第42回 金融政策と財政政策(1/3)
日本経済のデフレ克服という課題が、社会的に共有され始めたことを受け、政府が日本銀行に更なる金融緩和を求めた。政府の要望に対し、日銀は新たな金融緩和強化策を検討するとの報道が、3月5日に流れた。
『2010年3月5日 読売新聞「日銀、金融緩和の強化検討...新型オペの拡充など」
日本銀行は4日、超低金利政策のもとでの景気の下支えを徹底するため、金融緩和を一段と強化する方向で検討に入った。
3月末の企業の年度末越え資金の確保を支援するのが狙いで、具体的には、昨年12月1日の金融政策決定会合で導入を決めた年0・1%の固定金利で、貸出期間3か月の資金供給を10兆円規模で行う新型オペの拡充などを検討する。
また、資金供給期間が3月末をまたぐやや長めの通常の資金供給オペの回数と金額を増やし、金利上昇を未然に防ぐ考えだ。
日銀は景気の現状について、「持ち直しているが先行きは不透明」として、慎重な構えを崩していない。このため、資金需要が高まる年度末越えの資金を市場に潤沢に供給し、デフレ克服と景気の下支えに万全を期す。新型オペの規模拡大などについては、景気動向を見極めた上で、16、17日に開かれる金融政策決定会合で議論する。』
日本銀行は政府の求めに応じ、十兆円規模の新型オペレーションや、資金供給オペレーション(いわゆる買いオペ)の回数、金額規模の拡充に乗り出すわけである。これ自体は評価するべきであり、デフレ期の金融緩和がムダなどと言う気は全くないが、一つだけ留意しなければならない点がある。
それは、デフレ脱却を目的に日銀が量的緩和を大々的に拡大したことは、過去に一度あるということである。ご存知、小泉政権期である。小泉政権下の2001年3月から06年3月まで、日銀の当座預金残高量を調整することで金融緩和を実現する、量的緩和策が採用された。
結果、金融機関の資金繰りなどを払拭することはできたが、デフレ脱却は果たせなかった。デフレギャップの主因である「需要不足」の解消や、物価の押し上げ効果は限定的なものに終わったのである。
【図42-1 国内銀行の貸出金(左軸:十億円)と貸出態度DI(右軸)推移】

出典:日本銀行
図42-1は、1989年以降の国内銀行の貸出金残高、及び貸出態度判断DIを比較したものだ。小泉政権初期の景気の急激な落ち込み(01年、02年)を受け、日銀は大々的な量的緩和策に転じた。
結果、銀行の貸出態度DIは徐々に改善に向かい、04年以降はプラス化したのだ。貸出態度DIがプラス化するとは、
「金融機関の貸出態度は、三ヶ月前よりも緩和している」
と、その時点で考えた企業の方が、そうでない企業よりも多かったということである。量的緩和により手元の流動性が改善した以上、銀行の貸出態度が、それ以前の「貸し渋り・貸し剥し」から、「是非、借りて欲しい」へと変わって当然だ。
問題なのは、日銀の量的緩和政策により金融機関の貸出態度が好転したにも関わらず、銀行からの貸出金はあまり増えていないという事実である。あれほどまでに日銀が金融緩和を推進したにも関わらず、銀行の貸出金残高はバブル崩壊後のピーク(1997年)を回復していないのだ。橋本政権の前と後では、日本経済はまさしく別の国のごとく構造が変わってしまったわけだ。
そもそも日銀がなぜ量的緩和策を採ったのかといえば、マネタリーベース(またはハイパワードマネー)を拡大することで、マネーストック(またはマネーサプライ)を拡大したかったわけである。マネーストックが増加すれば、社会全体のお金の量が増え、物価水準はインフレの方向に触れるはずである。
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