三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

11月27日更新

第282回 解散総選挙(3/3)

現在の日本政府に求められているのは「追加的な需要の創出」である。限られた所得(GDP)のパイへの新規参入を増やし、所得の奪い合いをさせることではない。しかも、安倍政権の「成長戦略」の施策を実施すると、国民が「勝ち組」と「負け組」に分かれ、社会が不安定化し、所得格差は拡大していくことになる。


そもそも、消費税増税自体が、所得格差を拡大する、高所得者層に優しく、低所得者層に厳しい税制なのだ。それにも関わらず、17年4月に景気判断条項なしで増税する法律が、総選挙後に成立することになる。
 現在の日本は国民の実質賃金が下落を続け、所得格差が開いているが、資産格差もまた拡大傾向にある。
 野村総合研究所が今年の11月、2013年の純金融資産保有額別世帯数と資産規模の推計を発表したのだが、結果は、
「純金融資産保有額1億円以上5億円未満の富裕層、5億円以上の超富裕層の世帯数の合計が100.7万世帯となり、2000年以降のピークである2007年を上回った」
というものであった。
 野村総研は富裕層が増加した理由について、
「アベノミクスによる株価上昇がもたらした金融資産増加の影響が大きかった」
 と、分析している。
 以前とは異なり、円安は実質賃金の上昇をもたらしていない。それどころか、輸入物価を引き上げることで、実質賃金下落に「貢献」してしまっているわけだが、株価を引き上げる効果もあるのは確かだ。何しろ、日本の株取引の65%は外国人投資家であるため、円安になると日本株が外国人にとって「お買い得」となり、日経平均は上昇する。
 安倍総理は、果たして「誰」の方を向いて政治をしているのだろうか。

『2014年11月20日 夕刊フジ「安倍首相独占インタビュー 解散断行の全真相 民主党にはのけ反るほど驚いた...」
(前略)──同時に、衆院解散を決断した理由は
「国民生活、国民経済に重い決断をする以上、国民の信を問うべきであると決断した。成長戦略には賛否両論がある。法人税減税は、わが党にも反対論があった。医療改革、農業改革、電力改革もそうだ。そうしたものをスピードアップして実行するには、国民の方々の理解と協力が必要だ」(後略)』

 今回の解散の「理由」は、法人税減税や医療改革、農業改革、電力改革など、いわゆる「岩盤規制の打破」に国民の理解と協力を求めるためである。と、総理自ら語っているのである。
当たり前だが、医療や農業、電力といった「安全保障を担う分野」における規制緩和は、国家の安全保障を弱体化させることになる。
「規制緩和・グローバル化と安全保障の強化は、両立しえない」
 のだ。
 例えば、医療、農業、電力について「岩盤規制」を打破し、究極的に「市場化」した場合、我が国の医療サービス、食料生産、エネルギー供給を「外国企業」が担うことになりかねない。あるいは、日本企業が担っていたとしても、資本的に外国資本に縛られる可能性もある。
その時点で我が国の「医療安全保障」「食料安全保障」「エネルギー安全保障」は維持、強化が可能だろうか。不可能だ。
 というわけで、安倍総理の「解散決断」の理由は、
「日本の安全保障を弱体化させるために、国民の皆さん、協力して下さい」
 という意味になってしまう。
要するに、安倍総理は奇をてらった「郵政解散」で、自らの「構造改革を推進するための政権基盤」を盤石なものにしているとしか思えないわけである。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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