増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
【お知らせ】「増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル」は6月30日で終了いたしました 。
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米7月中古住宅販売、27%減=過去最大の下げ幅

-売れ残り住宅在庫、12.5カ月分に急増-

【2010年8月25日(水)】 NAR(全米不動産業協会)が24日発表した7月の米中古住宅販売件数は、前月に引き続き、4月末で終了した住宅取得減税による浮揚効果が剥落した影響や景気回復の遅れなどで、前月比27.2%減の年率換算383万戸と、単月では40年の統計史上で最大の下落幅となった。

 また、市場予想の前月比12%減の472万戸を大幅に下回り、1999年以来の11年ぶりの低水準となった。前年比も25.5%減となっている。特に、主力の一戸建ては1995年5月以来15年2カ月ぶりの低水準にまで急減した。

 7月の結果について、エコノミストは、景気や住宅減税の要因に加え、消費者が住宅価格の一段の下落を見越して買い控えの姿勢を維持していることが下落の大きな原因と見ている。さらに、住宅販売業者が値下げに抵抗していることも、"傷口"を深くしていると見ている。

 しかし、国内の4地域のうち、中西部と南部ではすでに、業者は買い控えに抗しきれなくなり、値下げせざるを得なくなっているのも事実だ。

■前月の数値は下方改定=3カ月連続の減少に

 最近の中古住宅の販売件数(一戸建てや分譲住宅、集合住宅など、季節調整値)を見ると、3月の536万戸(前月比7%増)、4月の579万戸(同8%増)と、2カ月連続して増加したが、5月は566万戸(同2.2%減)と、3カ月ぶりに減少に転じ、6月も526万戸(同7.1%減)と、前回発表時の537万戸から下方改定され、3カ月連続の減少となっている。

 先週(17日)発表された7月の住宅着工件数は、前月比1.7%増の年率換算54万6000戸と、3カ月ぶりに増加に転じたが、これはアパート建築が好調になったためで、一戸建ては同4.2%減(前年比13.6%減)の43万2000戸と、昨年5月以来14カ月ぶりの低水準となっている。

 また、住宅市場の先行指標である建築許可件数(季節調整値)も、前月比3.1%減の年率換算56万5000戸と、昨年5月以来14カ月ぶりの低水準となっている。とりわけ、一戸建ては、同1.2%減の41万6000戸と、4カ月連続で減少し、昨年4月以来15カ月ぶりの低水準と、先行き不透明感が強まっているのが実態だ。

■中古販売、今後も減少続く見通し

 また、3日に発表された6月の中古住宅販売保留指数は、前月比2.6%低下(5月は同29.9%低下)の75.7と、2001年以来9年ぶりの低水準にまで低下した。

 中古住宅販売件数は契約後の住宅の引き渡しの完了時点での販売件数を示すのに対し、同指数は、購入契約書に捺印した時点での販売件数を示し、中古住宅市場の先行指標と見られているが、同指数の低下は今後1‐2カ月後に中古住宅販売統計に現れてくる。

 経済予測機関のBriefing.comでは、先月、5月の中古住宅販売保留指数の30%減という数値は今後1-2カ月以内に現実化し、中古住宅販売件数は450万戸の水準にまで下落する可能性がある、と指摘していたが、7月の数値を見る限り、想定以上に深刻な状況になったといえる。

 NARの主任エコノミスト、ローレンス・ヤン氏も、「5月以降、住宅販売契約件数が急減していることから、9月まで中古住宅販売件数は減少し続ける可能性が高い」と指摘している。

 ただ、明るい材料は、住宅ローン金利が依然、過去最低水準で推移していることだ。住宅ローン金利はフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)によると、30年固定金利で7月は4.56%と、6月の4.74%から低下しており、また、1年前の5.22%から66ベーシスポイントも低下している。

 ヤン氏は、「住宅金利の水準が底を打っていることや、住宅価格も過去最低に近い水準にまで低下し手ごろ感が出ていることなど考えると、景気と雇用の回復次第だが、中古住宅の販売回復ペースが今後、加速する可能性はある」とやや楽観的に見ている。

 しかし、他のエコノミストは、住宅販売は減税の導入で、購入が前倒しでかなり進んだため、"夏枯れ"状態にあるとし、今後、数カ月間は住宅の着工や販売も低迷が続かざるを得ない、と悲観的に見ている。

■7月フォークロージャー件数、17カ月連続で30万戸の大台

 NARのビッキー・コックス・ゴルダー会長が指摘しているように、 "もう一つの住宅在庫"といわれるフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件の中古市場への流入で住宅価格の低下圧力が増して新規の購入意欲を削いでいる。

 米不動産調査会社リアルティトラックが12日発表した7月のフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)件数は前月比3.6%増の32万5229戸となり、17カ月連続で30万戸の大台を超えている。これは、397戸につき1戸の割合でフォークロージャー手続きに入っていることを示し、前年比は9.7%減だが、依然、高水準が続いている。

 また、内訳を見ると、デフォルト通知件数は同1%増の9万7123戸と落ち着いているのとは対象的に、銀行差し押さえ件数が9%増の9万2858戸(前年比も6%増)と、2005年4月の同統計開始以来2番目に高い水準となっているのが特徴だ。

