第十回 外貨準備高とは結局何なのか?(3/3)
ここまで見てきた通り、外貨準備高とは主に過去の中央銀行による為替介入(自国通貨で外貨を買う)により、積み立てられたものである。積み立てられた外貨準備は、自国通貨の為替レートの暴落時に、その価値を買い支える際に役立つ。
逆の言い方をすれば、自国通貨が暴落する「通貨危機」の局面でも迎えない限り、外貨準備はあまり役には立たないわけである。
通貨危機に直面すると、中央銀行は手持の外貨で自国通貨を買い支えることで、通貨の価値を防衛することができる。1997年のアジア通貨危機時のタイや、08年のロシアや韓国などは、まさにこのメソッドに則り、外貨準備を活用した通貨防衛に勤しんだわけだ。
アジア通貨危機時のタイは、結局売り圧力に屈服してしまった。だが、08年における露韓両国は、何とか最終的な破滅を食い止めることに成功している。少なくとも両国にとっては、外貨準備高は自国経済の下支えのために有用だったわけだ。
しかし、特に通貨危機に陥る可能性がない国の場合、外貨準備を多量に保有することは、あまり意味はない。何しろ、外貨準備は文字通り「外貨」であるため、国内の経済振興には何の役にも立たないわけだ。
本来は国内投資に向けられるべきマネーの一部が、外貨準備として固定化しているようなものである。内需振興という観点から見れば、むしろ邪魔なだけなのだ。
しかも、日中などの外貨準備大国は、保有する外貨準備の多くを米国債で運用している。より分かりやすい言い方をすると、アメリカ政府に貸しつけているわけだ。
両国が保有する外貨準備を、国内経済の活性化に振り向けようとすると、巨大な米国債売り圧力が生じ、ドル基軸通貨制度が揺るぎかねない。また、外貨を自国通貨に両替することにより、猛烈な通貨高圧力が発生するため、安易に国内経済に向けることはできないわけだ。
外貨準備高が多いということは、本来は民間が活用すべき対外資産の多くを、政府が保有し、固定化させてしまっていることを意味している。経済の効率や「民間活力」という面を考えると、明確に「悪化している」わけである。
また、外貨準備を「国富ファンド」として利用する考え方もあるにはあるが、政府の投資が成功する確率は、意外なほどに低い。実際、中国の国富ファンドが鳴り物入りで、モルガンスタンレーやブラックストーンに(80億ドルも!)出資した際には、瞬く間に20億ドルもの損失を出すという、散々な結果に終わった。
経営責任を追及されることがない、国富ファンドの投資が成功裏に終わる可能性は、間違いなく民間のファンドよりも小さくなってしまうのである。
散々繰り返したように、中国の巨額外貨準備高の存在は、同国の対外資産に政府が占める割合が大きいことを意味するに過ぎない。すなわち、「民間の活力」とうい意味では、明らかに後退しているわけだ。
ところが、日本国内で、
「日本経済はもっと民間活力を活用しなければならない!」
と叫んでいる経済評論家が、同時に、
「中国の外貨準備は世界一! 中国は一段と存在感を高めるだろう」
などと、中国を必死になって褒め称えているのが現実なのである。
この種の人々は、自分の主張の矛盾を理解するほどの知性も無いのだなと、中国の外貨準備関連の報道を目にするたびに、筆者はつくづくと思うわけである。
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