三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

12時43分更新

第277回 ドイツ経済の落日(3/3)

 日本同様に、ドイツやユーロ圏の国々は、アメリカの要望通り、大規模な財政出動を実施しなければならないのだ。もちろん、日本の場合は消費再増税の凍結も必要である。
 それにも関わらず、ドイツは財政出動の拡大について「拒否」の姿勢を示している。  

『2014年10月15日 ウォール・ストリート・ジャーナル紙「ドイツ、欧州の景気後退回避に向けた財政支出拡大要請を拒否」
 メルケル首相率いるドイツ政府は14日、欧州経済が停滞しリセッション(景気後退)の危険が高まるなか、同国が財政均衡路線を一時棚上げにし財政支出を拡大する要請を拒否した。
政府はこの日、今年の成長率予想を従来の1.8%から1.2%に、来年についても2%から1.3%にそれぞれ下方修正した。また、これとは別に同日発表された独景気に対するアナリストの期待指数が過去2年近くで初めてマイナス圏に転落、これまで欧州の景気回復のエンジンとなってきたドイツ経済の陰りを示す指標がまた増えた。
政府関係者は、一連の弱い経済指標をユーロ圏や新興市場国の需要減少、また地政学上の危機が原因としているが、状況がこれ以上に悪化しない限り、2015年に連邦政府財政収支を均衡させる計画に変更はないとしている。この計画は国内のメルケル首相に対する政治的信認を高めている財政規律維持公約の中核をなしている。(後略)』

 ドイツが財政出動を拒否するのは、記事にも書いてあるが、
「財政規律を維持する」
 が公約になっているためである。
 とはいえ、そもそも「財政規律の維持」にしても、あるいは「財政出動の拡大」にしても、単なる政策の「手段」に過ぎない。政府の目標そのものではないのだ。
 政府の目標は、あくまで経世済民(国民を豊かにする政治)なのだが、ドイツは(日本もだが)完全に目的と手段が入れ替わってしまっている。
 この状況が続く限り、ドイツの長期金利は日本並みに下がり、フランスの長期金利も1%を割り込んでくるだろう。すなわち、デフレ化である。
 しかも、ユーロ圏は「ヒト」の移動が自由化されているため、最後の頼みの綱、すなわち失業者たちの「行き先」であったドイツ経済がデフレ化し、失業率が反転したとき・・・。
 恐らく、ユーロは何らかの形で「終わり」を迎えると考えている。少なくとも、現在の体制で存続することはできないだろう。
 要するに、現在は珍しくも、アメリカが正しいのだ。
アメリカの要望に従い、日本を含めた世界主要国が「財政出動の拡大」に踏み切れるかどうか。世界経済の未来は、全てがそこにかかっているのである。

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三橋貴明(みつはし・たかあき)

三橋貴明(みつはし・たかあき)

1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。
外資系IT企業ノーテルをはじめ、NEC、日本IBMなどに勤務した後、2005年に中小企業診断士を取得、2008年に三橋貴明診断士事務所を設立する。現在は経済評論家、作家として活躍中。
インターネット掲示板「2ちゃんねる」での発言を元に執筆した『本当はヤバイ!韓国経済―迫り来る通貨危機再来の恐怖』(彩図社)が異例のベストセラーとなり一躍注目を集める。同書は、韓国の各種マクロ指標を丹念に読み解き、当時日本のマスコミが無根拠にもてはやした韓国経済の崩壊を事前に予言したため大きな話題となる。
その後も、鋭いデータ読解力を国家経済の財務分析に活かし、マスコミを賑わす「日本悲観論」を糾弾する一方で、日本経済が今後大きく発展する可能性を示唆し「世界経済崩壊」後に生き伸びる新たな国家モデルの必要性を訴える。
崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)、『中国経済がダメになる理由』(PHP研究所)、『ドル崩壊!』 など著書多数。ブログ『新世紀のビッグブラザーへ blog』への訪問者は、2008年3月の開設以来のべ230万人を突破している(2009年4月現在)。

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