第59回 アメリカのバランスシート不況(3/3)
特に説明は不要だと思うが、原因はもちろん不動産バブル崩壊だ。不動産バブル崩壊により、同国の住宅価格は下落に転じた。結果、各家庭に(資産に比して)過剰な負債が積み上がっている事態に至り、ミクロレベルの負債減少の動きが始まったのだ。
先述の通り、日本のバブル崩壊は、民間企業の負債減少と、支出(投資)縮小という負の影響をもたらした。同様に、アメリカのバブル崩壊は、家計に負債減少と支出(消費)縮小を強いたわけである。
本稿冒頭に、アメリカの代表的な消費マインド指数であるミシガン大学消費者マインド指数(速報値)が、前月と比べて劇的に低下した事実をご紹介した。
ミシガン指数のみならず、6月のアメリカ小売売上高も、前月比でマイナスになっている。同国の消費が、力を失いつつあるのは明らかである。アメリカ商務省発表によると、同国の6月の小売売上高は、前月比で0.5%の減少に終わり、5月に続いて二ヶ月連続減となってしまった。
結果、市場がアメリカの景気低迷を予想し、長期金利が下落(米国債価格は上昇)。米国債の十年物国債金利は、3.04%という低水準に至った。今後も同様の推移を続けると、リーマンショック後のように、米国債十年物の金利が2%台に突入する可能性もある。
無論、金利低下は、民間経済の活性化の切っ掛けの一つになるかもしれない。かつてないほどに低金利で資金を調達できる以上、通常の経営者であれば、低コストの資金を借り受け、設備投資に費やし、将来的な収益向上を目指そうとするだろう。
ところが、バブル崩壊後の恐慌経済下では、この「常識」が通用しないというのは、日本人の多くがご存じの通り。本来であれば、超低金利にも関わらず投資を拡大しようとしない経営者は、企業成長の意欲を失ったと断ぜられてもおかしくはないのである。ところが、90年代以降の日本では、高収益の企業までもが借金恐怖症に陥り、バランスシートの調整に熱中した。また、切実に資金を必要としている中小企業などには、銀行側が不良債権化を恐れ、与信を厳しくしたわけだ。
結果、日本国家全体の民間負債が拡大しない時期が続き、代わりに政府の負債だけがひたすら増え続けたのである。現在のアメリカも、90年代の日本とほぼ同じ環境下に置かれている可能性が極めて濃厚なのだ。
アメリカの個人消費という「世界最大の需要項目」は、同国の家計の負債が減るどころか、「増えない」だけでも大ダメージを受ける。それにも関わらず、リーマンショック以降のアメリカの家計の負債は、毎四半期ごとに着実に残高を減らし続けているのである。
家計が借金返済に専念し、負債を拡大しない以上、アメリカの個人消費が低迷して当然だ。前述の6月小売売上高、及びミシガン指数を見る限り、2010年6月末時点においても、アメリカの家計の負債減が継続している可能性は極めて高い。
バブル崩壊を受け、民間の経済主体が超低金利にも関わらず、資金を借りず、むしろ返済に専念しようとする結果、フロー(アメリカの場合は個人消費)が減り続ける。
要するに、バランスシート不況である。
繰り返しになるが、日本のバランスシート不況の主役は民間企業だった。それに対し、アメリカの場合は家計が主役である。
家計と企業という違いはあるものの、今後のアメリカは「国債金利低迷」「名目GDP成長率低下」「失業率の高止まり」「輸出攻勢」「ゼロ金利継続」という、98年以降の日本が通った道を辿る可能性が高いと考える。
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