■政府、フォークロージャー対策の第3弾を発表

 今年上期(1-6月)のフォークロージャー件数は165万戸と、前年水準を8.3%も上回っており、こうした高水準のフォークロージャーに歯止めをかけるため、政府は今年3月下旬に、住宅市場の低迷脱却を目指して2年前に導入したフォークロージャー対策を一段と強化した総額140億ドル(1兆2200億円)のテコ入れ策を明らかにしている。しかし、それでも焼け石に水の状況だ。

 政府はフォークロージャー対策として、2008年2月に総枠500億ドル(約4兆6400億円)の「Home Affordable Modification Program」(HAMP)と呼ばれる借り換え支援制度を発足させている。

 この制度は、ネガティブ・エクイティ(住宅の市場価格が購入時の簿価を下回りマイナスの純資産額になっている状況)で、フォークロージャー予備軍となっている300万-400万世帯の救済を目指し、住宅ローン(一戸建て当たり72万9750ドルまでが対象)の元本を減額した上で、FHA(連邦住宅管理公団)が借り換えローンの債務保証を行っている。

 財務省は先月、同制度を利用した130万世帯のうち、全体の40%超が住宅を手放さないで済むための恒久的な返済額の減額に至ったことを明らかにした。しかし、エコノミストは、今後1年から1年半にかけて、約200万戸がフォークロージャー物件か、あるいは、ショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件として、市場に出てくる、と先行きには悲観的だ

 また、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスによると、住宅ローンの借り換え世帯の75%は再びデフォルト(債務不履行)に陥る、と予想しており、一筋縄ではいかないと見られている。

 このため、政府は今月11日に、失業中の世帯が住宅を手放さなくても済むようにするためのフォークロージャー対策の第3弾として、フォークロージャーが顕著なネバダやフロリダ、アリゾナ、アラバマ、カリフォルニアなど17州の政府に、最大41億ドル(約3500億円)を支出し、失業中の世帯主が最高5万ドルまで金利ゼロの2年ローンが受けられる制度を導入する方針を明らかにした。

 この制度を利用するには、世帯主は失業前に健全な返済実績があること、さらに、2年以内に仕事を見つけ、住宅ローンの返済を再開することが条件とされる。

■住宅在庫、12.5カ月分に急伸=11年ぶり高水準

 住宅価格の先行きに大きな影響を与える、中古住宅市場の供給過剰感を示す売れ残り住宅在庫は、前月比2.5%増の398万戸となった。また、7月の販売ペースで換算した在庫水準も12.5カ月分と、6月の8.9カ月分から一気に1年以上にまで上昇、1999年以来11年ぶりの高水準となっている。

 昨年11月の6.5か月分を除けば、依然として、過去25年間の平均値である7.1カ月分を大幅に上回っており、また、適正水準とされる6-7カ月分(住宅ブームのピークだった2005年は4.5カ月分)も上回っている。

■住宅価格、前年比0.7%上昇=今後は低下避けられず

 販売の内訳は、主力の一戸建ては前月比27.1%減の年率換算337万戸と、3カ月連続の減少となり、1995年5月以来15年2カ月ぶりの低水準にまで急減。前年比も25.6%減となった。

 一方、分譲住宅と集合住宅も合計で前月比28.1%減の46万戸となり、これも3カ月連続で減少。前年比も24.0%減となっている。

 また、中古住宅の販売価格の中央値(季節調整前)は、低価格のフォークロージャー物件の販売比率が前年同月の31%に対し、32%とやや上昇したものの、前年比0.7%上昇の18万2600ドルと、なんとか持ち堪えている。

 しかし、エコノミストは住宅需要の弱さから今後、住宅価格は低下し始めると見ている。前月比では0.2%低下と、5カ月ぶりに低下した。

 また、対前年比で上昇したのは北東部(4.8%上昇)と西部(3.3%上昇)で、一方、低下したのは中西部(2.8%低下)と南部(3.3%低下)となっている。

 内訳では、一戸建て住宅の中央値は前年比0.9%上昇の18万3400ドル。分譲住宅は同1.7%低下の17万6800ドルだった。(了)

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02月04日更新

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増谷栄一(ますたに・えいいち)

増谷栄一(ますたに・えいいち)

経済ジャーナリスト。北海道生まれ。早稲田政経学部卒。
1988年ジャパンタイムズ入社、編集局記者として世界100カ国の特集記事を制作。
1992年日経国際ニュースセンター編集室総合編集部次長を経て、1996年~2000年まで
米国経済通信社ブリッジ・ニュース東京特派員として日米の政治、経済、マーケットを取材。
1998年から2年間、ニューヨーク、ワシントン支局でアメリカのマーケット、重要経済統計、米政府、
財務省、米議会などをシニア・エディターとして取材。G7財務相・中央銀行総裁会議を3度取材。
その後、米国通信社ダウ・ジョーンズ通信社のコピー・エディターを経て、2001年1月から2004年9月まで
AFX通信社(AFP通信の経済ニュース部門)東京特派員。
2004年4月から2007年3月末までライブドア・ニュース外報部チーフ。
2007年11月まで英米金融情報サービス、トムソン・ファイナンシャルの起債担当記者。
2009年2月から経済ニュースサイト「NNAヨーロッパ」の編集長としてロンドンに駐在中。

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