増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
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米FRB、追加国債買い取り(QE2)は6月末で終了=QE Liteは継続

―2011年インフレ予想上げ=成長率は下げ―

【2011年4月28日(木)】 - FRB(米連邦準備制度理事会)は27日のFOMC(連邦公開市場委員会)会合後に発表した声明文で、「景気は緩やかなペースで回復を続け、雇用市場も緩やかに改善している」と、前回3月の会合時の「足元の景気は強まっている」との強気の見方に転換したあとも楽観的な見通しを維持しながらも、超低金利政策の現状維持を全員一致で決めた。

 政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標は市場の予想通り、「for an extended period」(長期にわたって)の文言を残した上で、現行の0%~0.25%のレンジに据え置かれ、金利据え置きはこれで2008年12月以来25カ月連続となった。

 FRBは声明文では、前回と同様に、インフレは依然抑制されており、雇用市場も緩やかに改善しているものの、失業率は依然高水準で、企業の設備稼働率も低水準にあるため、景気回復のペースを一段と強めるため、政策金利と国債追加買い取りの現状維持を決めた、としている。

 ただ、"QE(Quantitative Easing)2"と呼ばれる、6月末で期限切れとなる6000億ドル(約49兆2000億円)の追加国債買い取りについては、予定通り、「6月末で完了する」と明言している。

 一方、QE2と同時に実施している"QE Lite"と呼ばれる、2500億‐3000億ドル(約20.5兆‐24.6兆円)と呼ばれる長期国債への再投資については、声明文では6月末以降も継続されるか、あるいは6月末で完了するかが明確にしていないが、今回から初めてFOMC会合後に開かれたベン・バーナンキFRB議長による記者会見で、同議長はQE2を6月末で完了したあと、FRBのバランスシートの規模を凍結する方針を明らかにした。

 FRBはバランスシートの規模が偶発的に縮小して金融引き締めにならないようQE Liteを続けているが、同議長はこのバランスシートの規模を維持することが最も重要だと指摘したことは、市場への悪影響を最小限にとどめる、QE Lite を6月末以降も継続することを意味している。

 こうした議長発言を受けて、27日のニューヨーク外為市場では、当面、FRBは出口戦略に転換せず、超金融緩和政策を続けるとの見方が広がり、ドルを売って高金利の資源国通貨を買うドル・キャリートレード(低金利のドルで資金調達し、高金利の他国通貨に投資する手法)が活発化し、ドルが下落した。ドルの主要6通貨のバスケットに対する相場を指数化したドル指数の終値は前日の73.616から73.284と、2008年8月以来の安値にまで下落している。

■出口戦略、時期尚早か=景気とインフレの両立目指す

 他方、市場では依然として、FRBはいつから利上げに転換するかに関心が集まっているが、
バーナンキ議長は会見で、超低金利を維持する「for an extended period」(長期にわたって)」の時期については明確にしなかったが、「for an extended period」の長さは、リソース(企業の設備稼働率や雇用市場など)の低迷やインフレ率の落ち着いた動き、さらには安定したインフレ期待などの条件によって決まる、とした上で、「これらの条件が妨害されるか、あるいは、我々がこれらの条件を変えたときが利上げに転換する時期だ」と述べている。

 また、同議長は、「for an extended period」の長さについては、「FRBは少なくともあと数回の(FOMC)会合を待つ」ということを意味するとも述べている。これは、政策金利の現状維持は8月か9月まで続くということになるわけだが、市場では金利据え置きは半年間続くと見ていただけにサプライズとなっている。

 一方、量的金融緩和については、バーナンキ議長は、インフレ期待はやや上昇してきている、との認識を示した上で、「インフレの悪化リスクなしに、雇用市場が顕著に回復することができるかどうかは明確ではない」とし、雇用、つまり、景気回復を優先して6月末以降、第3弾のQE策を打ち出す可能性は否定、これ以上、金融緩和を進めない考えを示している。

 これは「我々はインフレを抑制する一方で、雇用を大幅に増加させなければならない」(同議長)という考え方に基づいている。同議長は、「雇用とインフレのどちらかを犠牲にするというトレードオフは考えていない」としている。

 さらに、バーナンキ議長は、もし、FRBが金融引き締めに転換する場合には、最初に打ち出す政策は、QE Liteの打ち切りだという。これはFRBが保有しているMBS(不動産担保証券)の償還金を使って、同様に満期が到来する長期国債に匹敵する額の新しい長期国債に再投資(買い取り)するのを止めるということだ。

 一部のエコノミストは2012年第4四半期(10-12月)まで利上げに転換せず、また、追加買い取りで膨らんだバランスシートを縮小させるための国債の売り戻しは今年後半になると見ている。

■雇用情勢、出口戦略のカギ握る

 特に、エコノミストはFRBがこうした、いわゆる出口戦略に入るかどうかの判断材料となるのは雇用状況と見ている。具体的には、毎月の新規雇用者数の純増数が20万人以上という状況が数カ月続く必要があるとしている。

