三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

01月22日更新

第290回 国富と資産効果(3/3)

 先述の通り、インフラストラクチャーには建設時点のフロー効果に加え、将来に渡り「フロー(所得)を生み出す基盤」となる資産効果がある。
 無論、民間による工場建設などの設備投資も、投資時点では工場建設や資材納入などを受注した企業の所得を産み出す(フロー効果)。さらに、建設された工場は、将来に渡り製品を生産し、所得を産み出していく。これが、工場の資産効果だ。
 公共投資にせよ、民間企業設備投資にせよ、投資された時点で「GDP(所得)」を産み出すと同時に、将来のGDPを産み出す基盤となるのだ。この「投資の資産効果」に、日本国民はもっと注目するべきなのである。公共投資はもちろんのこと、民間投資についても同様だ。
 2013年度の生産資産を見ると、嬉しいことに対前年比で増加していた。2012年度は、恐らく東日本大震災の影響で対前年比マイナスになっていたのだが、徐々に回復しつつあるようである。

「国民が働き、生産資産を生産し、所得を獲得し、さらに生産資産の上で働き、将来的に所得を稼ぐ」

 上記はまさに、国民経済の「基本」だ。
 何しろ、生産資産は国民が働くことなしでは絶対に生産されない。日本の強みは、過去の日本国民の労働により生産された「生産資産」が分厚いことなのだ。(ついでに書いておくと、日本の対外純資産は世界最大である。日本は実は、世界一のお金持ち国家なのだ)
分厚い生産資産について、さらに厚みを増し、将来の国民が豊かに暮らせるようにする。そのためには「今」の日本国民が投資し、働き、生産資産を生産しなければならないわけである。
 そして、投資とは「将来のこと」を思わなければ、実行に移せない。「将来のこと」を思えば、無責任に公共投資を否定することはできないはずだ。
あるいは、民間投資がここまで減ることもなかったであろう。日本の民間企業設備は、ピークの90兆円から、今は60兆円台で低迷している。
 日本国民は「将来のこと」を考える必要がある。我々、日本国民が「今」将来のために行動して初めて、日本経済の成長が実現するのだ。そういう意味で「短期のプライマリーバランス改善」は、とてつもなく愚かしい目標といえる。
 しかも日本政府は、よりにもよって「短期のプライマリーバランス目標」を設定している。これは、最悪だ。
 日本政府が主体的に短期のPBを改善させようとすると、政府の支出を絞り込むしかない。結果的に、デフレの国では名目GDPつまりは「需要」が不足し、国民の所得が縮小。国民の所得が減れば、税収も小さくなり、PBは却って悪化するというドツボにはまることになる。
 その上、これが決定的に大事なのだが、財政改善の定義はあくまで「政府の負債対GDP比率の引き下げ」であり、「PB赤字の縮小」や「PBの黒字化」ではないのだ。
「PBは黒字化したが、名目GDP(分母)が小さくなってしまった結果、政府の負債対GDP比率は上昇(悪化)した。つまりは財政が悪化した」
 という現象が、普通に起こり得る。と言うより、日本では、
「PBの赤字を小さくした結果、名目GDPが小さくなり、政府の負債対GDP比率が上昇した」
 年が、過去十年だけで何度もあるのだ。
 PBを財政の目標に据えることは、
「PB黒字化を追求した結果、デフレを深刻化させ、PB赤字が拡大する」
「PB黒字化を追求した結果、政府の負債対GDP比率が却って上昇する」
 というケースがある以上、ナンセンス極まりないのだ。
 政府の財政目標を「政府の負債対GDP比率の引き下げ」に変更するのはもちろんのこと、筆者は一日本国民として「PB目標を破棄する」ことを望む。

続きを読む

PR / Ad Space

PR / Ad Space

クルクるアンケート

01月23日更新

スイスショックの影響は




みんなの回答を見る

三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

ページトップへ戻る