三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第三十九回 英フィナンシャル・タイムズ紙の社説(2/3)

(1/3の続き)

 アメリカの純負債は、GDPの半分程度であるが、総額自体は日本よりも多い。また、日本政府の資産総額は462兆円であるから、アメリカ連邦政府、及び地方政府の資産総額(1ドル90円換算で、約350兆円)を、100兆円以上も上回っているわけである。両国の人口の差を思えば、日本政府は明らかに資産を持ちすぎのように思える。

 とは言え、その国の政府が資産をどれだけ持っているかは、「国家経済のモデル」に依存するところが大きい。

 たとえば、日本政府の資産のうち、100兆円前後は外貨準備高だ。外貨準備高は、日本企業が稼いだ貿易黒字分の外貨(ドルなど)を、政府が為替介入の目的で買い取ったものだ。すなわち、本来は図39-1の非金融法人企業の「資産」に入るべき金額が、政府の負債の方に移ったわけである。

 日本政府が保有する外貨準備という「資産」は、日本が貿易黒字国で、かつ04年まで政府が円高対策の為替介入をしたからこそ、大きくなっているわけである。

 いずれにしても、国の形により、資産・負債の構成は大きく異なるわけだ。単純に「政府の負債」のみを「国の借金!」などと騒ぎ立てるのは、まことに愚かな話である。


2.日本政府の国債利払いコストは、極端に低い

 
 すでに十年以上も国債金利世界最低を続けている以上、当然ながら日本政府の国債利払いコストは、他国と比べて相対的に低くなっている。FTの報道によると、日米英伊四カ国の「国債利払い対GDP比率」は以下の通りである。


 ◇日本 対GDP比で1.3%
 ◇アメリカ 対GDP比で1.8%
 ◇イギリス 対GDP比で2.3%
 ◇イタリア 対GDP比で5.3%


 金利の絶対値で見ても、対GDP比で見ても世界最低の国の政府について、
「破綻する! 破綻する!」
 などと騒ぐのは、率直に言って意味不明だ。

 とは言え、こういう書き方をすると、即座に、
「いや、今の日本国債の金利は『国債バブル』が発生しているためだ。バブルはいずれ弾け、日本国債は暴落する!」
 などと、国内の銀行などが「なぜ国債を買わなければならないか」を全く理解していない発言が返ってくる。これほどまでにデフレギャップが大きくなく、民間の資金需要がそれなりにあれば、銀行は別に国債など買いたくないわけである(何しろ、超低金利だ)。

 問題は民間の資金需要がないことであって、国債価格が高い(国債金利が低い)ことなどではない。と言うよりも、この手の主張をする人々は、国債金利が低いと「バブルだ!」と叫ぶくせに、国債金利が上昇すると、今度は、
「それ見ろ! 国債価格暴落だ! 破綻だ! 破綻だ!」
 と言い出すわけである。

 しかし好景気になり、民間の資金需要が増えれば、国債金利が上がるのは当たり前だ。さらに好景気になれば、そもそも政府は国債を発行する必要がなくなる。

 ところが「日本財政破綻原理主義者」の皆さまは、国債価格が上がろうと(金利が下がる)とも下がろうとも、結局は「破綻だ!」という結論にもっていく理屈をこねくりだすわけである。何と言うか、「暇ですね」以外に感想を思いつかない。


3.財政に手を尽くす余地が大きい(消費税が低い)


 日本の消費税5%という税率は、世界的に見ると低い方の部類に属する。

 無論、デフレ期(すなわち現在)に増税し、ただでさえ増えない需要をさらに抑制するなど論外だ。とは言え、日本が恐慌経済を脱し、国債金利が上昇する好景気を迎え、さらにインフレ傾向が強まった場合は、増税は一つのソリューションになりえる。

 インフレ期とは、要するに需要が供給を上回っているわけである。この時期に「総需要抑制」政策として増税を検討するのは、真っ当な考え方である。

(3/3に続く)


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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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