三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

05月28日更新

第308回 日本の1-3月期GDP速報値(3/3)

そもそも、日本政府はいざ知らず、日本国家は「借金大国」であるどころか、世界一のお金持ち国家なのだ。

『2015年5月22日 NHK「日本の対外純資産366兆円余 過去最高を更新」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150522/k10010087941000.html
日本が海外に持つ資産額から、海外が日本に持つ資産額を差し引いた対外純資産は、去年の年末時点で366兆円余りとなり、円安の影響で外貨建ての株式や債券の金額が膨らんだことなどから、前の年より41兆円増えて過去最高を更新しました。(後略)』

そもそも、「日本の借金」あるいは「国の借金」という表現を使うならば、政府の負債ではなく「日本の対外負債」になる。日本の対外負債は14年末時点で578兆4160億円だ。確かに、日本には500兆円を超える「国の借金」がある。
とはいえ、日本は逆に945兆2730億円の「対外資産」を保有しているのだ。結果的に、日本は366兆8560億円の対外純資産状態になっている。
純資産(=資産-負債)が多い人のことを「お金持ち」と呼ぶ。日本の対外純資産は、二位の中国の1.7倍に達しており、世界最大なのだ。日本は「国家」として見た場合、世界一のお金持ち国家なのである。これが統計的に「歪めようがない真実」だ。
その世界一のお金持ち国家「日本」の中で「日本円を発行できる」日本政府が、「日本円建て」で「日本国民から」借りているのが、財務省やマスコミのいう国の借金の正体である。しかも、現在は日銀の量的緩和政策により、政府が実質的に返済しなければならない負債が、14年末時点で70兆円も減っている。
さらに、長期金利は0.4%と世界最低水準。加えて、日本政府は金融資産(外貨準備など)や固定資産(インフラなど)という資産を持っており、負債から資産を引いた純負債額は、500兆円程度に過ぎない。
ネットで見た「国の借金(正しくは政府の純負債)」対GDP比率は100%程度で、アメリカと同水準だ。そして、IMFなどの国際機関では、政府の負債はグロスではなくネットで見るのが常識なのである。
当たり前だが、
「100億の借金がある!」
人が、実は銀行預金が99億9900万円あった場合、
「何だ、実質的な借金は100万円か」
という話になる。
何しろ、日本政府の金融資産額は「世界最大」(アメリカ連邦政府より多い)なのだ。「国の借金!」とばかりに、グロスのみの金額(負債額)をクローズアップさせ、ネット(純負債額)を語らないのは、異常としか言いようがない。
などなど、
「日本は世界一の借金大国」
が、いかに間違った情報であるかが、改めてご理解頂けたのではないかと思う。
とにかく、この「いわゆる国の借金」問題が全ての根底となり、我が国のデフレを長期化させ、国民を貧困化に導き、安全保障を弱体化させ、医療や介護の質を下げ、さらには移民国家化へと誘導しているのだ。
特に憂慮すべきは、存在しない「国の借金」問題が活用され、昨今「民間議員と称する民間人」たちが、内閣(あるいは官邸)に直接的に「誰か(レント・シーカー)のため」の政策を提言し、政権が有無を言わさず政策を国会に「降ろす」という、完全に民主主義のプロセスを無視した手法が採られている点だ。現在の日本は、ロビイストの天国であるアメリカ以上に民主主義が壊されているのである。
安倍政権が推進する、
「何となく日本国民のためのように見える政策」
も、結局は「国の借金」問題を言い訳に、レント・シーキングへと変貌していくことになる。代表的なのが、「地方創生」だ。
現在の安倍政権が推進する地方経済活性策は、
「各地にインフラを整備し、税制で企業や人の『東京からの』移転を推進する」
という正しい政策ではなく、
「各地の自治体にビジネスモデルを作らせ、地方交付税に『差』を付ける」
という、まるで企業の事業計画のごとき、異様な政策になっている。もちろん、企業が事業計画を立てるのは普通だが、自治体は企業ではない。
しかも、上記の「自治体のビジネスモデル」に、レント・シーキング的な「考え方」が加味されようとしているのだ。経済財政諮問会議の民間議員と称する民間人たちは、人口20万人以上の自治体において、上下水道や空港などを整備・運営する際にPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の導入を原則とするよう提案している。
一体、全体、何の権利があって、経済財政諮問会議の「民間議員と称する民間人」たちは、勝手にPFIを自治体に義務付けようとするのだろうか。PFIとは、インフラ整備に民間資本を入れるという話である。
PFIの原則化とは、要するに、
「公共インフラを民間ビジネスのために売り払えば売り払うほど、地方交付税が優遇される」
という話なのだろう。あるいは、そういう話になるのだろう。
上記の政策に「国民経済」の視点から反対すると、政府や「民間議員と称する民間人」たちは、即座に、
「そうは言われても、国の借金問題が悪化する状況で地方再生を成し遂げるには、民間活力や競争原理を導入する必要がある」
 と、反論してくるだろう。
 全ての問題の「根底」である「いわゆる国の借金」問題というウソを打破しない限り、我が国では間違った政策がひたすら繰り返され、GDPが堅調に拡大していく時代は訪れない。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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