第43回 朝日新聞と日経新聞(3/3)
さて、朝日新聞の記事では、
「日本が財政破綻した結果、IMFに緊急支援を求める」
という「流れ」が、ストーリーの骨子になっている。この物語において、日本政府はIMFから外貨(恐らくドルなのだろうが)を支援してもらい、果たして何をするのだろうか。
何しろ、日本国債の保有者の94%が国内の投資家である。かつ、外国人が保有する(6%分の)日本国債を含め、100%近くが日本円建てなのである。
【図43-1 日本国債保有者別内訳 09年6月末時点】

出典:日本銀行
※合計額:675兆7795億円
過去に発行した国債が日本円建てである以上、日本政府が「財政破綻」時に、IMFからドルなどの外貨を用立ててもらったところで、何の役にも立たない。IMFは、日本の自国通貨(円)を発行することはできない。日本銀行に命じて「日本円」を発行できる権限を持つのは、この世に日本政府を除いては存在しないのである。
日本政府の負債の100%近くが自国通貨(日本円)建てである以上、「日本政府の財政破綻」に対し、IMFは何の手助けもできないのである。日本政府の負債の話に関連し、IMFを持ち出してきた時点で、その人物は経済の基礎の基礎すら、全く分かっていないということになる。
そもそも、どうやら冒頭の記事を書いた記者は、日本国債の保有者の94%が日本の金融機関(及び家計)である事実をすら認識していないようだ。知っていたのであれば、以下のような書き方は決してしないだろう。
『数ヶ月前から国債の引受先を決める入札が不調に終わるようになり、海外の市場関係者の間に「日本は投資先として危険」とのレポートも出回っていた。』
日本政府が円建ての国債しか発行しておらず、買い手の94%が日本国内の経済主体である以上、海外の市場関係者(具体的には、誰なのだろうか?)がどのように評価しようが、日本国債の消化に影響などあるわけがない。実際、ムーディーズにより日本国債の格付けがボツアナ並に引き下げられたときも、政府の国債発行には特に何の影響もなかった。
日本国債の消化や金利水準に影響するのは「海外の市場関係者」などという曖昧な存在の評価ではない。ずばり、国内の過剰貯蓄の状況だ。
結局のところ、国内の貸出先が増えない中、銀行の実質預金などが一方的に増えていく「過剰貯蓄問題」こそが、日本経済低迷の主因なのである。過剰貯蓄の運用先がなく、銀行が「国債を買うしかない」ことこそが、日本経済の真の問題であり、国債金利が世界最低で推移している理由というわけだ。
『2010年3月14日』 日本経済新聞 「銀行の国債保有最高 1月末126兆円、資金需要が低迷」
国内銀行の国債保有が過去最高を更新している。今年1月末の残高は126兆4千億円と、2008年秋の金融危機から1年余りで1.5倍に膨らんだ。企業の資金需要が低迷し、預金で集めたお金を貸し出しではなく、国債に振り向ける傾向が強まっている。国債相場の安定にはつながっているものの、銀行本来の役割を果たせていないとの指摘もある。一部の地方銀行では国債保有が増え、金融庁の「金利リスク基準」を超えたもようだ。
日銀の統計によると、リーマン・ショック直後の08年9月末の銀行の国債保有残高は83兆4千億円だったが、その後は増加傾向が鮮明になっている。保有残高は大手銀、地銀ともに、毎月のように過去最高を更新している。』
先日、日経新聞が「企業の資金需要が低迷し、預金で集めたお金を貸し出しではなく、国債に振り向ける傾向が強まっている」結果、銀行の国債保有が過去最高を更新したという記事を報じた。特に、この記事自体には文句をつける気は、全くない。全体的に「不安感」を煽り立てる論調になっているものの、「なぜ、銀行が国債を買わなければならないのか」について、きちんと事実に基づいて説明しているためである。
以前は、日経新聞も「財政破綻! 財政破綻!」とばかりやっていたが、最近はこの種の真っ当な記事が増えてきている。一体、何が理由なのだろうか。
いずれにせよ日経新聞は、明らかに財政(及び日本経済の真の問題)について理解している。あるいは、理解している記者がいる。
それにも関わらず、財務省が政府の負債残高について発表した際は、日経新聞もやはり他紙同様に「国民一人当たり八百万円の借金!」などという、あからさまなミスリードに手を貸すわけだ。
明らかな「無知」が原因で、いい加減な報道を垂れ流す朝日新聞と、理解していながら財務省に逆らわない日経新聞と、果たしてどちらが罪深いのだろうか。
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