三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第58回 消費税の話(2/3)

(1/3の続き)

 消費税を増税すると、当然ながらGDP上の個人消費(民間最終消費支出)がダメージを受ける。消費税に限らず、家計への増税とは個人消費を冷え込ませ、GDP上の「民間最終消費支出」を縮小させる。

 逆に「財政出動」は、GDP上の政府支出を拡大する。「消費税アップで財政出動」は、GDP上の「民間最終消費支出」の部分からパイを切り分け、「政府最終消費支出」もしくは「公的固定資本形成」の箇所にくっつける作業になるわけだ。

 このように説明すると、「消費税アップで財政出動」のバカバカしさが、明確に理解できるだろう。


 さて、鳩山前首相の退陣により、急遽、新総理になった菅直人氏であるが、今度は、
「消費税は、日本がギリシャのように財政破綻しないために、10%に上げる必要がある」
 という主張を始めた。少し前までの「財政出動のための消費税アップ」は、一体どこに消えたのかと思ってしまうが、それ以上にこのロジックは失笑モノである。


【表58-2 日本とギリシャの政府負債を比較】

国名 日本 ギリシャ
債権者 94%日本国民 七割以上が外国(主に独仏)
通貨 独自通貨の日本円 共通通貨ユーロ(金融政策を放棄)
政府の支出先 バブル崩壊後のGDP崩壊を
防ぐための公共投資など
公務員手当、年金
消費税率 5% 21%
経常収支 黒字(対外純資産国) 赤字(対外純負債国)
国債金利 1.1%(世界最低) 一時は13%に達する
政府負債
対GDP比率
190%) 120%

 上記が日本とギリシャの政府負債に関する状況を比較したものだ。ここまで「前提」が違うにも関わらず、日本のマスコミに登場する経済評論家や政治家たちは、最後の行の「ギリシャ政府の借金はGDPの1.2倍。それに対して日本は1.9倍」という事実「だけ」に目をつけ、
「ギリシャは破綻した。日本の状況はギリシャより悪い。だから日本も破綻する」
 などと血迷いごとを叫んでいるわけだ。

 そもそも、ギリシャの消費税が21%である以上、財政破綻と消費税は「無関係」であるということは、誰にでも理解できるだろう。

(3/3へ続く)


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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