増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
いつも「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。当ブログは2007年5月より連載してまいりましたが、2011年6月30日(木)をもって終了いたしました。4年間にわたる皆様のご愛顧に感謝し、御礼申し上げます。

米7月新築住宅販売、12.4%減に反落=過去最低を更新

【2010年8月26日(木)】 米商務省が25日発表した7月の新築住宅販売件数(季節調整値)は前月比12.4%減の年率換算27万6000戸と、6月の31万5000戸から一転して減少、また、5月に記録された過去最低(28万1000戸)を更新した。市場予想の33万4000戸も大幅に下回った。

 新築販売は、昨年11月から2月まで4カ月連続で減少したあと、3月に同10.7%増と、大幅上昇し、4月も同7.8%増となった。しかし、5月は一転して同32%減の28万1000戸(改定前は同36.7%減の26万7000戸)と、1963年の統計開始以来の過去最低を記録した。

 その後、6月は同12.1%増の31万5000戸(改定前は同23.6%増の33万戸)に反発したものの、一時的なものと見られていた。エコノミストは、5月が急減したことを考えると、6月の反発は今後、新築販売が急増に転じる兆しとは見られないと、慎重な見方だった。

 7月の販売急減は予想以上にひどさとなったわけだが、中古住宅と同様、住宅減税(住宅取得控除制度)の申請受付が4月末で期限切れとなったための"夏枯れ"状態だ。

 実際、NAR(全米不動産業協会)が前日(24日)発表した7月の中古住宅販売件数も、前月と同様、減税効果が剥落した影響を受けて、前月比27.2%減の年率換算383万戸と、単月では40年の統計史上で最大の下落幅となっている。

 住宅取得控除は新規住宅取得者に対し、8000ドルを限度に住宅価格の10%の住宅取得控除を認めるもので、同制度の適用を受けるには4月末までに購入契約を結び、かつ、6月末までに住宅の引き渡しを完了しなければならなかったが、米議会は6月末に住宅減税の延長法案を可決し、引き渡しは9月末まで3カ月間延長された。

 しかし、期間延長が適用されるのは4月末までに購入契約を結んでいる世帯だけ。また、新築住宅販売統計は、契約書にサインした時点でカウントされるため、期間が延長されても今後、新築住宅の販売戸数を押し上げる効果はほとんどないのが実情だ。

■新築販売、2005年ピーク時の20%にまで減少

 一般的に、新築住宅販売統計は統計エラーが多いので、単月のデータだけでは信頼性が低い難点がある。そこで、直近の過去6カ月(2-7月)の月平均販売件数を見ると、年率換算で33万6200戸となっており、6月までの6カ月間の月平均34万8300戸に比べ3.5%減少と、新築販売は悪化傾向が続いている。

 ちなみに、1983‐2007年の月平均は年率換算で約60万戸だったので約半分になっている。

 また、7月は前年との比較でも32.4%減と、大幅な前年割れになった。ちなみに、2005年7月のピーク時の139万戸に比べ、実に80%も下回っており、新築住宅はかつて住宅市場全体の約15%を占めていたが、現在は約7%にまで縮小している。

 この日のニューヨーク株式市場では、7月の新築住宅販売データが過去最低を更新したのを嫌気して、株価は下落した。主要株価指標のダウ工業株30種平均は一時、前日比102ドルも急落した。ただ、4日続落のあと、安値を拾う買い戻しに支えられて、結局、ダウ平均は19.61ドル(0.2%)高の1万0060.06ドルで引けている。

■明るい材料は過去最低水準の住宅ローン金利

 ただ、明るい材料は、住宅ローン金利が依然、過去最低水準で推移していることだ。住宅ローン金利はフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)によると、30年固定金利で7月は4.56%と、6月の4.74%から低下しており、また、1年前の5.22%から66ベーシスポイントも低下している。

 実際、MBAが25日発表した先週(20日で終わった週)の週間住宅ローン申請指数(季節調整値)は前週比4.9%上昇と、借り入れが増えている。これは、全体の約8割強を占める借り換え指数が過去最低水準にある低金利を受けて、同5.7%上昇と、昨年5月以来15カ月ぶりの高水準になったのが主な要因だ。

 一方、住宅購入のための新規借り入れ指数も0.6%上昇となっている。これは住宅取得時の頭金が引き下げられたため、購入が増えていると見られている。しかし、住宅減税が打ち切りとなった4月末時点に比べると、新規借り入れ指数は41.5%も低下しており、依然、低調であることには変わりはない。

