平均で10~20%下落する恐れがあるという。

 7月14日。スペインのBBVA(バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア)のチーフエコノミスト(アジア地域担当)スティーブン・シュワルツ氏は、中国の不動産市場見通しについて、
「短期的には、価格上昇が急激だったために下押し圧力が働くだろう」
 と、述べた。

 何しろ、現在の中国の住宅価格は、中国人民の所得と比べ、極端な水準に上昇している。中国の所得に対する住宅価格の比率は、大都市圏では国際基準の2倍から3倍に達しているのだ。要するに、中国の不動産セクターは、住民が「住む」ために売買されているわけではなく、完全に投機商品と化してしまっているわけである。

 7月26日には、HSBCホールディングスが中国の住宅価格について、向こう半年から1年で最大15%下落する可能性があると指摘した。理由は、住宅の供給過剰とのことである。要するに、作りすぎだ。

 さらに、7月30日。全米経済研究所(NBER)が中国の住宅価格について、向こう1、2年間に大幅な調整に直面せざるを得ないというレポートを出した。中国の主要都市の住宅価格は、過去十年間で三倍もの水準に上昇している。しかも、この価格上昇の半分以上が、07年以降に発生しているのである。

 ある意味で、非常にわかりやすい不動産バブルではある。

 特に、北京の住宅価格の上昇は凄まじい。何しろ、北京の住宅指数は03年から10年にかけ、何と800%も上昇したのである。すなわち、七年間で住宅価格が9倍にも跳ね上がったわけだ。

 NBERのエコノミストの計算によると、中国の住宅市場への信頼が失われると、北京の不動産価格は、最大で四割も下落する可能性があるという。さらにNBERのエコノミストは、今後1、2年以内に中国の住宅価格について、
「大幅な調整が起きる確率は、半分以上と思われる。その時期を予測するのはほぼ不可能だが、上昇見通しの中で若干下げれば、十分な切っ掛けになりうる」
 と、付け加えた。


 NBERのエコノミストの言う「上昇見通しの中で若干下げる」状況が、今年6月にまさに発生した。先述の通り、主要70都市の不動産価格が、前月比0.1%下落したのである。

 中国の主要70都市における不動産価格について、前年同月比で推移を見ると、今年の5月もしくは6月にピークアウトした可能性が極めて濃厚だ。そもそも、中国当局が不動産バブルの過熱を憂慮し、今年初め以降、同国の銀行の預金準備率を三度も引き上げるなど、金融引き締めの努力を続けている。中国の不動産価格がピークアウトしたとしても、当たり前といえば当たり前なのだ。


【図61-1 中国の主要70都市不動産価格の推移(対前年同月比)】
20100803_01.png
出典:中国国家統計局

(2/3へ続く)


【Klugよりお知らせ】

当連載ブログの著者、三橋貴明氏の最新刊、
『日本のグランドデザイン』が発売中です!

そしてもう1冊、『日本の未来、ほんとは明るい! 』も発売中!

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

ページトップへ戻る