三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第40回 アメリカの出口戦略(2/3)

(1/3の続き)

 民間(家計や企業)の負債減少が、底打ちしたのかどうか不明なこの時期に、しかも、コア物価が28年ぶりに対前月比でマイナスになったこの時期に、まさかアメリカは金融引き締めには動けないと勝手に思い込んでいた。ところが、予想に反し、FRBが金融引き締めに踏み込んだため、筆者は大変驚いてしまったわけである。

FRBの公定歩合引き上げ:緊急措置解除へ明確なシグナルを発信

 米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、金融市場への緊急流動性供給が完了し、FRBの96年の歴史の中で最も積極的な金融政策をついに転換するという、最も明確なシグナルを発信した。

 FRBはこの日、公定歩合を0.25ポイント引き上げて0.75%に設定した。公定歩合の引き上げは2006年6月以来。FRBは声明で、今回の決定を融資手段の「正常化」と表現し、金融政策には何の影響もないと説明。フェデラルファンド(FF)金利は「長期間にわたり」低水準に維持されようとの連邦公開市場委員会(FOMC)の見解を重ねて表明した。

 ウェルズ・ファーゴの元チーフエコノミストで、現在はカリフォルニア州立大学チャンネル諸島校で経済学を教えるスン・ウォンソーン教授は「公定歩合はこれまで、将来の金融政策の道筋を示唆する心理的な手段として常に利用されてきた」と説明。「結論としてFRBは、今後の政策金利を現状維持または引き下げるよりも、引き上げる公算の方が大きいというシグナルを発している」と分析した。(後略)』


 FRBが引き上げたのは、いわゆる政策金利であるFF金利ではなく、公定歩合の方である。公定歩合とは、FRBなどの中央銀行が、国内の民間銀行に窓口融資をする際の金利を意味する。

 かつての護送船団時代の日本は、日本銀行の窓口融資の影響力が大きく、公定歩合は実質的に政策金利の役割を果たしていた。(その後、金融ビッグバンを経て、政策金利は無担保翌日物金利に変更された。)

 アメリカなど、金融政策について「市場中心の金融政策」を採用している国々は、日本の「窓口融資中心の金融政策」について、批判を繰り返した。結果、金融ビッグバンにより、日本の金融政策もそれまでの窓口中心から、市場中心へと切り替わったのである。(政策金利の指標が公定歩合から無担保翌日物金利に変更されたのは、このためだ)

 ところが、サブプライム危機以降のアメリカは、それまでの「市場中心の金融政策」のスタイルをかなぐり捨て、窓口融資の割合を高めていった。驚愕すべき規模にまで広がったサブプライム危機を切り抜けるには、市場に任せているだけではダメだという判断であろう。

 とはいえ、やはりFRBは窓口融資拡大について、あくまで「非常的な措置」としてとらえていたようだ。アメリカのGDPがプラス成長になったことを受け、FRBは早くも金融引き締めに路線を切り替えたわけである。

 また、FRBは09年3月以降、中長期米国債の買い取りを続けていた。用意された3000億ドルという「枠」は、09年10月に使い切ったわけだが、FRBは予定通り国債買取を終了してしまった。さらに、FRBや民間金融機関からの住宅ローン担保証券(MBS)やフェニーメイ、フレディマックの発行・保証債券、いわゆるGSE債の買い取りについても、2010年3月をもって終了する予定となっている。


【図40-1 FRBのバランスシート資産サイドの推移(単位:百万ドル)】
20100224_02.png
出典:クリープランド連邦準備銀行


 図40-1は、09年末時点のFRBのバランスシート(資産側)の推移を見たものだ。09年9月、すなわちリーマンショック以降、FRBのバランスシートにおける資産サイドは。金融機関が窓口融資の担保として差し入れた資産、あるいは金融機関から買い上げた債券で、一気に倍増した。この金額分、アメリカの金融機関に流動性(預金準備)が供給されたわけだ。


(3/3に続く)

【Klugよりお知らせ】

当連載ブログの著者、三橋貴明氏の新刊が2月27日に発売されます!
『「テレビ政治」の内幕 』アマゾンで予約開始!

『経済ニュースの裏を読め!』も全国書店で発売中!

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

ページトップへ戻る