■在庫水準、横ばい=9.1カ月分相当に悪化

 7月の新築住宅の売れ残り住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む)は、前月比横ばいの21万戸となり、依然、1968年9月以来41年10カ月ぶりの低水準となっている。在庫減少は6月の同2.3%減を最後に4カ月連続の減少で止まった。ただ、前年比では22.2%減と依然、前年水準を下回っている。

 この結果、7月の販売ペースで計算した在庫水準は9.1カ月分相当と、前月の8.0カ月分(改定前は7.6カ月分)相当から大幅に上昇(悪化)した。住宅建築業界が容認可能な水準6カ月分相当を依然、大幅に上回っている。ただ、最悪だった昨年1月の12.4カ月分(34万戸)は下回っている。

 また、売れ残り住宅在庫の内訳を見ると、建築中の住宅在庫は前月比横ばいの10万戸と、依然、過去最低水準となっており、また、完成済みの住宅在庫も同2.4%減の8万戸と、約7年ぶりの低水準となっており、住宅メーカーは在庫減らしに懸命になっていることを示している。

 さらに、住宅が完成してから実際に売れるまでに要する日数(中央値)は、7月は11.3カ月と、前月の12.3カ月から改善したものの、通常は5カ月なので、2倍以上も遅い状況が続いている。

 同様に、中古住宅市場の供給過剰感を示す7月の売れ残り住宅在庫も、前月比2.5%増の398万戸となった。また、7月の販売ペースで換算した在庫水準も12.5カ月分と、6月の8.9カ月分から一気に1年以上にまで上昇、1999年以来11年ぶりの高水準となっている。

■住宅価格、前年比4.8%低下

 一方、新築住宅価格の中央値(季節調整前)は、新築住宅販売の大幅減少と在庫の高水準で、前年比4.8%低下の20万4000ドルとなった。前月比でも6%も急低下している。単純平均価格で見ても、前年比13.2%低下の23万5300ドルだ。

 これは、価格帯が20万ドル以下の格安物件の販売比率が前月の42%から47%に上昇した一方で、40万ドル以上の高額物件も10%から8%に低下したためだ。20万-40万ドルの高額物件は前月の48%から44%に低下している。

 アナリストはフォークロージャーの格安物件が住宅市場に流入してくる状況は今後も続く見通しから、昨年春から持ち直してきている住宅価格も今後数カ月は低下傾向になると見ている。

■全地区で大幅減少

 地域別の新築販売件数では、西部が前月比25.4%減の4万4000戸と、大幅に減少。北東部も同13.9%減となったほか、南部も8.7%減、中西部も同8.3%減と、軒並み大幅に減少している。

 今後の新築住宅販売の先行きの見通しについては、やはり、高水準の失業率(現在は9.5%)に加え、欧州の債務危機による金融市場の不安定化による銀行の貸し渋り、さらには景気の2番底懸念で新築販売の低迷が続くと見られている。

 また、住宅販売は減税の導入で、購入が前倒しでかなり進んだため、"夏枯れ"状態にあるため、今後、数カ月間は住宅の着工や販売も低迷が続かざるを得ない。

 こうした見方を反映して、住宅着工も急ブレーキがかかっている。先週(17日)発表された7月の住宅着工件数は、前月比1.7%増の年率換算54万6000戸と、3カ月ぶりに増加に転じたが、これはアパート建築が好調になったためで、一戸建ては同4.2%減(前年比13.6%減)の43万2000戸と、昨年5月以来14カ月ぶりの低水準となっている。

 また、住宅市場の先行指標である建築許可件数(季節調整値)も、前月比3.1%減の年率換算56万5000戸と、昨年5月以来14カ月ぶりの低水準となっている。とりわけ、一戸建ては、同1.2%減の41万6000戸と、4カ月連続で減少し、昨年4月以来15カ月ぶりの低水準と、先行き不透明感が強まっているのが実態だ。

 先週、ワシントンの財務省で開かれた住宅金融の将来をテーマにしたセミナーで、世界最大の債券ファンド投資会社ピムコのビル・グロース最高投資責任者(CIO)は、「住宅ローンに対する政府保証がなければ、住宅ローン金利は数パーセント・ポイントもの上昇は避けられず、その結果、住宅市場は数年間にわたり、瀕死の状況に陥るだろう」との厳しい見方を示している。

 同氏は、また、プライムローン(信用度の高い借り手への融資)であっても、30%のダウンペイメントが付いた住宅ローンでなければ投資しないとも述べており、これは現在の市場の水準からみるとかなりの高率となる。

 その上で、同氏は、投資家はかなり高いリスクプレミアムを要求してくれば、その結果、住宅ローン金利は7‐9%に上昇するだろうと予測。さらに、グロース氏は政府が追加の景気刺激策を打ち出さなければ、今後6カ月以内に米国の失業率は再び10%台に上昇する、と指摘している。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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