第三十五回 続 ユーロの危機(2/3)
実際のところ、ギリシャが現在の苦境を脱するには、「ユーロ離脱」こそが最も適切なソリューションなのである。ユーロを離脱すれば、ギリシャは再び金融政策と財政政策の同期を取り戻すことができる。また、独自通貨を大きく引き下げることで、輸出競争力を回復することができるわけだ。(とは言え、ギリシャがユーロを離脱した途端、通貨暴落により政府がデフォルトする可能性もあるが。)
ギリシャ政府が三ヵ年計画を採択したところで、同国が苦境から脱することができるとは誰も信じていない。当のパパンドレウ政権ですら、全く信じていないだろう。
『ブルームバーグ 2010年1月14日「パパンドレウ首相:ギリシャのユーロ脱退ない-IMF支援も必要ない」
ギリシャのパパンドレウ首相は13日、同国がユーロを脱退することはないと述べた。また、欧州連合(EU)加盟国で最大となっている同国の財政赤字の削減に向け、国際通貨基金(IMF)に支援を求めることもないと言明した。
同首相はアテネでの記者会見で、ギリシャの拡大している財政赤字と増大する債務への懸念に対し、金融市場はときおり非合理に反応すると指摘。ギリシャ政府はEUに提案している財政赤字縮小目標の達成に向け全力を挙げていると強調した。この提案によると、ギリシャは財政赤字を2012年までにEUの上限目標である国内総生産(GDP)比3%以内に抑制することを図る。』
わざわざ首相自ら「ユーロ脱退はない。IMF支援も必要ない」と断言せざるを得ないことこそが、逆に誰もが、
「ギリシャはユーロを離脱するのではないだろうか。IMF支援が必要なのではないだろうか」
と、疑っている証といえるだろう。
実際、IMFのストロスカーン専務理事は、1月15日にわざわざ、
「ECBやEUだけでギリシャの財政安定化支援が不可能な場合は、IMFが協力できる」
との見解を示している。現在、IMFは財政問題解決のために、ギリシャ政府が求める「技術的支援」の要請に対応している。ストロスカーン専務理事は、欧州当局とギリシャ政府が協力して問題解決に取り組むのであれば「問題はない」ものの、
「彼らがIMFを必要とするなら、われわれは支援の準備を整えている」
とも語った。ギリシャが実際にはIMF支援を必要とする状況にあると、暗に語っているように思えなくもない。
現在のユーロ圏では、ギリシャ以外にもポルトガル、アイルランド、スペインの経済が、極めて深刻な状況に陥っている。いわゆる「PIGS(四カ国の頭文字を繋げた造語)」問題である。
ギリシャがユーロ離脱、もしくはIMFに支援を要請するような事態になった場合、残りのPIGS諸国の行動にも影響を与えないわけにはいかない。そういう意味で、ギリシャ問題は、欧州のシステミックリスクの一つなのである。
なぜ「一つである」と書いたかといえば、欧州はPIGS以外にも複数のシステミックリスク(連鎖する問題)を抱えているためだ。(厳密には、システミックリスクとは、金融機関の破綻連鎖を意味する。)
先週、欧州の失業率の状況を取り上げたが、最も雇用環境が悪化しているのは、PIGSの一角をなすスペインではなく、ラトビアであった。(図34-1「2009年11月時点 欧州主要国の失業率」参照)
ラトビア(失業率22.3%)以外にも、バルト諸国はエストニア(同15.2%)、リトアニア(同14.6%)と、三国とも雇用環境が極端に悪くなっている。
特に、ラトビアの失業率22.3%とは、1930年代のアメリカ大恐慌時代に匹敵するような数値である。1930年代前半のアメリカは、全国の失業率が25%、都市部では50%近くにまで達した。ラトビアの現況は、あの頃のアメリカとほとんど変わらない状況にまで至っているわけである。
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