三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

12時26分更新

第304回 国際リニアコライダー(1/3)

安倍政権は今年中に、
「日本の運命を変える決断」
を下さなければならない。
政治的決断というのは、いずれにせよ国家の運命を変えるのだが、特にインパクトがある決断になる。
すなわち、国際リニアコライダーの国内建設の決定になる。

『2015年4月23日 読売新聞「ILC 海外広報が候補地視察...一関」
http://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20150423-OYTNT50179.html
海外の素粒子物理研究所の広報担当者が23日、巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の建設候補地となっている一関市などを視察した。
県によると、視察したのは欧米や中国など7か国9研究機関の12人。一関市の市街地を見た後、施設中心部に近い同市大東町大原を視察し、周辺の自然や地盤について県の担当者から説明を受けた。
視察後、ドイツの電子シンクロトロン研究所のバーバラ・ワームバインさんは「良い場所だと思った。研究所のニュースレターなどで情報発信していきたい」と話していた。24日は、平泉町や奥州市の視察が予定されている』

まずは、「高速加速器」について知って欲しい。つくばの高エネルギー加速器研究機構(KEK)や欧州原子核研究機構(CERN)などには、現在、回転式の高速加速器、すなわち電子と陽電子を光速にまで加速し衝突させる「機器」が設置されている。
つくばKEKのSuperKEKBは円周3キロメートル、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、何と円周27キロメートルである。LHCの場合は、だいたい山手線と同じ規模と考えれば、スケールが分かると思う。
SuperKEKBは円周3キロの円形加速器に電子と陽電子を投げ込み、回転させつつ加速し、衝突点で衝突させ、発生したエネルギーを観測することで「宇宙開闢の謎」を解明しようとしている。
この種の高速加速器や粒子物理学の研究からは、様々な派生技術が生まれ、世に広まっていっている。
例えば、電子の発見がエレクトロニクス産業の、量子力学がライフサイエンス・ナノテクノロジーの基盤となった。ガン治療の切り札と期待される陽子線治療をはじめ、医療診断装置や粒子線治療も素粒子物理学の研究から産まれた。
加速器が作り出す放射光は、創薬技術を牽引し、電子線滅菌装置は、医療・食品衛生の技術的基盤となっている。また、実はインターネットのWeb技術も、素粒子の研究から発明されたものだった。
ところで、回転式の円形加速器には、カーブのたびに粒子に加えたエネルギーの一部を喪失してしまうという欠陥がある。既存の加速器よりも高速で粒子を加速するためには、円形ではなく「直線形(リニア)」にするのが理想的であると考えられているのだ。
というわけで、直線の加速器「ILC(国際リニアコライダー)」の建設候補地の一つになっているのが、岩手県一関市から大東町大原にかけた一帯である。
なぜ、日本が候補地なのかといえば、元々、高速加速器の研究で世界をリードしているのに加え、我が国には浜松ホトニクスをはじめ、加速器に必要な超精密機器を製造することが可能な企業(しかも「オンリーワン」な企業)が世界で最も数多く存在しているためだ。高速加速器は、驚くほど裾野が広い「産業」なのである。
ILCの全長は、31キロメートルから50キロメートルに達する予定になっている。数十キロメートルの「超伝導加速空洞」の中を、5ナノメートルという超平行ビームを両端から送り出し、加速し、衝突させるのだ。と書いても、何が何だか分からないと思うが、とにかく文句なしで世界最大の精密機器になるわけだ。
ILC建設の効果は後述するが、とりあえず日本は2015年中に、
「ILCを日本に建設するか否か」
の決断をしなければならない。2015年に建設決定すると、稼働し始めるのが2020年代中ごろから後半。ちょうど、リニア新幹線「東京-名古屋」間が開通する時期と重なる。

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04月23日更新

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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