第二十七回 指標の罠(2/3)
センセーショナリズムを追い求めたにせよ、政権叩きが目的だったにせよ、ほとんどの新聞の見出しとして「実質GDPマイナス12.7%!」が載ったことは、日本経済に間違いなく負の影響をもたらした。メディア側は、単に見出しに用いる指標を切り替えただけと言い訳するだろうが、この社会的な影響は決して小さなものではなかったと確信している。
ちなみに、内閣府は実質GDPの成長率について、毎回「対前期比」と「対前期比年率換算」の二種類を公表している。内閣府が公表した二種類の指標について、メディア側がかつては「対前期比」を、08年第4四半期以降は「対前期比年率換算」の数値を「選択」し、新聞の見出しとして使っているわけだ。内閣府からは二種類の指標が公表され、そのどちらを見出しに採用するかの自由は、あくまでメディア側にあるのである。
リーマン・ショック以降の経済の落ち込みは、当然ながら国内企業の広告費削減を招き、新聞やテレビ各社の決算を激しく悪化させた。まさにメディアの自業自得としか、表現のしようがないわけだ。
最近、朝日新聞が早期退職者募集のリストラを始めるという報道が流れ、毎日新聞社の冬のボーナスはマイナス40%と、新聞労連加盟各社の中で最悪の削減幅になりそうな状況である。2008年度の連結決算時は、大手紙の中で唯一、辛うじて黒字を確保した日経新聞も、09年度中間決算でついに赤字化し、TBSも現時点で連結での通期最終赤字が確定的になっている(TBSはテレビ事業単体ではすでに赤字化している。)。
メディア各社の業績の急激な冷え込みは、そこで働く社員の給与減少という姿をとり、彼ら自身の身に降りかかってきたわけだ。08年第4四半期に唐突に「年率換算」のGDP成長率を使い始め、社会不安を煽り、景気悪化を促進したメディア関係の人々は、果たしてこの「当たり前」の結果を予想できなかったのだろうか。機会があれば、是非とも聞いてみたいと思う。
日本経済は、09年第2四半期以降、プラス成長に復帰した。
筆者は日本経済がプラス成長になった途端に、メディア各社が今度は成長率に関する年率換算の報道をやめるのではないかと予想していたが、さすがにそれはないようだ。各社共に、GDPがプラス成長であろうとも、「対前期比年率換算」の数値で見出し化している。
【図27-1 日本のGDP成長率(対前期比年率換算) 単位:%】
出典:内閣府 平成12暦年連鎖価格GDP需要項目別時系列表
図27-1は、2002年以降における、日本の対前期比年率換算GDP成長率(名目値及び実質値)をグラフ化したものだ。
こうして流れを改めて見ると、小泉政権後半に始まった、いわゆる「いざなぎ越え」の景気拡大局面は、2007年Q1前後に、事実上終わっていたことが確認できる。
改めて考えると当たり前で、今回の景気拡大局面の牽引車であったアメリカの不動産バブルは、すでに06年中頃にはピークアウトしていたのだ。その後しばらくは、何と言うか「バブルの余韻」的なものが残り、日本経済も一時的にプラス成長を保っていただけなのである。
2008年第2四半期には、すでに日本の経済成長率は名目値、実質値共にマイナスに落ち込んでいる。結局のところ、リーマン・ショックはマイナス幅を拡大こそしたものの、いずれにしても08年から翌年第1四半期までの、日本経済のマイナス成長は避けられそうになかったように思える。
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