 労働省が1日発表した3月の新規雇用者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)は、前月比21万6000人の純増と、前月(2月)の同19万4000人増を上回り、昨年5月以来10カ月ぶりの大幅増となった。しかし、昨年11月から3月までを見ると、月6万8000人-21万6000人のレンジで、過去3カ月の平均でも月15万9000人と、20万人を下回っており、月によってばらつきが大きい状況だ。

 また、政府も巨額の財政赤字を抱えるだけに、早期の利上げは金利負担の増加につながり財政赤字の削減を困難にしかねないだけに、政治的な要因も関わってくるところだ。

 もう一つの要因は、インフレ率の上昇だが、特に、最近のガソリン価格の上昇がインフレ懸念を高める可能性があることだ。これはプロッサー氏とフィッシャー氏に加え、FOMCの新メンバーであるミネアポリス地区連銀のナラヤナ・コチャラコタ総裁もタカ派に傾く恐れがある。

■声明文:インフレ懸念は一時的=前回と変わらず

 一方、インフレの現状認識については、この日発表された声明文では、「インフレ率は依然、FRBが長期的に許容できる範囲(+1.5~+2%)をやや下回っており、長期のインフレ期待も落ち着いている」とし、前回と同じ文言を使っている。

 さらに、声明文は、「現在は、エネルギーや他のコモディティの価格上昇で、ここ数カ月、インフレが上昇しており、インフレ率やインフレ期待の上昇を注視する必要があるが、こうした(インフレへの)影響は一時的なものだ」とし、原油高や食品価格の上昇がインフレを加速させないとの楽観的な見方を示しており、これも前回からは変わっていない。

 ちなみに、27日の米国標準油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の6月物の先物価格は、FOMC会合で金融政策が現状維持となり、インフレ上昇は一時的で米経済の回復が緩やかに続いているとの声明文を受けて、前日比0.5%上昇の1バレル当たり112.76ドルとなり、インフレ懸念が強まっている。

■2011‐2013年予想を修正

 今回、FRBは2月に公開したFOMC(公開市場委員会)の議事録(1月25-26日開催分)で示した今後3年間(2011‐2013年)のインフレ率とGDP伸び率と失業率の各見通しを修正している。

 特に、PCE(個人消費支出)物価指数で見たインフレ率の見通し(中央値)は、2011年は+2.1~+2.8%(前回1月予想+1.3~+1.7%)と、レンジの上限と下限が大幅に引き上げられ、長期インフレ目標も上回っている。長期インフレ目標は+1.7~+2.0%(同+1.6~+2.0%)。

 2012年も+1.2~+2.0%(同+1.0~+1.9%)と、上限と下限がやや下方修正(悪化)され、2013年は+1.4~+2.0%(同+1.2~+2.0%)と、下限が下方修正された。

 また、FRBが重視する値動きの激しいエネルギーや食品を除いたコアPCE物価指数で見たコアインフレ率(中央値)は、2011年は+1.3~+1.6%(同+1.0~+1.3%)、2012年も+1.3~+1.8%(同+1.0~+1.5%)と、上限と下限がそれぞれ0.3%ポイント下方修正(悪化)された。

 2013年は+1.4~+2.0(同+1.2~+2.0)と、下限が0.2%ポイント引き上げられている。しかし、いずれもFRBが望ましいとするインフレ率のレンジ(+1.5~+2%)内にとどまっている。

■28日発表の1‐3月期GDP、+2%下回ったか=一時要因で

 景気見通しについては、長期見通しのGDP潜在成長率は+2.5~+2.8%と、前回予想時と変わっていないが、2011年が+3.1~+3.3%(前回予想+3.4~+3.9%)と、下限で0.3%ポイント、上限で0.6%ポイントの大幅な下方修正(悪化)となった。

 2012年については+3.5~+4.2%(同+3.5~+4.4%)と、上限が0.2%ポイント下方修正され、2013年は+3.5~+4.3%(同+3.7~+4.6%)と、上限と下限のいずれも下方修正されている。

 バーナンキ議長は27日の会見で、28日に発表される第1四半期(1-3月)GDP成長率について、前期比年率換算で+2%を下回った可能性があると、悲観的な見方を示している。米市場予測大手Briefing.comによると、市場予想のコンセンサスは+1.7%と、前期(2010年10‐12月期)の+3.1%から急速に鈍化したと見ている。

 しかし、同議長は、第1四半期は1‐2月の大吹雪の天候要因や国防費支出が予想より少なかったことなどの一時要因があったほか、輸出の低い伸びも世界景気の拡大で今後は上向くとし、第1四半期の弱いデータは一過性に終わると、楽観的に見ている。

 一方、失業率の見通しは、2011年が8.4-8.7%(同8.8-9.0%)と、下限が0.4%ポイント、上限も0.3%ポイントも上方修正(改善)、2012年は7.6‐7.9%(同7.6‐8.1%)と、上限を0.2%ポイント引き下げ、2013年は6.8‐7.2%に据え置いている。 (了)

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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