三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

12月18日更新

第285回 正しい物価の上がり方(3/3)

 そもそも、デフレーションとは総「需」要が供「給」能力に対し不足することで発生する。真の意味で「デフレ脱却」を確認するためには、デフレギャップ(需給ギャップのマイナス)やGDPデフレータを見る必要があるはずだ。
 あるいは、せめて消費者物価指数から「食料・エネルギー」を除いたコアコアCPIの上昇率を、インフレ目標として定めるべきだろう。コアコアCPI(正式には「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数」と呼ぶ)であれば、外国産の鉱物性燃料の輸入価格とは無関係に、国内の需給状況による物価変動を確認できる。
 その「コアコアCPI」であるが、14年10月の数値を見ると、対前年比でわずか2.2%だった。日銀の試算によると、消費税増税が各CPI(全国)に与える影響は、プラス2%である。すなわち、消費税増税分を排除すると、10月のコアコアCPIは対前年比で0.2%の上昇に過ぎないのだ。
 コアコアCPIでインフレ目標を設定し、「需要牽引型の物価上昇」という正しい「物価の上昇」を目指したならば、名目GDPという総需要の拡大に牽引される形で物価と所得が上昇し、実質賃金は上昇したはずだ。さらに、日銀が原油価格の乱高下に振り回されることも無かっただろう。
 消費税増税による需要縮小の影響は、正直、筆者が想像していた以上に強烈で、しかも早い。原油安が続き、さらに名目GDPの成長率が高まらない場合(7-9月期は年率換算で▲3.5%)、2015年の日本は最終的には、
「物価が下がり、それ以上のペースで賃金が落ち込んでいく」
 形、つまりは「デフレ型の実質賃金下落」に戻ってしまうことになりかねない。
 というわけで、総選挙を経た第三次安倍政権に対しては、
「日銀のインフレ目標をコアコCPIから、コアコアCPIに変更する」
「政府の財政出動で、総需要を拡大。需要牽引型の物価上昇を目指す」
 上記の二つを強く望む。
 それにしても、「指標」の定義を誤ってしまうと、こうも大きな影響が起きるわけである。総選挙で当選を果たした国会議員には、是非とも「各経済指標」の正しい意味を理解し、
「国民の実質賃金が上昇する形の物価上昇」
 を実現するためには、どうするべきなのか。永田町に赴く前に一度、真剣に考えて欲しいと切に願っている次第である。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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