三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第二回 国家の負債を整理する(2/3)

(1/3の続き)

 先週、図1-1として掲載した日本国家のバランスシートに掲載されている「負債合計 5,271.6兆円」は、図2-1の通り六つに分類できる。







【図2-1 国家の負債の分類】

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 日本政府の負債とは、要は政府が発行した国債であるから、ほとんどが一番右上の「①政府の負債(内)」に含まれる。「ほとんど」と書いたのは、実は日本国債の数%は外国人投資家により購入されているからである。もちろん外貨建てではなく(日本政府に外貨建て負債は存在しない)日本円建てであるため、外国人の国債購入分は「⑤政府の負債(外自)」に該当することになる。

 我々一般の日本国民の住宅ローンなどは、普通は「②民間負債(内)」に含まれるだろう。とはいえ、海外を見れば、住宅ローンが「④民間の負債(外)」に該当するケースも、決して珍しいわけではない。すなわち、民間(家計や企業など)が、海外から外貨建てで借り入れを行うケースである。

 2008年10月に破綻したアイスランドを筆頭に、欧州の「金融立国」では、この種の「海外からの外貨建てローン」で国民が消費を謳歌しているケースが少なくなかった。例えば、アイスランドの「外貨建てローン」率の極端な高さついては、朝日新聞が08年10月21日に記事を書いている。


『2008年10月21日 朝日新聞「ローン返済、突如倍増 アイスランド、円建て人気裏目」
家や車のローンの毎月の返済額が急に倍になる--。悪夢みたいな話がアイスランドでは現実になっていた。
レイキャビクの高校教師、アウスディスさん(47)は2年前にアパートを買った。子供が5人なので広めの約200平方メートル。そのローン返済額が今年初めは月11万4千クローナだったのに今は22万クローナなのだ。
実は資金を「日本円」で借りた。それがつまずきのもとだった。
バブル経済で同国通貨クローナは金利が高いうえ、返済額が物価の上昇率に応じて変わる独特の制度もある。それに比べ円はずっと低金利だし、この国のインフレにも振り回されない。
返済は円での定額を毎月のレートでクローナに替えて払う。「為替の変動が多少あっても割安」になるはずだった。
ところが、この春ごろから下落気味だったクローナは金融危機で暴落。ついに1クローナが約1円と年初のほぼ半分の価値に落ちてしまった。
手取りで26万クローナの月給のほとんどがローン返済に消えるはめになった。(後略)』


 アイスランドでは、何と高級車を購入する国民の九割以上が、日本円建てなどの外貨建てローンを利用していたとのことである。

 破綻前、アイスランドの通貨であるアイスランド・クローナ(以下、ISK)の金利が二桁であったのに対し、日本円建ての場合はわずかに4%強に過ぎなかった。しかも、当時の日本円の為替レートは継続的な円安が続き、ISKの対円レートは日に日に上昇していったのである。

 金利が極端に安い上に、ISK高騰で実質的な負債額が日々目減りしていくわけだから、アイスランド国民が円建てローンなどに殺到したのも分からないではない。しかし、外貨建てローンには「為替レート」というリスクが存在しているのである。リスクを度外視し、メリットだけを追い求めたアイスランド国民の末路は、まあ、わたしが言うまでもないだろう。
 ちなみにここ数年、国民が「④民間の負債(外)」で消費を楽しんでいたのは、何もアイスランド国民に限らない。例えば東欧諸国には、日本と同様に超低金利を継続していたスイスから、莫大なスイス・フラン建てのマネーが流れ込んでしまった。

 特に、ポーランドのスイス・フラン建てローンの状況が凄まじい。何と、同国では国民が住宅ローンを組む際に、97%以上がスイス・フラン建てで提供されていたのである。あまりにも無茶苦茶すぎて、咄嗟に発する言葉を思いつかない。

 ポーランドの通貨ズウォティは、リーマン・ショック以降、対スイス・フランで六割以上も下落してしまった。当然、ポーランド国民は、自国通貨換算でいきなり倍増した住宅ローンの返済に今日も苦しんでいる。

(3/3に続く)

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02月04日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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