第43回 朝日新聞と日経新聞(1/3)
最近、新聞など一部のマスコミにおいて、財政や「国の借金」(正しくは政府の負債)に関する報道に、変化が見られるようになってきた。国民の危機感を煽る論調は相変わらずだが、少なくとも問題を正しく定義、認識した上で、数値ベースで財政問題を論じ始めたのである。大変、素晴らしいことだ。
もっとも、まともな報道を始めた新聞も、四半期ごとの政府の負債総額発表時には、財政研究会(財務省の記者クラブ)が配布した資料に基づき、
「国の借金 900兆円に! 国民一人当たり700万円の借金!」
などと、「財務省式フレーズ」で国民を煽る行為はやめていない。
財政研究会に所属する大手マスコミの記者が、財務省の「意向」に逆らった報道ができないことについては、今さら言うまでもない。それにも増して凄いのは、記者クラブに所属した記者たちは、財務省から資料を配布された際に、それについて「書かない」という選択をすることさえ許されないのである。
すなわち、財務省が「国の借金」について発表した時には、財政研究会所属の全マスコミ(新聞やテレビ)から「同じ論調」の記事・ニュースが「必ず」流されるのである。次回の「国の借金」発表時には、是非とも複数の新聞を買い求め、確認してみて欲しい。どの新聞社も揃えたように(揃えたわけだが)、必ず一面に「国の借金 XXX兆円! 国民一人当たりXXX万円の借金!」という見出しで、記事を掲載している。
大手マスコミは、財務省が財政研究会で資料を配布した際に、「必ず」財務省の意向に沿った記事を掲載しなければならない。とはいえ、財政問題の本質を理解している記者、あるいは理解し始めた記者は少なくないわけで、時折、一部の新聞に財務省の意向とは真逆の論調の、財政に関する記事が掲載されることになるわけだ。
さすがの財務省も、財政研究会が絡まない報道についてまで、各紙をコントロールすることはできない。というか、そんなことをした日には、言論の自由の明確な侵害に該当する。
それ以前に、財政研究会という記者クラブを通じ、各紙に自省の意向に沿った記事を書かせるのも、言論の自由の侵害であることに違いはないように思えるわけだが。
記者クラブとは、確かにマスコミの既得権ではある。とはいえ、同時に官僚側の言論統制のために、いいように利用されているという側面もあるわけだ。
もちろん、新聞社によっては、さらに「その逆」のケースの報道がなされることもある。すなわち、財務省「以上」に日本の財政危機を叫び、国民の危機感をセンセーショナルに煽りたてる報道である。
『朝日新聞 2010年3月7日「悪夢「20XX年日本破綻」
20XX年-。
ある週末の夜、首相官邸の記者会見場は熱気に満ちていた。緊急会見に臨んだ首相が震えた声で切り出した。
「国民の皆様、深刻なお話を申し上げなければなりません。日本の財政は破綻の危機です。本日、国際通貨基金(IMF)に緊急支援を要請し、関係国と協議に入りました。挙国一致内閣で危機を乗り越えるため、野党各党に政権協議を呼びかけます」
続いて財務相が「前年度比5%以上の歳出削減を5年間続ける」などの「財政再建緊急プラン」を公表した。極秘に練り上げられたプランだ。数ヶ月前から国債の引受先を決める入札が不調に終わるようになり、海外の市場関係者の間に「日本は投資先として危険」とのレポートも出回っていた。(中略)
いずれこんな「破局のシナリオ」が現実になるかもしれない。国・地方の借金は先進国で最悪の水準で、10年度政府予算案は税収が歳出の半分にも満たない異常事態だ。このままで大丈夫なのか。(五郎丸健一)』
衝撃を受けた。もちろん、記事の内容に対してではない。
衝撃を受けたのは、経済に「完璧に無知」な記者に財政に関する記事を書かせる、朝日新聞の蛮勇に対してである。
ちなみに、中略のところには「物価高騰」「株価が暴落」「消費税25%に」などと、センセーショナルな「だけ」の用語が並び、経済のロジックを全く無視した論調が続いている。これほどまでに「省略」することが惜しくない記事は、他に類例を知らない。
要は、この記事を書いた記者は、経済について幼児レベルの理解度でしかないわけだ。聞き覚えた単語を並べ、センセーショナルなストーリーを「でっち上げた」だけなのだ。実際、この史上最大級の落書き記事、というか明らかな紙の無駄に比べれば、子供の落書きの方がまだしも(いや、はるかに)価値があるだろう。
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