三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

09月18日更新

第272回 朝日新聞と吉田調書(3/3)

 九州大学大学院比較社会文化研究院准教授である施光恒氏は、朝日新聞に代表される「日本を貶める報道」の裏に、

(1)「知識人」は、「俺は一般人とは違う。かしこいのだ」と思いたい。そのときに「自己批判的」=「知的」という日本的な図式を利用する。
(2)戦後のGHQの「日本がすべて悪かった」という政治宣伝及び自虐史観の影響

 の二つがあると分析している。要するに、前衛主義と自虐主義がミックスされ、朝日新聞の吉田調書報道問題や、「いわゆる従軍慰安婦問題」が引き起こされたと分析しているのである。
 施准教授は、朝日新聞の誤報問題について、
「日本人の邪悪さや主体性のなさを裏打ちするような話を耳にすれば、事実の検証が少々甘くても、肯定し受け入れてしまうのでしょう」
 と、書いているが、まさにその通りだ。
 要するに、
「日本は悪い。特に、日本政府は悪い」
 と、国民主権国家の国民としては考えられないような「常識」を身に着けた日本国民が、確かに存在するという話なのだ。彼らは、基本的に日本の全てを「旧態依然としている」「古臭い」「アジアに悪いことした」などと否定しようとしてくる。
 公共事業や原発(政府の関与が強い)が彼らに問答無用で否定されるのは、これらの事業が「悪い日本政府に管轄されている」ためなのであろう。彼らは「日本が悪い」「日本政府が悪い」ことを示す「話」を目にし、耳にすると、大喜びで飛びつき、世界に拡散しようとする。
 さらに「穿った」モノの見方をさせてもらえれば、吉田調書に関する朝日の「誤報」の裏には、やはり「反原発」というイデオロギーがあったのではないだろうか。原子力発電所の現場の所員たちを貶めることで、
「日本で原発を再稼働するなど、やはり無理なのでは」
 という、世論操作をしようとしたと疑ってしまうのだ。
 原子力発電を再稼働しない結果、日本の貿易赤字が3.6兆円膨らんだ。内、数量の増加が2.6兆円、価格上昇の影響が0.7兆円、そして為替安の影響が0.5兆円である。
 特に、中部電力の総原価に占める「燃料費」の割合は、現在は48.5%に達している。驚くべき数値としか表現のしようがない。東京電力も、41.7%と極めて高い。
 日本の貿易赤字は、我が国から外国への所得流出になる。日本からの所得流出は、電力会社が純資産を食いつぶすことで負担しているわけだが、それだけでは収まらず、電気料金の上昇という形で国民生活に跳ね返ってきている。電気料金は、我々にとって必ず支払わなければならないものだ。すなわち、税金の性質に近い。
 消費税増税による強制的な物価上昇に加え、電気料金の引き上げもまた、我が国の国民の可処分所得にとって重しになっているのだ。我々が値上がりした電気料金を支払ったところで、電力会社の利益になるわけではない。我々の所得から支払われたお金は、原油・LNGの購入代金として外国に流れていく。
 消費税の場合は、移転された所得はまだしも政府という国内の機関に渡る。政府が増税分のお金を国内でモノやサービスの購入に使えば、日本国民の所得が確実に生まれる。
 それに対し、鉱物性燃料の購入代金として外国に流れた我々の所得は、行きっ放しである。先方が日本のモノやサービスを輸入してくれない限り、我が国に所得が戻ってくることはない。
そういう意味で、現在の日本が原子力発電所を再稼働しないことは、消費税増税以上に「苛政」なのだ。本稿冒頭にも書いた通り、経済の語源は経世済民である。そして、経世済民とは政府の存在目的そのものなのだ。
9月10日。九州電力の川内原子力発電所について、原子力規制委員会は、九電の安全対策が新しい規制基準に適合しているとする審査書を正式に決定した。とにもかくにも、原子力規制委員会の新基準審査合格第一号が出ないことには、他の原子力発電の審査も滞ってしまう。川内が合格したことで、テンプレートやノウハウが共有され、他の原子力発電所の審査も進むことになるだろう。
川内原発1号機、2号機は、今冬までの再稼働を目指し、手続きを一歩、一歩進めていくことになる。全ての手続きを終えるには、まだ数か月必要だ。
再稼働までの数か月間、原子力発電を巡る情報は混乱の極みに達することが予想される。筆者は、できるだけマスコミを介さない(これが重要だ)情報を日本国民に届けることで、日本のエネルギー安全保障の再構築のために活動を続けていくつもりだ。
 同時に、特定の政治目的(「日本を貶める」「原子力発電所を再稼働させない」など)を達成するために歪められる情報の是正についても、繰り返し、繰り返し訴えていくつもりなのである。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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