三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第58回 消費税の話(3/3)

(2/3の続き)

 ギリシャに絡めた「消費税10%にアップ」発言が散々に批判された結果、菅直人総理大臣は、今度は「社会保障の安定財源として、消費税アップ」などと、自民党の政策丸パクリの主張を始めた。しかも、自民党は一応、先に筆者が書いたものに類似したロジックを説明しており、
「なぜ消費税を10%に上げるのか。それを何に使うのか」
 が明確になっているのに対し(不明確なのは、『いつ』のみである)、菅直人首相の「社会保障のための消費税アップ」には、この手の説明が一切なかった。

 しかも、そもそもつい先日まで、
「財政破綻を防ぐために、消費税を10%にアップ」
 と言っていたにも関わらず、自民党の真似をして、
「社会保障の安定財源として、消費税を10%にアップ」
 では、全く筋が通らない。「財政破綻を防ぐ」と「社会保障の安定財源」では、用途が全く違うにも関わらず、なぜ税率が同一の「10%」になるのだろうか。政策が全く違うにも関わらず、必要な財源の金額が一致するはずがないわけだ。


【図58-3 消費税、所得税、法人税の推移(1997年を0とする)】 
20100715_03.png
出典:国税庁
※消費税は国税分(4%)のみ


 結局のところ、菅直人総理大臣も、そして民主党も、消費税という極めて重大な問題について、全く真面目に考えていないということは明らかだ。

 第22回参議院選挙の応援演説で、菅直人首相が青森、秋田、山形の三県を回ったことがあった。その際に、菅直人首相は「消費税の所得制限」について解説したわけだが、最初に立ち寄った青森では、
「所得が200万円以下の人には、消費税を還付(免除)します」
 と、発言した。その数時間後、秋田に移動し、今度は、
「所得が300万円以下の人には、消費税を還付します」
 と発言したのである。いつの間にか、所得制限の金額が100万円、増えてしまった。

 さらに、山形に移動した菅直人首相は、今度は、
「所得が400万円以下の人には、消費税を還付します」
 と、信じがたいことに、再度発言を翻したのである。

 消費税のような重要案件について、1日に二度も発言を大きく変えてしまう総理大臣を、日本は政治のトップとして担いでいるわけである。今日の日本は不幸であるとしか、表現のしようがない。
 
 とはいえ、自身の無責任な消費税に関する発言が災いし、第22回参議院選挙において、民主党は敗北を喫した。

 これを切っ掛けに、「正しい数値データ」に基づく消費税に関する論議、すなわち、
「いつ」
「なぜ」
「何に使うために」
「何%」
 消費税を上げるのかという、真っ当な議論が始まることを願って止まない。


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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