三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

10月30日更新

第278回 マイナス金利(3/3)

日本チェーンストア協会が10月21日に発表した9月の全国スーパー売上高は前年同月比1%減少で、6か月連続で前年割れとなり、しかも8月より減少幅が拡大してしまった。
コンビニエンスストアが1.3%の減少。百貨店が0.7%減少。個人消費の指標となる小売主要4業種の販売統計は、全て前年を下回った。政府が「見込んでいた」V次回復など、現実には起きていない。
特に、実質賃金の低下やガソリン価格の高止まりは「地方経済」にダメージを与えている。
食品スーパー業三団体の発表によると、関東が1.3%増加だったのに対し、近畿は2%減少。中国四国が1.3%減少。東京圏を除く日本の地方は、未だ消費減少という「需要減」が継続していることが分かる。
政府は今のところ、「雇用は回復を保っている」との主張を続けているが、雇用情勢が底堅く推移しているのは確かだ。とはいえ、問題は雇用の「質」である。なぜならば、現在の日本が抱えている問題は、
「実質賃金の低下による、実質消費の減少」
であるためだ。
有効求人倍率を見ると、確かに1.09と上向いてはいるのだが、正社員に限ると0.68で頭打ちになってしまっている。(原数値だと0.67)
フリードマンではないが、消費を「安定的」に拡大するためには、いわゆる「恒常所得」が重要になる。さらに、雇用の安定化も必須だ。
国民の雇用が安定し、さらに恒常所得(定期的に入ることが予想される所得)が上昇して初めて、消費が「安定的」に増えていくことになる。住宅や自動車などの高額商品の購入も、所得が安定的に増えて初めて「最大化」されることになるだろう。
我が国は、少子高齢化により生産年齢対総人口比率が低下していく「構造」を持っている。ということは、実は政府が「放置」しておくだけで、国民の実質賃金が上昇し、雇用の安定化も(以前よりは)達成される可能性があるのだ。無論、公共事業、介護報酬、診療報酬など、政府の支出により需要規模が決定される分野については、「市場」に従い、労務単価を引き上げる政策を採らなければならないが。
それにしても、生産年齢人口比率の低下が人手不足をもたらし、人手不足が実質賃金や正社員を増やしていくという「因果関係」は、普通に推測できる。
それにも関わらず、政府は相も変らぬ「財政均衡主義」に囚われ、公共事業を抑制し、介護報酬や診療報酬を切り詰めようと図り、さらに消費税増税で実質賃金を強制的に引き下げた。
加えて、配偶者控除の廃止(復活した)や派遣労働の拡大、そして外国移民(外国人労働者)の受入拡大と、実質賃金を引き下げ、雇用を「不安定」にする政策を推し進めているのが安倍政権なのだ。
しかも、消費税増税と法人税減税の組み合わせは、すでにアメリカの実状が否定した「トリクルダウン政策」になる。税金は低所得者層を含め「平等」に徴収し、企業に「無条件」の減税をすることで、国内への投資を増やしてもらうという、まさに「トリクルダウン期待」の組み合わせなのだが、残念ながらグローバリゼーションが進んだ世界では、「国内」にトリクルダウン(滴り落ちる)かどうかは「不明」だ。何しろ、国境を越えた資本の移動は、すでに自由化されてしまっている。
消費税増税という「国民の負担」で法人税の税率を引き下げ、「外国」にトリクルダウンされてしまう可能性に対し、政府はまともな「解決策」を提示したことがない。もっとも、現在の日本で法人税率を引き下げると、増加した企業の純利益の多くが「内部留保」に回ることになるだろう。
対外直接投資(外国での工場建設など)や内部留保がどれだけ増えたところで、国民に雇用が生まれるわけではない。すなわち、「国内の所得(GDP)」は増えない。
さらに、消費税は、
「消費をすると、所得とは無関係に税率に基づき徴税される」
 税金であるため、消費性向(所得から消費に回す割合)が高い低所得者層ほど、税負担が重くなってしまう。支払った消費税の「税額」と所得を比べると、実質的な税率は高所得者層が低くなり、低所得者層が高くなってしまうのだ。
すなわち、消費税はそれ自体が「格差拡大効果」を保有していることになる。日本国内の所得格差が拡大してしまうと、中間層を増加させ、消費を最大化し、内需中心で経済成長するという「国民が豊かになる日本」は、取り戻せないまま終わる。
「日本を取り戻す」
 をスローガンにかかげて誕生した政権が、「財政破綻が」「国際公約が」「日本国債の信用が」といった抽象的なレトリックで、国民を貧しくする政策を推進している。マイナス金利で国債が売られる状況になった以上、我が国に財政問題などない。政府が間違っている以上、それを正すことは日本国の主権を持つ我々国民の義務であると信じる。

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10月31日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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