第42回 金融政策と財政政策(2/3)
実は、日銀の量的緩和が本格化した03年以降、日本のマネーストックは少しずつではあるが増加を続けている。03年4月から09年末までのマネーストック(M2)を見ると、13%ほど拡大したのである。しかも、06年の量的緩和終了後も、マネーストックの拡大ペース(確かに、微々たるものではあるが)は、あまり変わっていない。
【図42-2 日本のマネーストック(左軸)とマネタリーベース(右軸)の推移(単位:億円)】

出典:日本銀行
ここまでの話をまとめると、以下になる。
◇前回の量的緩和時、国内銀行の貸出金残高の著しい伸びは見られなかった
◇量的緩和時と解除後では、マネタリーベースの伸びに、変化はあまり見られなかった
◇結果的に、日本はデフレ脱却を果たせていない
結局のところ、以前もご紹介した日銀の白川総裁の言が正しいのだろう。
「需要自体が不足している時は、流動性を供給するだけでは物価は上昇しない」
筆者は別に白川総裁を全面的に支援しているわけでも何でもないが、この発言には文句なしで全面賛成する。デフレギャップが巨大化し、需要自体が不足している状況で、流動性を供給するだけでは物価は上昇しない。すなわち、デフレ脱却は果たせない。
図42-2では、一応、マネーストックは拡大しているが、日本がデフレ脱却を果たすには、これだけでは不充分なのだ。インフレとは「コストプッシュ型インフレ」「マネーストック拡大型インフレ」「需要牽引型インフレ」など、複数の種類がある。少なくとも、現在の日本はマネーストック拡大型インフレにはなりにくい状況なのである。(※コストプッシュ型インフレとは、資源バブルなどにより輸入価格が上昇した結果、国内物価が上がること)
改めて図42-1を見て欲しいのだが、日銀がマネタリーベースを拡大したにも関わらず、銀行からの貸出はそれほど増えていない。その理由を考えたとき、やはり「民間の資金需要」の問題を思い起こさずにはいられないわけだ。
当連載では、バブル崩壊後の日本で「クラウディングアウト」が発生していないことについて、何度も触れてきた。政府の国債増発を批判する人たちの多くは、
「国債発行残高が増えると、金利が上がり、民間の経済活動が阻害される」
と、批判している。この「国債増発による金利上昇」というクラウディングアウトの現象自体は、経済学の教科書にも書かれている話なので、とやかく言うつもりはない。問題は。クラウディングアウトが発生するには、民間の資金需要が拡大しているという条件が成立しなければならないという点だ。
民間の資金需要拡大とは、要するに国家経済のフロー(GDP)上の民間企業設備投資や、民間住宅投資の拡大だ。民間企業(や家計)が積極的に投資(もしくは消費)を拡大する状況が生まれてこそ、民間の資金需要が拡大するわけである。すなわち、クラウディングアウトは「民間が支出を拡大する」ことが前提となっており、世界的な話はともかく、少なくとも日本でそれが前提となるロジックを振りかざすのは、いささか強引に過ぎると思うわけだ。
民間企業が設備投資を拡大するのは、もちろん需要が増大している環境下においてである。また、家計が住宅投資を活発に行うのは、健全なインフレと経済成長により、給与水準が順調に高くなっている最中であろう。
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