第42回 金融政策と財政政策(3/3)
すなわち需要が増大し、健全なインフレが達成されてこそ、民間の資金需要は高まるわけだ。逆に言えば、デフレギャップが縮小しない現在の日本のような環境下では、民間の資金重要は高まりにくいのである。民間の資金需要がない以上、中央銀行から民間銀行が流動性を供給されたとしても、その多くは民間への貸出には回らず、国債の購入に向かってしまう。結果、日本の国債金利は長年、世界最低を維持しているわけである。
そう考えると、現在の日本はなかなか困った状況に陥っていることが分かる。
◇需要不足かつデフレ下で、民間の資金需要が高まらない◇
↓
◇民間の資金需要が高まらないため、中央銀行の金融政策の効果が低い◇
↓
◇金融政策だけではデフレを脱却できず、結果的に民間の資金需要が高まらない◇
と、デフレを主因としたある種の悪循環に陥っている可能性が高いのである。大本の「需要不足」という問題を解決しない以上、この循環から日本経済が抜け出すのは、至難の技なのではないだろうか。
民主党政権は発足直後から「ムダの削減」なるスローガンを掲げ、補正予算の凍結やら事業仕分けやらに邁進してきた。補正予算凍結にしても事業仕分けにしても、GDP上の政府支出(政府最終消費支出もしくは公共投資)という支出項目の削減であることには変わりはない。
09年11月の民主党政権による「デフレ宣言」の際には、片手で政府の支出を削減しながら、片手で日銀にデフレ脱却を要求する無茶苦茶ぶりで、筆者は、
「何をやっているんだか・・・」
と、心底から呆れ返ってしまったものだ。政府が目の色を変えて需要(=GDP)を削り取り、デフレギャップ拡大に邁進する中で、
「デフレを何とかしろ!」
などと言われた日銀も、さぞや困惑したことだろう。
その後、数ヶ月の時を経て、民主党政権も少しは勉強したのだろうか。一応、日銀に金融緩和を要請すると同時に、需要創出(要は財政出動)の必要性についても発言が聞こえるようになってきた。
『2010年3月5日SankeiBiz「今後1年以上は財政出動を維持」 菅財務相
菅直人副総理・財務相は4日の参院予算委員会で、「財政出動を少なくとも1年か何年かは維持していく」と述べた。今後1年以上は、金融危機以降の異常な財政政策から脱却する「出口戦略」よりも、景気刺激を優先する考えを示した。
菅財務相は「最終的には対GDP(国内総生産)比の債務残高の安定化を(財政健全化の)目標にすべきだ」としながらも、税収の落ち込みの中で、「全体のパイを大きくするために、国民の理解を得て、財政出動を少なくとも1年か何年かは維持していく」と発言。円高・デフレ不況の中、当面は景気の下支えを優先する方針を示した。(後略)』
まさか民主党の財務相の口から、
「最終的には対GDP(国内総生産)比の債務残高の安定化を(財政健全化の)目標にすべきだ」
などと、非常に真っ当な戦略目標が出てくるとは思わなかった。
そう、大切なのは政府の負債残高(債務残高)などではない。何しろ、世界の95%以上の政府は、発表のたびに政府の負債残高が過去最高を更新しているのだ。
大切なのは負債残高などではなく、拡大する名目GDPの中で政府の負債残高の割合を小さくしていくことだ。すなわち、健全なインフレと実質GDPの成長である。
名目GDPが順調に成長していけば、政府の負債の返済負担は時を経るごとに小さくなっていく。すなわち「若い世代に負担を押し付けずに済む」というわけだ。
逆にデフレの中では、負債の返済負担は時間が経てば経つほど重くなっていく。デフレを放置することこそ、「国の借金の負担を将来世代への先送りする」行為そのものなのだ。
民主党政権は、とにかく首相や閣僚の発言に一貫性がなく、整合性も取れないのが特徴だ。民主党政権が、この正しい戦略目標に「政権として」取り組めるのか。しばらくは慎重に、推移を見守る必要があるだろう。
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