三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第三十九回 英フィナンシャル・タイムズ紙の社説(3/3)

(2/3の続き)

 真っ当でないのは、デフレ期、つまり供給が需要を上回っている時期に、
「ムダを削る」(=GDPの政府支出という需要項目を削る)
「増税する」(=民間支出という需要項目を削る)
 などと、総需要を抑制する政策を検討することだ。デフレ期に需要を抑制する政策を採っても、デフレが深刻化するだけである。

 とは言え、FTの言うように、日本の財政に手を入れる余地が大きいことは、確かな事実だ。


4.日本国債のほとんど(94%)は国内投資家が保有している。


【図39-3 日本国債保有者別内訳 2009年6月末時点(合計額:675兆7795億円)】
20100218_03.gif
出典:日本銀行 資金循環統計


 図39-3が、データが確定している09年6月末時点の日本国債保有者別内訳である。外国人投資家の割合はわずかに6.1%に過ぎないわけであるから、日本国債の金利が、格付け機関の嫌がらせ(=格下げ)の影響を全く受けないのも頷ける。

 とにかく民間の資金需要が高まらない以上、日本の銀行などは手元資金の運用に際し、国債を購入する以外の選択肢がほとんどないも同然なのだ。

 無論、民間の資金需要が高まらないという現実は問題である。と言うよりも、まさにこの「民間の資金需要が高まらない」ことこそが、日本経済の真の問題なのである。なぜならば、民間の資金需要が高まらない理由は、デフレギャップが巨大化し、民間が支出を増やそうという気になれないためだからだ。

 この現実を理解すれば、日本国債の金利が世界最低である事実や、外国人投資家の保有割合が極端に小さいことの理由も把握できる。現在の日本の「国家のバランスシート」の状態は、他国とは全く異なるのである。(ちなみに、アメリカも他国とは異なる)

 全体的なバランスシートの状況が全く違うにも関わらず、単純に政府の「負債のみ」に注目し、「破綻だ! 破綻だ!」と騒ぐことが、果たして建設的だろうか。

 今年になり、いきなり流行し始めた、「日本政府の負債残高が、家計の資産を上回ると、破綻する」論も、国家経済のストック(バランスシート)やフロー(GDP)を全く理解していない暴論だ。政府の負債が増え続けると、バランスシートの反対側(資産側)で「誰かが必ず資産を増やさなければならない」。

 すなわち、政府の負債が家計の資産を上回ったとき、そのときは国家のバランスシート上で、家計以外の資産(例:非金融法人企業の資産)が巨額に膨れ上がっていることになるわけだ。

 バランスシートは左右が必ず一致する。右側で負債が増えれば、左側で必ず誰かの資産が増える。すなわち、「政府の負債が家計の資産を上回れば」云々を主張している人は、経済の基本中の基本たるバランスシートさえ、全く理解していないということになる。


【Klugよりお知らせ】

当連載ブログの著者、三橋貴明氏の新刊が12月5日に出ました!
『経済ニュースの裏を読め!』全国書店で発売中。

その他、続々刊行中です。

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

02月04日更新

自動売買って興味あります?






みんなの回答を見る

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

ページトップへ戻る