05月16日更新
第204回 日本のエネルギー安全保障を考える(後編)(3/3)
そもそも論をしておくが、蓄電技術のブレイクスルーがない限り、日本のエネルギー供給の分野で、太陽光発電や風力発電が電力供給の主役になる日はやってこない。理由は、発電の技術的特性や我が国の国土的条件による。
日本は欧州のように、一定の西風が吹くわけではない。さらに、台風も来襲するため、風力発電を大規模に展開できるような国土ではない。風力発電の拡大には「安定的に風が吹く」ことが必要なのだ。
太陽光パネルにしても、太陽が陰ると発電されないのに加え、そもそも発電容量が小さすぎるという問題もある。ちなみに、原子力発電一台分の電力を太陽光で発電するには、太陽光パネルを山手線の内側の広さに敷き詰める必要がある。
電力とは「在庫」ができないタイプの商品だ。発電、送電、配電はほぼ同時に行われる。ユーザー側が「電気を使いたい」と思った瞬間に、発電所で発電し、供給しなければならないのが電力サービスなのだ。太陽光や風力では、発電可能性が自然環境に左右されてしまう。電力サービスは「曇っているので、発電できません」で済まされる世界ではないのだ。蓄電技術が大々的に発展すれば話は別だが、現時点では電気とは「顧客が必要な瞬間」に発電し、送電するしかない。自然環境に発電能力が依存してしまう太陽光や風力で原発を代替するなど、現実には全く不可能なのである。
日本の電力安定化にほとんど役に立たない再生可能エネルギーについて、日本の民主党政権は固定価格買取制度を導入してしまった。しかも、日本の再生可能エネルギーの買い取り価格は無闇に「高い」。例えば、太陽光10Kw以上の単価は、当初は1Kwあたり38円である。再生可能エネルギーの固定買取制度で先行したドイツは18円-24円だ。風力発電は、日本が23.1円-57.75円に対し、ドイツは5円-9円。日本の再生可能エネルギー買取価格は「異常」に高い。
この高い再生可能エネルギーの固定買取代金を誰が支払っているかといえば、もちろん日本の消費者である。すなわち、読者だ。何しろ、電力会社は再生可能エネルギーを買い取った代金を、政府の代わりに消費者から回収している。
要するに、再生可能エネルギー特措法は、福島第一原発の事故というショックを利用し、「誰か」が固定買取制度を政府(菅政権)に推進させ、投資利益を電力料金の一部として回収するために成立したのだ。日本の消費者の電気代として、不要な太陽光や風力の発電費用として「誰か」におカネが支払われる、いわゆるレント・シーキングなのである。「誰か」には、日本の投資家はもちろんのこと、外資も含まれている。
ちなみに、太陽光発電や風力発電は、典型的な設備産業だ。一度、設備を据えてしまえば、その後はほとんど雇用を産まない。さらに、日本で使用されている太陽光パネルの八割は台湾・中国のメーカー製であり、日系企業の所得が増えるわけでもない。
国民は本来必要のない再生可能エネルギーの買取代金を負担させられ、雇用もほとんど生まれない。得をしているのは、再生可能エネルギーに投資をした企業、投資家だけだ。再生可能エネルギーの固定買取制度とは、投資する余力がない一般国民から、投資余力を持つ投資家に強制的に所得を移転させる制度なのである。しかも、本制度は一部の企業、投資家と政権(菅直人政権)が結びつき、再生可能エネルギー特別措置法を成立させることで実現した。まさに、典型的なレント・シーキングだ。
国民から一部の投資家に強制的に所得を移転させ、エネルギー安全保障上は何の効果もない再生可能エネルギー固定買取制度。こんな愚かしい制度は、即刻、中止するべきである。
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